理系と就職①半強制アカデミックキャリア問題

タイトルの「半強制アカデミックキャリア問題」って何??という方が多いかと思いますが、まずは「アカデミックキャリア」という言葉の説明から。

アカデミックキャリア:大学や公的研究機関における研究者の道を歩むこと。最終目標は大学教授。

理系学生(特に院生)が進路決定においてしばしば直面するのが、「アカデミックキャリア」へ進むよう強要されたり、研究者以外の道があることを知らないまま進路を決めてしまったりする問題で、それをこのエントリーでは「半強制アカデミックキャリア問題」と表現しています。

「理系に進む=大学の研究者になるよね」という理不尽な前提

私は理系の生命科学系学部と大学院を卒業した後、企業の研究職として就職しました。もともとなぜ理系の生命科学系学部に進んだかと言えば、単に「生物学が好きだから」くらいの軽~いノリだったわけで、入学時点では特に「絶対将来○○の道に進むぞ!」と決めていたわけではありませんでした。しかし、学部1~3年の一般教養科目や専門科目、実習が進み、各研究室の教授やスタッフ・大学院生の方と接する機会が増えるようになると、講義や実習の場で、理系学生は当然のように下記のような圧力をかけられていきます。

「君たちは将来、大学に残って研究者の道を歩むのだから・・・」

……えっ????????!

その時感じた強烈な違和感は約20年経った今でも忘れません。「理系に進んだだけで、何で大学の研究者になる意志があると勝手に理解されるの?」「そもそも、自分の進路は自分で決める権利があるはず。何で教授に勝手に決められなくちゃいけないの?」と、疑問と納得のいかない思いが渦を巻いていました。そして、学部4年次に研究室に配属され、卒論の準備に入ります。院生になればより長く研究室に在籍します。すると、研究室ではより強力なプレッシャーを受けます。研究者の良さについて語り、「こんなに面白いからぜひ研究者になってみよう」、という前向きな話ならまだいいのですが、研究室によっては学生が就職活動を行う時間を与えなかったり、強制的に教授のコネで就職を決めさせて進路の選択肢を限定したり、まれに就職を許さずに半強制的に博士課程まで進学させて研究者の道を歩ませるようなケースもあるようです。これが半強制アカデミックキャリア問題です。

理系院生は情報弱者になりがち

一方で、大学等の研究機関にしか理系院生のニーズがないわけではないのです。平成29年度の文部科学省学校基本調査によれば、大学院修士課程修了者の約80%が就職しています。大学等の研究者は原則博士過程修了者に限られるため、この80%の内訳は一般企業等の就職先がほとんどだと思われます。(尚、修士課程の後進学した人は9.1%で、これが将来アカデミックキャリアを歩む可能性の高い人たちです。)実際私は企業に就職していますし、同期の友人・知人も理系学部・大学院から多様な道に進んでいますので、就活市場においては理系学生に対するさまざまなニーズがあると思われます。にもかかわらず、教授側はしばしばそれらのニーズを無視して、あの手この手で大学に残らせようとします。例えば、研究活動のタスクを山と積んで就職活動の情報収集に使える時間を制限する。就職は教授推薦によるピンポイント就活に絞らせて、幅広い就職関連情報に触れさせないなど。できるだけ就活をラクに済ませたい院生にとっては、教授推薦は願ったり叶ったりかもしれませんが、世の中おいしい話には必ず裏があります。教授推薦で入社すると、コネ入社ならではのしがらみで退職しづらいなど、将来の自由な職業選択の可能性が奪われます。

このように、せっかく就活市場で理系学生の多様な需要があるのに、理系学生がそのチャンスを掴みにくい状況となっており、学生の機会損失に繋がっていると思います。本来、就職先に関する多様な情報を得ながら、自分の進路は学生自身が主体的に選択すべきなのに、最初から「大学の研究者に」というプレッシャーと情報統制がかけられて、研究以外の仕事にたどり着きにくくなっているのです。就活に関して、情報弱者になりやすい傾向があると思います。

最初から明確な進路希望を持っておらず、いろいろな可能性を探りたいと思っているのなら、研究室のプレッシャーに流されてはいけません。アカデミックキャリアは選択肢のひとつに過ぎず、いろいろな就職先や進路がありうることを理解することが大切です。

じゃあ一体どんな進路や就職先があるのか?

次回は、理系院生にどんな進路がありうるのか、私の友人・知人の事例を交えながら書いて行きたいと思います。

続きの記事はこちら↓

理系と就職②理系学生の進路は意外と幅広い

2018-05-17