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誰もが一度は歴史の教科書で目にしたことがある、金印(漢委奴国王印、国宝に指定)。学校で習う内容は、福岡県志賀島で偶然、農民によって発見されたと伝わっていること、当時の中国政権との交流があったことを示すことなどですが、実際どんなものなのかは実物を目にしないと分からないもの。そこで金印を所蔵している福岡市博物館で実物を見てきました。
Index
1. 展示室を入ると金印がお出迎え!
福岡市博物館・常設展示室の入口。入館料を払って展示室へ入っていくと、まず出迎えてくれるのが美しい輝きを放つ金印です。(福岡市博物館では、撮影禁止マークのないものについては、撮影可能です)
真っ暗な展示室の中に、ダウンライトに照らされて金印が輝いています。蛇が巻きついたデザインのつまみ(鈕と呼ばれるそうです)が付いており、大きさは2.3cm四方ほど。「意外と小さい!」というのが第一印象でした。
金印の下部には鏡が設置されており、金印の裏側にある「漢委奴国王」の印面が鏡面を通じて読み取れます。弥生時代のものなのに、美術品としてみても美しく、ガラスケースにはりつくくらいの勢いでじっくり見てしまいます。
2. 金印の歴史的意義とは?
美しい金印を堪能した後は、そもそも金印はどのようにして見つかり、どのような歴史的意味のあるものなのか?がわかりやすく解説されている奥の展示室へ進みます。ここでは、パネルや復元展示を使って金印にまつわる歴史的エピソードがよく分かるようになっています。
金印の発見経緯と黒田家の英断
江戸時代後期の1784年、福岡湾に突き出た半島にある志賀島の農民によって、金印が発見されました。近代的考古学が未発達な時代に発見されたにもかかわらず、発見の約1ヶ月後には奉行所に届出が行われ、国内の学者らによって歴史的意義が検討されました。発見当初から歴史的に貴重なものと認識され、当時この地を治めていた福岡藩藩主・黒田家によって大切に保存された結果、現在私たちが目にすることができるようになりました。さすが軍師官兵衛で有名な黒田家、英断です。
まだまだ論争が絶えない、金印の謎
金印が出土したのは良いものの、一体持ち主は誰で、どんな用途に使われ、どんな歴史的事実を教えてくれるものなのか?それを読み解くひとつの手がかりは、中国の歴史書です。かつての中国の王朝、漢の歴史書に書かれている金印の記載について解説がありました。例えば下記のようなものです。
- 「漢書」地理志:紀元前後1世紀の日本は倭と呼ばれ、漢に定期的に貢ぎ物を献上
- 「後漢書」東夷伝:紀元57年、倭の奴国が後漢の光武帝に貢ぎ物を献上し、印綬を与えられた
印綬とは、漢王朝が役人に与え、文書を封印する際に使用された「印」と、印につなぎ帯からつり下げた絹ひも「綬」をあわせた言葉。印の材質と綬の色は位に応じて決まっていたのだそうです。そうなると「後漢書」東夷伝の記載は「倭の奴国が印綬を与えられた」という話ですし、まさにこの金印のことを言っていそうですよね。こうした手がかりから、おそらく弥生時代の日本には奴国をはじめとした様々な小国があり、それぞれが大陸と交流を持っていたと考えられています。しかしながら、なぜ志賀島で発見されたのか?奴国はどんな国だったのか?そもそも、金印はホンモノなのか?などなど、謎は尽きないようです。今後の研究が楽しみですね。
展示には、金印の使われ方の復元展示もありました↑。てっきり金印は紙に押印するものだと思っていたら、荷物の上部に取りつけられた粘土の封印に押して差出人を証明し、未開封状態を保証するためのものだったんですね。
3. 金印レプリカを触って押印できる、体験型展示が楽しい
展示品の金印は当然、触ることができませんが、実際どんなものか体験してみたいですよね。展示エリアには金印のレプリカが設置されており、自由に触ることができます。
持ってみるとビックリ。2.3cm四方の小さな印なのに、見た目の割にずっしりと重たい(108g)のです。
そして粘土の上に実際に押印することができます。これは楽しい!まずはローラーで粘土の表面を平らにならして、金印をぐっと押しつけます。印字を崩さないようにゆっくりと持ち上げると…「漢委奴国王」が押印できました!
あとで気づいたのですが、福岡市博物館のミュージアムショップには金印スタンプなどの金印グッズがあるらしく、欲しくなってしまいました。(http://museum.city.fukuoka.jp/about/shop.html)
時間がなくてミュージアムショップに寄れず残念…。
4. 金印だけじゃない! ほかの常設展示も充実。
常設展示スペースには、古代から現代の時代の流れに沿って充実した展示が所狭しと並んでいます。特徴的なのは、かなり古い時代の展示でも「海外交流」に関する展示があること。日本列島の中で、福岡は地理的に最も朝鮮半島と近接しており、古くから大陸との交流の中で発展してきた歴史がよく分かります。弥生時代や古墳時代から海外とやりとりしていたのか…と目からウロコでした。鎌倉時代の元寇をはじめとした大陸からの脅威にさらされるなどの困難を経験しながらも、博多の商人は海外との貿易で大きな富を手にし、この地はどんどん豊かになっていきました。
さらに時代が進み、2014年の大河ドラマでおなじみ、軍師官兵衛の時代にこの地は「福岡」と名づけられました。そして常設展示の締めくくりは、国の重要無形文化財に指定され、現代でも盛り上がっている夏の祭り、博多祇園山笠の展示。この舁き山と呼ばれる山車が猛スピードで街中を練り歩くのだそうです。
こうして福岡の熱いエネルギーを感じつつ、常設展示室を後にしたのでした。
5. 開放的なミュージアムカフェもおすすめ
ボリューム満点の常設展示を堪能したら、ちょっとミュージアムカフェで休憩したくなるもの。福岡市博物館のミュージアムカフェは、窓がガラス張りになっており、外の風景のパノラマが臨めます。
ちなみにミュージアムカフェの利用だけなら、入館料は無料です。そして結構空いているので、ゆったりできます。私が行った時はこんな感じ。貸切状態でした!
甘いものが欲しくなったのでミニパフェを頼みましたが、お値段380円と比較的リーズナブルで嬉しい。
ミュージアムカフェ(福岡市博物館 喫茶・談話室)の詳細はこちらから↓
福岡市博物館 公式サイト:http://museum.city.fukuoka.jp/about/cafe.html
メニューなど:http://gennanso.com/food/fukuoka_city_museum/
金印が他の美術館や博物館に貸し出されることはめったにないと思うので、実物を見るなら福岡市博物館へ行くしかない!歴史や国宝に興味のある方は、福岡に行く機会があればぜひ。
歴史を学びはじめたけれど、ひたすら教科書の暗記ばっかりでウンザリ…という方にもオススメです。人間、実際に現物を見たらそう簡単に忘れませんし、本来歴史を勉強する面白さは暗記ではなく、こうした出土品から過去の事実を推理する謎解きなのですから。実物に立ち会って金印の歴史ドラマを感じれば、歴史の勉強が楽しくなること請け合いです。
所在地:〒814-0001 福岡市早良区百道浜3丁目1-1
アクセス:JR・新幹線博多駅、福岡市営地下鉄・西鉄天神駅から西鉄バスで20〜30分
(博物館北、博物館南バス停下車)
※西鉄バスの路線検索がおすすめ:https://jik.nishitetsu.jp
大人も子供も楽しめる、福岡市博物館内の無料体験施設もおすすめ!レポートを書きました↓