特別展 「ゆかた 浴衣 YUKATAーすずしさのデザイン、いまむかし」:美術館で夕涼み!浴衣の歴史と進化がわかる展覧会。

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東京・六本木にある泉屋博古館文官で開催中の特別展、「浴衣ーすずしさのデザイン、いまむかし」ヘ行ってきました。梅雨が本格化し、今年最初の台風も通過したこの頃、蒸し暑さを吹き飛ばしてくれる涼しげな展示でとても風流でした。

浴衣の発祥

そもそも浴衣の語源は、湯帷子ゆかたびらから来ているとのこと。江戸時代中頃までは風呂といえば蒸し風呂のことで、蒸し風呂に入る際に来ていた裏無しの着物を湯帷子といっていたのだそうです。その後、湯に浸かるタイプの風呂が普及し、浴後の汗取りや湯上り後に涼むための木綿の着物として転用されるようになり、「浴衣」となっていったとのこと。さらに用途が広がり、浴後に涼むだけでなく銭湯への往復や盆踊りや花火大会になって現在に至るのだそうです。

本展では、江戸時代~明治時代を中心とした浴衣そのものの展示だけでなく、浴衣で夕涼みをする美人画を描いた五葉蔦(岡田三郎助、泉谷博古館分館所蔵)、帝室技芸員として皇室に認定された日本画家・鏑木清方がデザインした浴衣など、美術的価値の高いものも多数展示されています。

浴衣といえば白地に藍。そこからの劇的な進化は何を語る?

本展を見ていると、江戸~明治時代の浴衣のほとんどは、白地に藍染めが施されたものであることに気づきます。他の染色があまり見られないのは藍染めのコストが安く、庶民の普段着としてコストメリットがあったからでしょうか?最近巷で売られている多色プリントの浴衣を見慣れていると、白地に藍の2色使いだけでも柄や染め具合で個性を出している昔の浴衣が逆に新鮮に見えました。

ここ最近、ファッションブランドが手がける浴衣では色味を多く使ったプリント柄や、白黒モノトーン、和洋折衷デザイン(襟元にレースを使ったり、膝丈スカートのような形にしてパニエでふんわりさせたり…)などなど、多様なデザインのものが出てきています。江戸~明治時代の数百年間と比べて、ここ数十年でデザインのバリエーションが爆発的に増えているのは、和装が衰退している危機感によるものだろうなと思いました。

浴衣といえば白の木綿に藍染め、という伝統的定番を排して、これだけ多彩なデザイン浴衣を投入するということは、和装業界にとっては相当勇気のいる挑戦だったはずです。強烈な危機感にさらされなければ、これだけの斬新な発想を実行できません。その危機感とは、明治時代の文明開化以降に加速した生活の洋風化。衣食住すべてが西洋化し、和装の出番はどんどん少なくなってしまいます。そこで、まずは比較的手入れや着付けがカンタンで、安価な浴衣から現代のデザインや洋装の要素を取り入れ、和装の生き残りと再興を目指しているのです。白地に藍の浴衣には、どうしても温泉宿や旅館で使われる寝巻きとしての浴衣のイメージが付きまとってしまうもの。それを払拭し、おしゃれなよそゆき着としての地位を確立したいという狙いもあったのでしょう。「花火大会や盆踊りには浴衣」というイメージが定着し、毎年夏になると浴衣売場が活気づく傾向はまだ続いているので、和装業界の浴衣戦略は成功と言えるのかもしれません。

きもので来館すると割引も!

さすが浴衣展らしく、きもので来館すると入館料が100円引きになるそうです。会場には浴衣で来場している方もいらっしゃいました。なんとも風流。浴衣を着て、美術館で夕涼みしてみるのも粋な夏の過ごし方です。

特別展 ゆかた 浴衣 YUKATA すずしさのデザイン、いまむかし

会期:2019年5月28日〜7月7日

会場:泉屋博古館分館(東京・六本木)

公式サイト:https://www.sen-oku.or.jp/tokyo/program/index.html