小学校教員はワンオペ育児状態(後編)解決策と保護者の心得を考える

前編の記事はこちら↓

小学校教員はワンオペ育児状態(前編)保護者から見た激務の実態

教員の業務が多岐に渡り常に突発的なトラブルに対応する必要があるため、残業や休日出勤が常態化し本来の「勉強を教える」業務に注力できないことを述べましたが、最終回である今回はこのような状況の解決策について考えてみたいと思います。

業務棚卸しと適切な専門性をもつ人的リソース投入が必要

担任の先生の業務量があまりにも多く、業務内容が幅広いため先生が疲弊してしまっている事が問題なので、スタッフを増やし分業を進めるのが最良の解決策だと思います。例えば下記のようなアイデアです。

事務スタッフとの分業

前回記事でも触れましたが、教員の業務を全て棚卸しし、専門性と照らし合わせて先生がすべき業務とそうでない業務に切り分け、先生が行う必要のない業務は外注するべきだと思います。前記事で触れた以外でも、学校名義の書類配布と提出物回収や、家庭訪問のアレンジ、行事の企画など、先生が行っている単純な事務作業は大量にあります。教えることと生徒の学力サポートに注力し授業の質を高めるために、各先生に専属の事務スタッフをつけることができれば、相当改善されると思います。

複数担任制

また、学級運営や突発的なトラブル(生徒の体調不良など)に対応する上では、学級担任をもうひとり増やし、各学級担任+副担任の2人体制にすることで、相当な改善が見込まれると思います。

例えば、学級で問題が発生したときに、下記のようなバックアップができるからです。

  • 急な体調不良で生徒が倒れた。副担任が保健室や医療機関に付き添っていく間、担任が授業を続ける。
  • 食物アレルギーを持つ生徒への給食提供では、担任と副担任のダブルチェックによりミスを防ぐ。
  • 給食時は担任と副担任が交代で生徒を見守る。→昼休憩の時間が確保できる。
  • 担任が黒板の前で授業を行い学習に専念する。一方、副担任は教室後方で生徒を観察し、生徒の問題行動を注意するほか、疑問点の解消など学習の補助を行う。
  • 大人の目が増えることでいじめの早期発見と適切な対応ができる。

人を増やすことはコストアップになりますが、将来を担う子供達に対して、教育の質を向上させられるのなら、日本の将来にプラスに働きます。いわば将来に向けての先行投資です。そして学校教員の長時間労働も解決できるはずなので、メリットの方が上回ると思います。

学校も時代に合わせて進化している

学校はとても保守的なところで、時代の変化についていっていない!などと批判されることもありますが、私が小学生だった30年前と比べて進化しているところもあるんです。前項で専門性に合わせた人的リソースの投入が必要だと述べましたが、実はすでにそういう取り組みが始まっています。

スクールカウンセラーの設置

以前は担任の先生が生徒の心のケアにあたっていたと思いますが、現在では臨床心理士等、心理療法の専門性をもつスクールカウンセラーが多くの学校に配置され、学校での問題解決にあたっています。(文部科学省HP)不登校やいじめ問題の解決には専門家の介入が必要な場合も多いので、問題解決のため、担任の負荷を軽減するためにもこれは非常に良いことだと思います。

専科教員や補助教員の増加

私が小学生の頃は家庭科、音楽に専門の先生(専科教員)がいて、高学年の時は専科教員の授業を受けていたと思います。一方、今は図工の専科教員や、算数の補助教員など、教える側に特殊な専門性が必要であったり、つまづきやすい生徒が多く学習サポートの必要性が高かったりする科目については専門の教員が配置され、低学年の授業から担当しています。これも授業の質を高めて学習の定着を図り、担任の業務を効率化する上で素晴らしい方策だと思います。

このような

業務棚卸→業務切り分けと適切な専門人材の確保→効率化と教育の質向上

の良いサイクルが回ってくれるといいなあと思います。

まとめ:保護者の心得

  • 小学校教員はワンオペ育児に似た過労状態です。そしてそれは先生個人の問題ではなく、業務が最適化・効率化されていないことによるマネジメントの問題です。小学校の先生自身に罪はないので、先生を追い詰めかねない過剰な要求や、無理解な批判はやめましょう。現場の先生にクレームをつけるのではなく、学校のマネジメントについては学校のトップ(校長先生)や行政に対して問題提起し、副担任や事務スタッフの必要性について陳情するのも良いでしょう。共働き家庭への配慮なんて、現場では到底無理であることを理解しましょう。
  • 子供に質の高い教育を受けさせたいなら、先生の学級運営の負担を軽くしてあげることが必要です。1人担任体制で学級運営に支障が出ることを防ぐために、自分の子供が学校で問題を起こさないよう保護者が見守り、保育園時代よりも保護者が積極的に関与していく必要があります。
  • スピードはゆっくりかもしれませんが、学校も時代に合わせて進化しています。その進歩を認め、正しい進化の方向へ向かうよう保護者側も誘導していきましょう。