小学1年生の筆箱指定は小1プロブレムの予防策だと悟った話

 

小学1年生の筆箱指定は厳格

小学1年生の入学準備品の代表格、筆箱。どんなデザインのものにしようかな・・・と迷うのも、入学前のお楽しみですね。おじいちゃんおばあちゃんから、好きなキャラクターの筆箱をプレゼントされることもあるかもしれません。しかしながら、筆箱のスペックと中身については、学校側から厳しく指定があります。これは私立で校則が厳しいからではなく、多くの公立小学校でもみられます。具体的な指定内容は、下記の通りです。ご丁寧に説明会の資料に「こういうスペックのもの」と写真付きで提示されている力の入れようです。

  1. シンプルなデザインのもの(キャラクター付きは不可、要するに無地のもの)。ファスナー式や金属製は不可。
  2. 筆箱の中身は、鉛筆、赤鉛筆、消しゴム、定規のみ。これら文房具もキャラクターのついていないシンプルなものとすること。
  3. 鉛筆キャップは使わない。筆箱にキャップが内蔵されているものを準備しておけばキャップは不要。
トップの画像に使用しているようなものが、学校側の要求スペックになります。

これら細かい指定の背景として、「学業に集中できるように」という説明がありました。その時はピンと来ず、キャラクターが付いているかわいいもののほうがむしろモチベーションが上がるのでは?こんな細かい指定に意味あるの?どうせ皆なんだかんだ言ってキャラクター付きを持って来るのでは?などと考えていました。結局、頂き物の無地の筆箱で、まさに学校側が求めるスペック通りのものが手元にあったので、我が家はそれを使用することにしました。

筆箱指定は現場の切実な必要性から生まれたものだった

私の子供が入学した頃、健康上の理由でしばらく付き添いが必要でした。他の親御さんは校門までは送り迎えしても、校内には入らないので、結局我が家のみ授業参観しているような状態です。入学したての小学生の授業を見る機会などそうそうないことなので、興味深く見ていると、小学校の先生方の苦労が手に取るようにわかりました。そして学校側が教室をうまくマネジメントして将来的な学級崩壊を防ぎ、授業をできるだけ予定通り進めるために大きなポイントとなるのが筆箱だったことに気づくのでした。

つまり「小1プロブレム」を未然に防止することです。「小1プロブレム」とは、下記のように定義されています。

幼稚園・保育園から小学校に入学してきた子ども達が小学校一年生の授業で落ち着きがなかったり、自分勝手であったりして、学校教育活動に取り組むことができないという問題である。具体的行動としては、椅子に座っていることができない、先生や友達の話を聞くことができない、小さなトラブルがきっかけですぐに殴る蹴るなどの暴力をしてしまう、自分の思い 通りにならないと機嫌が悪くなる、教室から出ていってしまうなどである。

(論文:鈴木邦明、国立青少年教育振興機構研究紀要,第 10 号(2010 年)119p-127p; 小1プロブレムが起こりにくい授業方法の工夫 より引用)

小学1年生の第1週時点で、クラスは「学級」と呼べる状態ではありませんでした。前を向いて、先生の話を静かに聞いていられる子もいますが、なかなか難しい子もかなりの数います。先生も対策として、気が散らないように授業に使うもの(筆箱)だけを机上に出し、それ以外は引き出しにしまうよう指導しています。すると机上に出ているのもののうち、遊びに使えるものは筆箱のみとなるのです。そして、授業に退屈した子はだいたい下記のような流れで自分勝手な行動を起こします。

  1. 筆箱を開け閉めする
  2. 筆箱内蔵キャップ部分を立ててロケットのようにして遊び始める
  3. 後ろを向いて他の子と話し始める
  4. 他の子と喧嘩し始めたり、他の子のものを奪ったりして泣かせてしまい、先生が叱る。その間授業は中断する。

この①~④のサイクルが繰り返され、授業が進まない状態が、小1プロブレムが顕在化した状態です。そしてその引き金となる最初の行動は、筆箱なのです。筆箱を遊びに使用できない極力シンプルなものにすることで、問題行動の芽を早期に摘むことができ、小1プロブレムが抑制される・・・だから学校側から筆箱とその中身について細かな指定があったのです。

教室内の実態は、至るところで筆箱を開閉するパタパタという音が常に響いており、当然担任の先生だけでは注意しきれないので、補助の先生が入っています。筆箱をいじるのをやめさせ、前を向いて先生の話を聞くよう、根気よくやさしく何度も促していました。それは専門の副担任の先生ではなく、手の空いている他学年の先生だったり、専科の先生が空き時間に来てくれていたり・・・先生方も余剰人員がない中、学校としてかなりのリソースを割いてくださっていることがよく分かりました。それだけ学校として、小学1年生の教室マネジメントは後々の学年・学校運営に響く重要なタスクと位置付けているのでしょう。このような現場において、筆箱とその中身が遊びに使えるものだったらどうなるでしょう。たとえば、転がしてサイコロのようにゲームができるような鉛筆だったら?消しゴムが粘土のように遊べる練り消しだったら?金属素材で、机に打ち付けるとカンカン音が出る筆箱だったら?学級マネジメントに支障が出ることは明白です。親が買い与える筆箱ひとつで、これほど学級運営に影響が出る可能性があるとは、まったく想像もしていないことでした。

一見理解不能なルールにも、教育現場のノウハウが詰まっている

「小1プロブレムの引き金は筆箱で遊び出すことなので、ここを押さえれば学級崩壊が防げるはず」、というのは長年培われた現場のノウハウなのだと思います。よくよく考えてみれば、保育園や幼稚園と小学校では、まったく生活が異なるため、最初のうちは子供達がなかなか適応できないのも無理のない話です。授業中遊び出す子がいると書きましたが、それは小学校入学当初によくみられる、普通の行動なのだと思います。幼稚園や保育園では、ある程度決められたスケジュールで生活はするものの、自由に遊べる時間が圧倒的に多く、じっと座っていなければならない時間はほとんどありませんでした。一方、小学校では、黒板や先生を見て授業を聞き、ほぼ1日中ずっと椅子に座っていることが求められます。すぐには小学校の生活に適応できないのは仕方のないことですが、徐々に小学校の授業形式に慣らし学業に集中できる環境を作るために、親が全面的に協力しなければいけないと痛感しました。

筆箱だけでなく、学校側が決めているルールについて、保護者側が容易にその背景を汲み取れるものもあれば、「なぜこんな細かいルールがあるのだろう?これって意味があるのかな?」と思われるものもあるかもしれません。各種ルールについて、なぜそれが必要なのか、明確な説明がないこともありますよね。しかしながら、学校側の決めたルールには過去の教育現場で積み上げられたノウハウがあるのです。もちろん、学校側が提示してくる不可解なルールに対して保護者側が疑問を持ち、各種ルールの必要性を問うことが必要な場合もあるとは思います。しかし、特に子供の入学当初、保護者側は学校の現場について素人です。まずは保護者側も教育現場がどのような状況なのか謙虚に理解しようと努め、学校側に全面的に協力する姿勢を持つことが重要だと痛感させられた出来事でした。