2019年も残り1週間を切りました。2019年も様々な展覧会へ出かけて楽しかったので、振り返りつつ満足度が高かった展覧会ベスト10をまとめたいと思います。ランクづけで重要視したポイントは下記3点です。
- 希少性
- 展示のわかりやすさ・魅せ方
- コストパフォーマンス
まずは①希少性。国内・海外問わず、めったに一般公開されないものや、次に海外から来日するのは数十年後だろうと思われる美術品が見られた展覧会は希少価値が高いため、より上位にランクづけしています。
②展示のわかりやすさと魅せ方。特に予習をして行かなくても、展示品の歴史的価値や貴重さが理解できるような解説や展示方法が充実しているか、というポイントです。子供でも展示品の良さがわかるような展示が理想です。ここには魅せ方のうまさも入ります。ただ配置するだけでなく、ライティング(照明)や展示の角度などを工夫して、展示品を魅力的に演出しているかも重要です。
最後に③コストパフォーマンス。展覧会の入場料金は決して安いものではありません。入場料金に見合った、あるいはそれ以上の価値があるかどうか。「おねだん以上」だなと思えた展覧会は上位にランクづけしました。
10位〜6位
10位:カルティエー時の結晶ー
世界トップクラスのジュエリーメゾン・カルティエの展覧会。これは特に②展示のわかりやすさ、魅せ方が秀逸でした。ジュエリーを最も魅力的に魅せる配置、角度、ライティングが工夫され、天文学的値段のジュエリーに圧倒されました。また、スマホ型音声ガイドも操作性が良く、ストレスなく展示を見られる仕様になっていて素晴らしかったです。
9位:マンモス展(日本科学未来館)
ロシアで発掘された冷凍マンモスが展示された貴重な科学展です。単に古代生物を展示するだけでなく、冷凍マンモス研究では避けて通れないトピックとしてクローン技術に関する問題を提起し、それを漫画形式で楽しく面白く伝え、考えさせる展示の工夫が良かった!生命倫理の問題をここまでわかりやすく伝えるって、なかなかできないことです。わたしの専門はバイオテクノロジーですが、これほどわかりやすい生命科学系の展示を見たのは初めてでした。
8位:新・北斎展(森美術館)
世界的に評価の高い絵師、葛飾北斎。浮世絵の代表作である富嶽三十六景は、2020年から新しい日本国パスポートの絵柄に採用されることも決まっており、今や日本を代表する画家といえるのではないでしょうか。しかし、浮世絵の展覧会は頻繁に開催されているものの、北斎の若い頃〜絶筆までの画業をすべて網羅した展覧会はなかなかありません。その点、この「新・北斎展」は北斎の画業の進化が時系列でよくわかる展覧会となっていて、大物絵師たる理由がよくわかりました。
7位:東寺ー空海と立体曼荼羅ー(東京国立博物館)
京都にある東寺は、中国から空海が持ち帰った密教を伝えるための拠点として建立されました。なかでも密教の世界観を庶民にわかりやすく伝える目的で作られた立体曼荼羅は圧巻。東寺へ行けばいつでも見ることができるのですが、博物館でしか味わえないメリットがあります。それは仏像のまわりを360度ぐるっと回って鑑賞できること。
展示の工夫として、一般公開されていない密教儀式の「後七日御修法」の空間を実物大セットで完全再現されていたのが良かったです。見応えがありました。
6位:正倉院の世界ー皇室がまもり伝えた美ー(東京国立博物館)
奈良県の東大寺にある正倉院。ここで1200年にわたって保存されてきた宝物は、世界的にも貴重な価値をもつものばかりです。毎年11月になると正倉院宝物の一部が奈良国立博物館で公開されるのですが、東京在住なので行きたいけど気軽に行けない…と思っていたら、2019年は天皇陛下の御即位記念で東京国立博物館に正倉院宝物が来てくれました!貴重な宝物が見られて眼福でした。
5位〜1位
5位:nendo×サントリー美術館 inspiration or information? 左脳と右脳でたのしむ日本の美
