クラスター対策班と日本人のマインドが支える、効果的な新型コロナウイルス対策

爆発的な感染拡大の瀬戸際でどうにか持ちこたえている状態と言われる東京都。わたしは都内在住のため、首都圏で感染爆発が起きたら一大事だと思っており、2020年3月30日に行われた小池都知事の緊急記者会見に注目していました。そこで厚生労働省クラスター対策班の見解を聞いて、新型コロナウイルス対策の生産性がものすごく向上していることを知り、感服しました。そしてクラスター対策班の見解をもとにひとりひとりが行動に注意することができれば、諸外国のような都市封鎖をしなくても爆発的な感染者数の増加が避けられるかもしれないと希望を持ったのです。

潜伏期間中や無症状・軽傷の感染者から感染を広げると考えられている新型コロナウイルス。気づけば感染者数が急激に増え、重症患者が病院の受入能力を超えて押し寄せ医療崩壊を招く…。これが新型コロナウイルスの怖さのひとつだと言われています。感染爆発が起こってしまった中国・北米・ヨーロッパなどでは強力な行動制限により人から人への感染を防ぐしかない状況になっています。既に諸外国の大都市では都市封鎖が行われました。

感染をコントロールすることだけを考えるなら都市封鎖がベストですが、報道を見ていると封鎖が行われた国では様々な問題が発生しています。外出できないストレスからメンタルに異常をきたす人が多くなったり、ストレスから家庭内暴力が増加したり…。外出の自由が制限されると、想像以上に大きな精神的負担がかかるんだなあと感じています。また、経済への影響も大きいです。多くの国の都市封鎖では企業活動にも制限を加え、生活必需品の店しか開けないということになっているので、大多数の企業の営業が中止されます。この経済的損失は甚大です。もし日本で国が企業に対して営業停止を命じるなら、補償がセットということになりますが、借金まみれの日本でさらに税金を投入したら今後の先行きはどうなるのでしょう?感染制御と経済を両立できる方法があればいいのに…と思いますよね。感染を広げる活動のみ停止して、そのほかは普通の生活ができれば、経済的ダメージを最小限に抑えることができて効率が良いはず。そういう生産性の高い対策を立てられないか?そんな無理難題を解決してくれるかもしれないのが、厚生労働省のクラスター対策班だと思っています。

クラスター対策班は国内外の症例を精査し、感染者に接触した接触者のほとんどから新型コロナウイルス陽性者が出ないという事実に注目しました。(https://www.jsph.jp/files/docments/COVID-19_031102.pdf)つまり、ほとんどの感染者は他に感染させないにもかかわらず、ごく一部の感染者のみが多数に感染させている事実があり、その集団をクラスターと名付けました。クラスターが発生しやすい条件を調べると、「3密(密閉・密集・密接)」の条件が揃った場所であったということは報道されている通りです。

こう書くと簡単そうに見えますが、この結論を導き出すためにはめちゃくちゃ大量の地道な作業があったはずです。このウイルスの潜伏期間は14日間と考えられています。感染者がひとり出たとすると、2週間前まで遡って感染者の行動を聞き取ることになります。これ、科学的検証に必要な質の高いデータを取るのが本当に難しいと思うんですよね。2週間前に自分が何をしていたか、正確に思い出せる人はなかなかいないんじゃないでしょうか。わたしなんか昨日の夕飯のメニューすら忘れてるくらいですからね…。おそらく色々な工夫をして情報を聞き取り、濃厚接触者を特定するわけですが、少なくとも10人くらいは濃厚接触者がいるわけで、そこから行動履歴調査を広げつつウイルス検査を実施していくので調査の物量が感染者ひとりから10倍に膨れ上がります。この量の調査を粘り強く続けられること自体がすごいことです。また、行動履歴の聴取はプライバシーに関わりますから、情報提供を拒否する人、嘘をつく人が出てきてもおかしくありません。これは仕方がないことだと思います。プライバシーを公開するのに抵抗がない人の方が少ないでしょう。

これだけ質の高いデータを取ることが難しい状況にありながら、クラスターを特定することができているのは、クラスター対策班をはじめとした対策に携わる方々の優秀さだけでなく、感染者の方が協力的なことも関係しているのではないかと思っています。そもそも大多数の人が嘘をついたり、情報提供を拒否したりしていれば屋形船・ライブハウス・ナイトクラブやバーといったクラスターの特定は難しくなります。細かくクラスターが特定できているのは、感染者の方がこの感染症の深刻さをよく理解し、協力的な姿勢をとってくれたおかげとも言えるのです。さらに3月31日には、LINEを通じて厚生労働省から各人に健康状態調査を実施することが発表されました。これは新たなクラスターを検出するために行われるとのこと。様々な手段を使ってクラスターの検出を試みており、頼もしいなあと思っています。

ここまでクラスター対策班の活躍ぶりをベタ褒めしてきたわけですが、そのベースには日本人全体のすごさもあると思うんですよね。専門家がクラスターを検出するためには、全体の感染者数がある程度に抑えられていなければ上記のような丁寧な追跡作業はできないはずです。散発的かつ爆発的な感染者の発生が抑えられ、クラスターによる集団発生のみが検出しやすい状況になっているということは、日本に住む人々が地道な手洗いや消毒などの予防策を続けたり、外出の自粛に努めたりしている成果なんじゃないかと思っています。こうした日本人全体の感染症と戦うマインドが、クラスター対策班の活動を後押ししているのではないでしょうか。

メディアでは「外出自粛要請が出ているのに、まだ外出している人がいる」とか、非協力的な様子が報道されてしまいがちですが、そもそも「『3密』を避けて」というメッセージを行政側が出せること自体がすごいことです。どのような行動・環境が「3密」にあたるのか、日本人ひとりひとりが自分の頭で考えて判断し、正しい行動ができると思っていなければ、こんなメッセージは出せません。単純に「外出禁止。違反者は罰金。」と命令して終わりです。(実際に諸外国ではそうなっています)

クラスター対策班の専門家も行政も、日本人の理解力・判断力を信じてこのようなメッセージを出しているのだと思います。あとは自分たちがどう判断し行動できるか。わたしは自分自身も「3密」を避ける行動をとるとともに、日本人の力を信じたいと思っています。