フェルメール展感想:日本初公開の「取り持ち女」は必見!最新の混雑状況も。

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フェルメール展(東京・上野の森美術館)は昨年10月5日から公開中(公式サイト)で、すでに一度訪問しています。そのときの訪問記はこちら↓。

2018フェルメール展感想:コスパ最強のフェルメール・ルームを見逃すな

今日から展示替えがあり、日本初公開の「取り持ち女」を見ることができるのだそう。これは見逃せないということで、新年早々行ってきました。

「取り持ち女」のモチーフと不思議なポイント

「取り持ち女」は1656年の作で、本展で同時に見ることができる傑作「牛乳を注ぐ女」の数年前に制作されています。フェルメールが、人々の日常を描く風俗画に注力しつつあった期間に制作されたものだそうで、売春宿が舞台となっています。

フェルメール作 「取り持ち女」(1656年)、ドレスデン国立古典絵画館所蔵

フェルメール作 「取り持ち女」(1656年)、ドレスデン国立古典絵画館所蔵

右端には売春婦が描かれ、その背後には顧客の男性がいて対価である金貨を差し出しています。売春婦はグラスを持って酒を飲んでいるようですが、傍にある陶器の酒瓶(デルフト焼のものでしょうか)を描いた青色が鮮やかで大変美しいのです。画集で見たときはこの陶器の瓶にそれほど魅力を感じなかったのですが、実物では単なる静物の範疇を超えた存在感を放っていました。こんなところにもフェルメール・ブルーの魔力が…。

中央には売春を斡旋する取り持ち女。以上の三者(売春婦、客、取り持ち女)は利害関係が明確なのですが、不思議なのは左端にいる謎の男性。鑑賞者に向かってミステリアスな笑みを浮かべています。この男性はフェルメールの自画像とする説もあるようです。この人物は誰なのか、どんな利害関係のある男性なのか、微笑の意味は何か、なぜカメラ目線なのか…など、鑑賞者の想像をかきたてる謎めいた部分がフェルメールの魅力かもしれません。

売春宿という状況を考慮すると、左端の男性は居合わせた別の客か、売春宿の経営者かな…と個人的には想像しています。どちらかといえば、売春宿の経営者と解釈するのがしっくりくる気がします。衣装が豪華ですし、まさに売春の契約が成立した瞬間、「これで成約一丁あがり!」とほくそ笑んだ微笑に見えるからです。ぜひ実物を見て、どんな解釈がありそうかあれこれ想像してみてください。こちらの作品のサイズは143cm×130cmとフェルメール作品の中では大きいので、多少混雑していても見やすいと思います。

同時代の画家の作品と比較すると、フェルメールのすごさがよくわかる

フェルメール作品が展示されているフェルメール・ルームへ行く前にぜひチェックすべき作品。それはハブリエル・メツーの2作品「手紙を読む女」と「手紙を書く男」です。どちらもフェルメールの影響を受けたといわれている作品で、構図や題材が似ているのですが、見たときの印象がフェルメール作品とまったく異なるのがわかると思います。

ハブリエル・メツー作 「手紙を書く男」 (1664-66年頃) アイルランド・ナショナル・ギャラリー所蔵

ハブリエル・メツー作
「手紙を書く男」
(1664-66年頃)
アイルランド・ナショナル・ギャラリー所蔵

ハブリエル・メツー作  「手紙を読む女」 (1664-66年頃) アイルランド・ナショナル・ギャラリー所蔵

ハブリエル・メツー作 
「手紙を読む女」
(1664-66年頃)
アイルランド・ナショナル・ギャラリー所蔵

おそらく大きく違うのは下記2点でしょう。

①遠近法の使い方

フェルメール作 「手紙を書く婦人と召使い」 (1670-71年頃) アイルランド・ナショナル・ギャラリー所蔵

フェルメール作
「手紙を書く婦人と召使い」
(1670-71年頃)
アイルランド・ナショナル・ギャラリー所蔵

フェルメールは床面タイルの模様や窓枠の斜線の描き方で極端な遠近法を使っており、実際よりも部屋の奥行きを大きく見せています。それに対してハブリエル・メツーの作品ではあまり奥行きを感じず、狭い部屋の壁際に人が座っているように見えます。

②光の捉え方

フェルメール作 「手紙を書く女」 (1665年頃) ワシントン・ナショナル・ギャラリー所蔵

フェルメール作
「手紙を書く女」
(1665年頃)
ワシントン・ナショナル・ギャラリー所蔵

フェルメールは左側の窓から差し込む太陽光で照らされたモチーフを描いています。部屋全体を明るく照らすやわらかな自然光というよりは、局所的に強いスポットライトを当てたような、対象を光の力で浮き上がらせるような陰影を描いている点が傑出しています。1人の人物のなかでも陰影にメリハリがありますね。舞台の上で演者にスポットライトが当たっているような印象を受け、ドラマチックな効果を生んでいるのだと思います。ハブリエル・メツーの作品では空間全体がやわらかい光で照らされており、同様のモチーフであっても見た時の印象が随分違って見えます。

こうして比較してみると、なぜフェルメール作品が人を惹きつけるのか、その理由が直感的に分かってきます。本展はフェルメールと他の画家の作品を比較鑑賞する絶好のチャンス。ぜひ他の画家の作品もチェックしてみてくださいね。

混雑を避けつつフェルメール・ルームを楽しむための小ワザ

現状日付指定券が売り切れている日は少ないようなので、開幕当初よりはゆったり観れます。が、やはりフェルメール・ルームは混雑していました。また、入場指定時間の最初から行くと、入場待機列に数十人が並んでいる状況でした。

そこで、入場指定時間の開始後1時間後くらいを目処に、遅めに入場すると入場待機列がなく快適に入場できます。例えば、9時〜10時半の枠でチケットを取っているのならば、9時半〜10時頃に入場するということです。次の組の入場開始時間直前にはフェルメール・ルームの混雑が緩和されるので、その時間帯にゆっくり観るのがおすすめです。また、フェルメール作品は小品が多く、最前列まで進んでも少なくとも1.5m程度離れた位置からの鑑賞になるため、細部までじっくりと楽しみたい方は双眼鏡か単眼鏡の持参をお勧めします。

フェルメール展東京展の会期は2019年2月3日まで。日本でこれだけのフェルメール作品に出会える機会はそうそうありません。まだの方はどうぞお見逃しなく。

フェルメール展(東京展)@上野の森美術館

会期:2018年10月5日〜2019年2月3日

チケット:入場には日時指定券が必要。事前予約購入は公式サイトから↓。

https://www.vermeer.jp