nendo×サントリー美術館「insipiration or information? 左脳と右脳でたのしむ日本の美」:美術展の既成概念がくつがえる!クリエイティビティの嵐にノックアウトされた話。

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デザインオフィスnendoがサントリー美術館所蔵の美術品をプロデュース!

GW からサントリー美術館で、個性的な美術展が始まっています。世界的な有名デザイナー、佐藤オオキさん率いるデザインオフィスnendoとサントリー美術館のコラボレーション、「information or inspiration? 左脳と右脳でたのしむ日本の美」(公式サイト:https://www.suntory.co.jp/sma/exhibition/2019_2/)。サントリー美術館の所蔵品をnendoがプロデュースした展覧会です。私は佐藤オオキさんの大ファンなので、この展覧会が始まる前日に行われたトークショーを聞き、そして展覧会も併せて見に行きました。ひとことで言うと、既存の美術展の概念を打破した斬新な展示となっており、目から鱗でした。

右脳と左脳で見るってどういうこと?

「良いデザインとは、右脳的価値と左脳的価値のバランスがとれているものである」

(佐藤オオキ氏、2019年4月26日 トークショーにて」)

情報のバイアスなしに、第一印象と感覚で見るのが右脳で見る=“inspiration”。一方、情報を頭の中にインプットして、その情報をもとに視覚で見た情報を解釈する=左脳で見るのが“information”。「いつも右脳と左脳を意識してデザインしています」と佐藤オオキさんはおっしゃっていました。これって自分に置き換えて考えると、美術展を見る時の脳内の動きと同じなんですよね。

美術展は通常、展示ケースに美術品が陳列され、その傍らに作品の来歴や価値を言語化して示したキャプションがあります。美術展を目で見て、第一印象で「綺麗だな」「不思議な形…」「これは一体何?!」と感じるのは右脳的見方。ここで生じた疑問や好奇心を満たす情報をそばにあるキャプションで得るのが左脳的見方。このふたつの見方は、誰もが美術館で無意識的にやっていることではないでしょうか。

ただし、通常の美術展では作品とキャプションが近接して展示されるため、この脳内の動きを意識することがないんですよね。右脳的情報と左脳的情報がほぼ同時に入ってくるので、感覚的情報と文字情報が脳内で同時に処理され、右脳と左脳それぞれの動きにフォーカスすることが難しいんです。

その問題を斬新な展示方法で解決し、ひとつの美術品を多角的に見る展示を構成しているのが、本展の唯一無二の価値だと思います。

右脳と左脳の見方を切り離して展示する、斬新かつクリエイティブな手法。

右脳的展示と左脳的展示を徹底的に切り離す

本展の斬新なところは、同じ美術品を二通りの展示方法で楽しめること。そもそも、展示の入り口が”inspiration”(右脳)と”information”(左脳)の2つに分かれているんです。片方のみ見ることもできますし、両方見ることももちろんできます。(※本展はすべて写真撮影可能です。ただし、フラッシュ撮影と動画撮影は不可。)

information or inspiration?展 入口が2つに分かれている。

information or inspiration?展
入口が2つに分かれている。

“inspiration“(右脳)では徹底的に情報を制限して美術品を見せています。作品の全体像すら見えないものも。もちろん、キャプションなどの説明は一切ありません。それに、通常の美術展とはまったく異なる展示方法を使っています。斜めから見たり、分解して見たり、鏡を使って見たり…。ライティングも工夫されています。そして、通常の美術展とは異なり、提供されている感覚情報は視覚だけではないんです。視覚以外の五感(味覚、触覚、嗅覚、聴覚)のうち、どれが提供されているのか?それは実際の展示でぜひ体感してみてください。とにかくここでは、余計な情報なしに徹底的に感覚を研ぎ澄ませて作品を見ることになります。

information or inspiration?展 右脳的展示の一例。

information or inspiration?展
右脳的展示の一例。

一方、”information”(左脳)では作品そのものの説明や、用いられている技法の解説、佐藤オオキさんがなぜこの作品に興味を持ったかなど、たくさんの情報が提供されています。そこで初めて、なぜこの作品を右脳的展示でこういうふうに展示したのか、という答えがわかって「なるほど!!」と思い納得するわけです。

このように美術品を見る時の右脳的見方と左脳的見方を強制的に切り離して展示しており、無意識的に自分がやっていた右脳と左脳、それぞれの脳の動きを強烈に意識させられながら展示を見ることになります。これは初めての経験で、ワクワクして鳥肌が立ちました。

「情報を制限すると、情報が伝わりやすくなる」というパラドックス

本展のトークショーで、逆説的で面白いなと思った話がありました。

「最初に作品を見せる時、余計な情報は極力削ぎ落とした方が伝わりやすい。最初に渡す情報はよく吟味して、興味をもって手にとってもらうために必要な最小限にとどめた方が良い」

(佐藤オオキ氏、2019年4月26日 トークショーにて」)

これって最初に全ての情報を提供しないことで、情報への飢餓感を持たせた方が良いということですよね。

作品とのファーストコンタクトでは、ごく少量の情報しか与えない。そこで「これ面白いな。何だろう?いいかも!」と思わせ、もっと情報が欲しい、と情報を渇望した状態で追加情報を渡した方が、受け手側の情報の吸収スピードが早くなる。逆説的ですが、真理だと思います。

inspiration or information?展 ファーストコンタクトの情報はこれだけ。ここから何を感じ取るかは人それぞれ。

inspiration or information?展
ファーストコンタクトの情報はこれだけ。ここから何を感じ取るかは人それぞれ。

本展でもまさにこの考え方が実践されているなと感じました。これを体感するには、最初に“inspiration”(右脳)セクションを見てから”information(左脳)セクションに移るとよく理解できると思います。

nendoオリジナルのインスタレーションも楽しめる

サントリー美術館の美術品だけでなく、nendoが作った空間展示もあります。展示はこんな感じ。大人も子供も大はしゃぎする、面白く不思議な展示です。

傘をさすと映像が見えてくる。

傘をさすと映像が見えてくる。

傘をさしても映像が遮られるどころか、逆に現れてくるのはなぜ???

傘をさしても映像が遮られるどころか、逆に現れてくるのはなぜ???

これってどんな仕組みなの?それはぜひ展覧会の会場で。混雑時は行列ができるようですが、並んででも体験する価値ありです。

美術展ってなんだろう?

本展を通してみて、佐藤オオキさん率いるnendoの凄さが垣間見えた気がしました。既成概念にとらわれず、「美術展とは何か」をゼロベースで問い直した結果生まれた展示だと感じたからです。おそらく「美術展とは、作品の右脳的価値と左脳的価値を最大限に引き出す場を提供することだ」と考え、それを達成するために考え抜かれたのではないでしょうか。強い光を当てられない、温度・湿度管理が必要など、美術展の実施にあたっては制約条件も多いはず。それを乗り越えて、これだけ斬新な展覧会がを創り出すことができるなんて素晴らしいです。

作品をどうやって魅力的に見せるのか?というプレゼンテーションの勉強にもなります。おススメです。

nendo×Suntory Museum of Art

information or inspiration? 左脳と右脳でたのしむ日本の美

会期:2019年4月27日〜6月2日
場所:サントリー美術館
公式サイト:https://www.suntory.co.jp/sma/exhibition/2019_2/

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