明治神宮ミュージアムは、皇室の美術品が見られるクールジャパンな観光スポット

アート

「原宿はパラドックスの街」。あるフランス人の友人は、原宿をこう評した。意味がわからず真意を尋ねてみると、だいたい以下のような考えを語ってくれた。

「Kawaiiの聖地」として世界的に知られる原宿、表参道。原宿駅の東側にはブランドショップが立ち並び、独創的なファッションに身を包む若者たちが闊歩している。ここは世界最先端の流行を発信する場所として不動のブランドを築き、活気に満ち溢れている。その一方で、西側は静謐な深い森に包まれ、日本の伝統文化を象徴する明治神宮が鎮座している。キラキラした表参道の雰囲気と、明治神宮の杜にギャップを感じ、彼は「パラドックスの街」と言ったのだ。まさに駅を挟んで西側と東側に、日本の古い伝統と最先端のトレンドが絶妙なバランスで共存している。わたしたちにとっては見慣れた風景だが、外国人からすると異質なものが両立する不思議な光景で興味をそそられるようだ。

ここには、いま多くの外国人観光客が押し寄せている。東側の表参道エリアだけではない。11月の某日、久しぶりに明治神宮へ参拝してみると、参道を歩く人々は実に多国籍であった。折しも七五三の時期だったので、外国人観光客の間を縫うように、晴れ着に身を包んだ子供たちが慣れない下駄で玉砂利を一生懸命踏みしめている。かわいい。晴れ着の子供たちに写真撮影を打診する外国人観光客もいた。ときには、純和風の結婚式に遭遇できることもある。外国人観光客にとって、原宿は日本の伝統文化とKawaii文化を一箇所で効率よく体験できる街なのだろう。

そんな明治神宮は、もともと明治天皇と昭憲皇太后を祀って建てられたものだ。皇室直轄の神社であるからこそ、皇室ゆかりの美術品を多く所蔵している場所でもある。これまで、それらの宝物は本殿や参道から遠く離れた宝物殿で公開されていた。ちなみに宝物殿の場所はここ(赤矢印の場所、現在は休館中)。ちなみに、地図の一番下が原宿駅のある場所。

これではちょっと参道から遠すぎる。ただでさえ広大な明治神宮、参拝者は本殿でお参りするだけでも結構疲れるもの。本殿よりさらに奥、代々木駅付近まで足を伸ばすのはなかなか厳しいだろう。(実際、わたしも今まで宝物殿には行ったことがなかった)そういうこともあってか、表参道駅から徒歩5分、本殿へ向かう参道のすぐ側に明治神宮ミュージアムが開館した(2019年10月、青矢印の場所)。ちょうど即位礼正殿の儀や大嘗祭などをニュースで知り、皇室への興味もあったので立ち寄ってみた。

本殿へ向かう大勢の観光客が通る参道。そのすぐ横に、真新しい施設がたたずんでいた。格子状の木材とガラス窓のデザインが美しい。これが隈研吾氏の設計で建てられた「明治神宮ミュージアム」。現在開館記念特別展が開催中であった。

入り口に自動券売機があり、展示室は1階と2階に分かれている。1階は「杜の展示室」で、明治神宮の造営経緯や年中行事が映像やパネル、模型で解説されている。2階では皇室ゆかりの美術品が展示される企画展が開催されている。券売機の説明がわかりにくいのだが、1階のみの入場であれば入館料は300円。1階、2階両方を見るのであれば入館料は1000円となる。

おそらく、1階は外国人観光客を意識して作られた展示なのではないかと思う。四季折々の日本の行事が日英併記の説明文で解説され、明治神宮の由緒や造営の様子が映像でわかりやすく説明されている。それにしても明治神宮の森が人工的に作られたものだとは知らなかった。自然な森林が育つよう、植生を工夫して森林を造営し、数十年かけて現在のような豊かな森になったのだそうだ。

一方、2階は明治天皇、昭憲皇太后ゆかりの美術品が展示されている。今年、即位の礼で天皇陛下が着用され話題となった「黄櫨染御袍」(明治天皇ご着用のもの)、荘厳な装飾に彩られた馬車「六頭曳儀装車」など、ここでしか見られない品々から当時の皇室を偲ぶことができる。そしてコの字型の3画面スクリーンを備えた映像シアターでは、四季折々の明治神宮の風景が見られ、まるでVRを見ているような臨場感あふれる映像に圧倒された。少し残念なのは、2階の展示室には日本語の解説しかないことだ。これだけ多くの外国人観光客が訪れている明治神宮であれば、多くの外国人をこのミュージアムに呼び込み、日本の皇室や日本文化を伝えるのに絶好の場所だと思うのだが。まだ開館したばかりなので、外国人も含めた来館者はまばらであったが、これからその辺は改善されていくのかもしれない。

日本人であるわたしたちでも、明治神宮がどのような場所であるか、皇室はどのような歴史をたどってきたのかは意外と知らないものである。表参道で最先端のグルメやファッションを楽しむだけでなく、外国人を魅了する明治神宮にも足を運んでみると、皇室の歴史や日本文化の多彩さ、その価値について再発見できる。いったい日本の何が、外国人にとって魅力的なのか?外国人観光客の行動が、わたしたちに様々なことを教えてくれる。

明治神宮ミュージアム 開館記念特別展

会期:2019年10月26日〜2020年3月29日

公式サイト:http://www.meijijingu.or.jp/homotsuden/index.html