「大浮世絵展」感想:浮世絵の名絵師五人衆が揃い踏み!コスパ最高な浮世絵展。

「大浮世絵展」というタイトルの展覧会ってなかなか聞いたことがないような気がします。これまでは浮世絵展というと作家ベースで「北斎展」とか「歌麿展」というようなものが多かった印象です。

「大○○展」と聞いて真っ先に思い浮かぶのは「大恐竜展」。夏休み期間などによく開催されているので、なんとなく名前に馴染みがあるのです。大きな恐竜がたくさん展示されているイメージ。それに対して浮世絵はA4サイズくらいの小さなもの。浮世絵で恐竜展みたいなスケールってあり得るのでしょうか?「大浮世絵展」ってどんなものかあんまり想像がつかないな~、と思いつつ江戸東京博物館へ行ってみて驚きました。ホントの意味で「大浮世絵展」だったのです。

1.  浮世絵の有名どころが集結!

本展で見られる作品数は、のべ360点あまり。そして第一級の有名浮世絵師5名の作品を偏りなく集めているところがすごすぎるのです。

  • 喜多川歌麿:80点
  • 東洲斎写楽:80点
  • 葛飾北斎:60点
  • 歌川広重:76点
  • 歌川国芳:60点

この5人、それぞれ単独で展覧会が開けるくらいの有名絵師だと思うのですが、彼らの作品を全部一箇所に集めてしまうなんてなんという贅沢…。展示作品リストを見て驚いたのが、国内だけでなくアメリカ、フランス、イギリス、ベルギー、個人コレクションに至るまで世界中からかき集められていること。浮世絵はこんなにも世界中に広がっていたのか…と改めて世界的評価の高さを知りました。

2. 保存状態の良いものをだけを選りすぐり

展覧会入口の解説にもありましたが、可能な限りとにかく質の高いものを集めたということも本展のポイント。浮世絵はもともと大衆芸術であったが故に、丁寧に保存されたものが少なく保存状態の良いものがなかなかないのだそうです。展示作品を見ていて驚いたのですが、どれも状態が良く、特に色がきれいに出ているものが多かったです。

3. 画風の比較鑑賞が可能

喜多川歌麿は美人画、東洲斎写楽は役者絵だよね~、となんとなく知ってはいても、ホンモノの浮世絵を見ながら絵師たちの画風を比較する機会はなかなかありません。本展で1回分の展覧会入場料を払えば、同じ会場の中でトップレベルの浮世絵を比較しながら味わえるなんて、コスパ最強ではないでしょうか?5人の作品を比較して見ていると、浮世絵とひとくちに言っても様々で、それぞれの絵師が個性豊かな画風を持ち、オリジナルの題材を独自の視点で切り取って作品にしていることが理解できます。比較して見ていると、それぞれの画家の特徴に勝手にキャッチコピーをつけたくなってくるんです。

喜多川歌麿は「遊女密着24時」。美人画のなかでも、遊女たちの1日の暮らしを数時間ごとに時系列で切り取って描いている作品が印象的。これって密着取材していないと書けないよね、というレベルの観察眼を感じます。

喜多川歌麿「婦女人相十品 ポペンを吹く娘」(メトロポリタン美術館画像)

喜多川歌麿「婦女人相十品 ポペンを吹く娘」(メトロポリタン美術館画像)

東洲斎写楽は「役者絵百面相」。様々な芝居・場面の役者たちの個性を余すところなく表現しています。基本的には人物のみを描いた肖像画的なものが多いのですが、顔の表情だけでも多彩なバリエーションがあります。

東洲斎写楽「四代目岩井半四郎の重の井 『恋女房染分手綱』」(メトロポリタン美術館画像)

東洲斎写楽「四代目岩井半四郎の重の井 『恋女房染分手綱』」(メトロポリタン美術館画像)

葛飾北斎は「万能の天才絵師」。風景画、静物画、人物画、何を描いても超一流。構図も色彩も傑出。アメリカの有名雑誌「この1000年で最も重要な功績を残した世界の人物100人」の中で、日本人で唯一北斎が選ばれたのも納得です。

葛飾北斎「富嶽三十六景 山下白雨」(メトロポリタン美術館画像)

葛飾北斎「富嶽三十六景 山下白雨」(メトロポリタン美術館画像)

歌川広重は「ポスト北斎、自然と共存する人を描く絵師」。北斎をライバル視して同じ題材を描いたりしつつも、大胆な構図で雨や雪に翻弄される人を描いたりしていて独自の風景画の方向性を確立しています。

歌川広重「東海道五十三次之内 亀山雪晴」(メトロポリタン美術館画像)

歌川広重「東海道五十三次之内 亀山雪晴」(メトロポリタン美術館画像)

歌川国芳は「紙1枚を飛び出した、洒落と擬人化のおもしろ絵師」。国芳の作品は紙1枚におさまっておらず、縦方向や横方向に紙を繋いでスケールの大きい作品を作っています。ダジャレ、猫を人に見立てた擬人化などなど、茶目っ気たっぷり。

これだけの浮世絵の逸品が一箇所で見られる展覧会は相当コスパが高いです。忙しいサラリーマンにとってはとにかく効率がいい浮世絵展だと思います。会期中展示替えがあるので、お目当ての作品がある方は展示作品リストで展示期間を確認してから行かれることをお勧めします。

大浮世絵展

【東京展】
会期:2019年11月19日〜2020年1月19日<終了>
会場:江戸東京博物館
公式サイト:https://dai-ukiyoe.jp

【福岡展】
会期:2020年1月28日〜2020年3月22日
会場:福岡市美術館
公式サイト:https://www.fukuoka-art-museum.jp/exhibition/大浮世絵展/

【愛知展】
会期:2020年4月3日〜2020年5月31日
会場:愛知県美術館
公式サイト:https://dai-ukiyoe.jp/index.html

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