外資系企業のはなし①:ヘッドカウント〜クビとの密接な関係

 

ヘッドカウント headcount: 社員数、人員の数。

ヘッド(head=頭)カウント(count=数)→直訳すると頭数(あたまかず)で、各部門・部署に何人の人員(社員だけでなく契約社員、派遣社員も含む)が配置されているかを把握するための数字です。

ヘッドカウントは、日本企業で全く聞かない言葉だと思いますが、外資系企業で最もよく耳にする単語と言っても過言ではありません。なぜなら、日本支社の財務状況、特にコスト(固定費)に大きな影響を持つ数字だからです。世界各国に支社を持つ外資系企業では、本国に主要な機能のほとんどを置く一方で、各国支社には製品やサービスを販売するための最低限の機能のみを置くことによって、可能な限りコストを下げて利益を確保します。そこで議論になるのが、「各国支社にどの程度の人員を置くべきか」ということ。人員を増やす=人件費コストアップなので、売上と利益のバランスをみながら、最低限の人員数=ヘッドカウントで事業を回していくことが求められます。たとえば日本支社で製品を販売する場合、製品を販売するための営業は日本人を日本支社で雇用する必要があるが、それ以外の製品開発機能や生産拠点等の機能を日本国内に持つ必要はない=そのヘッドカウントは日本支社に必要ないといったような判断が下されます。通常、支社のコストは可能な限り抑えたいので、日本支社で人員が必要と判断された部門であっても、ヘッドカウントはとても少なく、ギリギリの人員で仕事を回していくことになります。このような背景から、こんな会話が行われるのが常です。

用例

外資サラリーマン
最近ヘッドカウントがますますキツくなって、人手が足りないよー。

ヘッドカウントを増やすことはコストアップなので、減らされることはあっても、増えることはほとんどありません。そして、一度減らされたヘッドカウントはそう簡単に復活しません。しかし、たとえば下記のような場合は日本支社でヘッドカウントが増えます。

  • 日本で新規事業に参入するため、新たな人材の確保が必要。
  • 日本での業績が好調なため、日本支社に対してさらなる投資を行うメリットがあると本国が判断した。
  • 日本国内の法律改正により、新しい法的要求事項が増えたため、特殊な専門性をもつ追加人員の確保が必要になった。
  • ある部門でヘッドカウントを絞り過ぎ、業務量に対して人員が少なすぎたために激務で退職者が相次いだ。
  • 政治力のあるトップが本国から日本支社に来て、日本支社の使える予算が多くなった。

派生語として「ヘッドカウント・ターゲット(headcount target)」という言葉もあります。日本支社の利益を最大化するため、経営サイドは常に「ヘッドカウントを減らせる部門やポジションはないか」をウオッチしています。そこで、ヘッドカウントが減らせそうだと目をつけられた部門/ポジションがヘッドカウント・ターゲットです。当然、各部門はひとたび人員を減らされたら再度増やすことは難しいことをよくわかっていますから、自部門のヘッドカウントの必要性について強く主張し、ヘッドカウントが減らされないよう頑張るのです。

こういうことを聞くと、「やっぱり外資って怖い、厳しい」と思いますよね。私も転職当初は怖いなと思いました。日本企業では人員削減という話がこんなに頻繁に出ることはなかったからです。でも、最近はむしろ日本企業には別の怖さがあるかも、と思うようになりました。日本企業は基本的に終身雇用前提で、人件費を簡単にカットすることはできません。突然破綻する日本企業のニュース報道は、解雇規制の中で継続的に利益を出すことの難しさを如実に示していると思います。日本企業で働いていると、普段人員削減に関する話が全くでることもなく、危機意識を持つことは少ないです。そんな中、突然自分の会社が破綻したとなっても、自分の市場価値もわからない、転職のやり方もわからないということで途方に暮れてしまいます。そういう意味で、日本企業に勤めることは「怖い」と思ってしまうのです。

随時会社の経営状況を見直し、適切な人員配置を検討することは、会社として継続的に利益を出していくためには必要不可欠ですし、よくよく考えてみれば、あたりまえの経営ですよね。外資系企業にいると、常に自分のポジションが存続しうるかどうか危機意識を持って考えますし、自分の市場価値や転職の可能性についても検討するなど、危機管理をして備えます。会社がヘッドカウントにシビアであれば、経営状況が悪いのだな・・・と勘づくことができるので、人員削減が行われる前に自主的に他の仕事を探し、転職していく人もいます。つまり、会社側が社員に人員削減を言い渡すこともあるけれど、従業員側から会社にNOを突きつけることも多々あるわけなので、そういう意味では、会社と従業員の関係は対等と言えるかもしれません。

さらに究極的な話をすると、本社側が日本から撤退すると判断した場合には、日本支社に勤める従業員は原則経営層を含め全て解雇されます。日本からの撤退判断は、日本支社全体の業績や日本市場の動向など、さまざまな要因によって左右されるため、個人の頑張りではどうしようもない部分もあり、あまりクビの可能性についてくよくよ考えてもしょうがないです。それよりも自社の経営状況や業界の市場状況について随時情報を集めつつ、自分のスキルを磨いて転職市場での市場価値を高め、いつ何が起きても次の職を探せるようにしておくことが重要です。

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2018.05.04