「ハプスブルク展」感想:アートの発展と進化がわかる!ヨーロッパ王族の世界へGO!

1. アーティストを育んだ華麗なる一族

スイス北東部が発祥のヨーロッパ随一の名門王家、ハプスブルク家。政略結婚によって領土を広げ、世界の歴史に影響を与え続けました。そんな名門王家にゆかりの美術品が今回国立西洋美術館で一挙公開されています。「ハプスブルク展」です。

芸術はどのようにして生まれ、育てられ、発展してきたのか?本展を見ていると、その流れがよくわかります。まず圧倒的に肖像画が多いんです。宮廷美術は、国民や諸外国に王家の富と権力を知らしめるため、王族の肖像画を描く需要が生まれるところから始まります。こうした王家のニーズによって画家や絵画技術が育ち始め、やがては王家に仕える宮廷芸術家が雇われるようになりました。

ハプスブルク家の宮廷芸術家としてひときわ有名なのは、スペイン王家で活躍したベラスケスではないでしょうか?17世紀のスペイン王家に仕えたベラスケスは、王家の肖像画を多く残していますが、本展では「マルガリータ王女」の肖像画が2作見られます。青と緑、それぞれ色の違うドレスを着たものです。(本展のパネルに使用されている下記の画像は「青いドレス王女マルガリータ・テレサ」(ウィーン美術史美術館所蔵)です。

マルガリータ王女はスペイン王フェリペ4世の娘。この肖像画が描かれたのは1659年なので、8歳頃の肖像画でしょうか。とても可愛らしく描かれています。彼女は物心つく前からオーストリアのハプスブルク家との縁談が進められており、この肖像画は彼女の姿を相手方に伝えるために描かれたのだとか。

絵画だけでなくブロンズ像、全て水晶でできた壺、黄金の鉢、水晶と金銀で作られたフォークやスプーンなど、豪華絢爛な美術品が並んで目もくらむほどですが、中でもわたしが圧倒されたのは展覧会入口付近に展示されていた甲冑でした。ヨーロッパの戦闘用の鎧かな~と思ったら、装飾用の豪奢な鎧だったのです。キャプションには馬上槍試合用=スポーツ用のものと書かれていましたが、金の唐草模様で彩られていたり、ウエストがくびれたデザインになっていたり…スポーツに打ち込むためというよりは、周囲に自分の富や権力、ファッションセンスをアピールするためのものでした。絵画だけでなく日用品、調度品、鎧などありとあらゆるものに絢爛豪華な装飾がほどこされているのを見て、日本とはやっぱり美意識が違うなあ…と改めて感じたのでした。日本が「わび、さび」に代表される引き算の美学なら、ヨーロッパはどんどん装飾を盛っていく足し算の美学。本展ではこれでもかというほど膨大な富が一か所に集められていて、ちょっとクラクラします。

2. ハプスブルク家といえばこの親子、女帝マリア・テレジアとマリー・アントワネットの肖像画も

ハプスブルク家出身の有名人として外せない人物は、やはりマリー・アントワネットではないでしょうか?オーストリアのハプスブルク家からフランス最後の国王・ルイ16世に嫁ぎ、最後はフランス革命でギロチンにかけられてしまう悲劇のヒロインです。彼女に仕えた宮廷画家、マリー・ルイーズ・エリザベト・ヴィジェ=ルブランが描いた「フランス王妃マリー・アントワネットの肖像」(ウィーン美術史美術館、1778年)が本展で見られます。とにかくサイズが大きく、見応えがあります。

そのそばには、彼女の母であるマリア・テレジアの肖像画があります。周辺諸国からの侵略に屈さず外交手腕を発揮し、また内政では近代化の礎となる改革を進めるなど政治力に長け、女帝と呼ばれました。その一方で、母親としてフランス王家へ嫁いだマリー・アントワネットを心配し、王妃としての自覚を促し手紙で諫めるなど心を砕いていたのだとか。それでもマリー・アントワネットの悲劇は防げなかったのか…とこの親子の激動の運命に思いを馳せてしまいます。

3. ハプスブルク家から美術館の発想が生まれた?!

多くの美術品を作り、そして蒐集していたハプスブルク家。ここから美術館の発想が生まれていたということを今回初めて知りました。18世紀のオーストリア・ハプスブルク家では週3回、一般大衆向けに美術品が無料公開されていたのだそうです。このとき画派別、時代別などの展示方法が開発され、美術館や展覧会の先駆けとなるような取り組みが行われていました。現代の美術館にもつながる発想ですが、こうした取り組みができるのも、卓越した美術コレクションがあるからこそ。ハプスブルク家のコレクションはやがてウィーン美術史美術館の基礎となり、現在こうして私たちが見ることができるのです。

「ハプスブルク展」は、単にヨーロッパの名門王家のコレクションが見られる芸術品の数々が見られるだけの展覧会ではありません。芸術が生まれ、育ち、一般大衆を魅了するまでのプロセスが体感できる、貴重な企画です。ヨーロッパと美術の歴史を創った華麗なる一族のコレクションをどうぞお見逃しなく。

ハプスブルク展

会期:2019年10月19日(土)〜2020年1月26日(日)<終了>
※毎週月曜、年末年始12月28日(土)〜1月1日(水・祝)は休館

会場:国立西洋美術館

公式サイト:https://www.nmwa.go.jp/jp/exhibitions/2019haus_habsburg.html

関連記事

ハプスブルク展が開催中の国立西洋美術館は、東京都心にある唯一の世界遺産。なぜ世界遺産になったのか?その理由はこちら↓

国立西洋美術館と、ル・コルビュジエの写真。

国立西洋美術館が世界遺産になった理由。そのウラには敗戦国日本が奮闘した、一大復興プロジェクトがあった

年末年始も上野が熱い!上野近辺で開催中の展覧会はこちら↓

ゴッホ展感想:巨匠を進化させた、画家たちの化学反応が見える!ゴッホは作品もプライベートも波瀾万丈。