世界中で数々のデザインプロジェクトを手がけ、高い評価を得ているプロダクトデザイナーの佐藤オオキさん。今回、佐藤氏のデザインオフィスnendoとサントリー美術館がコラボレーションし、サントリー美術館の所蔵品(主に日本美術)をnendoならではの視点で展示するという試み。展覧会入口が2つに分かれているというまさかの展開と、独自の切り口で日本美術を解釈する視点のユニークさ、展示品の魅せ方の工夫など、どれをとっても秀逸でした。
4位:ピクサーのひみつ展
3次元CGアニメーション技術でトップを走るピクサー・アニメーション・スタジオ。彼らのモットーは「アートとテクノロジーの融合」だそうです。アニメのキャラクターの展覧会かな〜、と軽い気持ちで行ってみたら、テクノロジー推しの展示が満載。(それもそのはず、この展覧会の英語タイトルは ”Science Behind Pixar”なのです)
3次元CGアニメーション技術は難解な数学・物理モデルを使用して構築されているはずですが、数式などの難しい説明を一切使わずに、子供でも直観的に理解できる展示になっていて感動しました。すべての科学展のお手本にするべき展覧会でした。東京展が終わってしまってなんだか寂しい…と思っていたら、2019年12月21日〜2020年2月24日まで大阪で開催されるとのこと!関西方面の方は是非。
3位:三国志展
3世期末ごろに成立したと言われる三国志は、時代を超え国境を超えて読み継がれ、小説、漫画、ゲームとなって現代でも多くのファンを惹きつけています。わたしもそのひとりです。三国志の登場人物は、物語の中の人物という印象があったのですが、東京国立博物館の「三国志展」では、個性豊かな英傑たちが実際に生きていた、その証が数多く展示されていて彼らの活躍をよりリアルに想像することができました。特に最近発掘された曹操の墓(曹操高陵)の貴重な出土品が来日しており、次いつ日本で見られるか分からないと思われるほど希少性が高かったです。
また、赤壁の戦いの直前、諸葛亮孔明が計略により十万本の矢を集めたエピソードの再現セットや、曹操高陵の実物大セット、人形劇「三国志」や横山光輝先生の漫画「三国志」の原画展示など、三国志ファン大満足のコストパフォーマンスの高さでした。
2位:顔真卿ー王義之を超えた名筆ー(東京国立博物館)
中国・唐時代の書家、顔真卿の名作と名高い祭姪文稿が来日するなんて!と大興奮で見に行きました。戦死した肉親を悼む目的で書かれた祭姪文稿は、あくまで草稿なのですが、肉親を失った悲しみや戦争の理不尽さなどが書に現れていて心を打たれました。電子メールやフォントが発達しても、手書き文字でなければ伝わらない人間の感情があるよね、と思わされる書でした。祭姪文稿は、所蔵元の台湾故宮博物院でも滅多に展示されない貴重なもの。それが日本で見られるなんて、感動でした!
1位:曜変天目三碗同時公開(東京、滋賀、奈良)
中国・宋の時代に作られ独特の瑠璃色の紋様と輝きを持つ名碗、曜変天目。製造元であった中国には完全な形で現存せず、世界広しといえども日本に三碗しか残されていない幻の茶碗です。(ちなみに三碗とも国宝)そんな貴重すぎる曜変天目が三碗同時公開されるなんて、こんな機会は二度とない!!と思ったので東京の静嘉堂文庫美術館だけでなく、滋賀県のMIHO MUSEUMと奈良県の奈良国立博物館まで遠征して三碗完全制覇してきました!
それにしても、推しの展覧会がトーハク&中国関係に偏っているような気がする…。 2020年もトーハクの展覧会ラインナップが秀逸なので(関連記事)、もう来年はトーハクの年間パスポートを買うべきなのかも…。
西洋美術関係の展覧会がランク入りしていませんが、西洋美術はコンスタントに人気があるので結構頻繁に展覧会が開催されるため、それほど希少価値はないかなと思っています。逆に日本美術のレアな逸品や中国の文化遺産の方がなかなか公開されづらく、一度見逃すと次見られるタイミングがしばらく後になってしまうため、ダメージが大きいのです。
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