都庁ピアノ:草間彌生さんデザインのピアノで、東京都庁の展望室が美術館&コンサートホールに。芸術と行政のコラボで世界を向いたTOKYO。

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東京都庁にストリートピアノが出現

東京都庁で「おもいでピアノ」という素晴らしい取り組みが始まっています。これは昨年都知事から発表されたプロジェクトで、都民から思い出の詰まった不要なグランドピアノを募り、ストリートピアノとして都庁内に設置することで、来庁者どうしの音楽を通じた交流を促進することを目的としています。そして世界的に有名な前衛芸術家、草間彌生さんがピアノの装飾を監修されました。2019年4月8日から東京都庁の南展望室で一般公開されており、実際に見に行ってきました。

東京都庁 南展望室 「おもいでピアノ」 (筆者撮影)

東京都庁 南展望室
「おもいでピアノ」
(筆者撮影)

このプロジェクトが企画・実行された経緯を調べてみると、世界へ向けてTOKYOを最も効果的にアピールするために、考え抜かれた戦略的プロジェクトであったことがわかってきました。そして都庁の展望室が観光スポットとして最強レベルの競争力を得たことに感心し、これ以上有用な都民税の使い方はないかも、と思ったのです。

外国人観光客にTOKYOをアピールする絶好の場所は、実は都庁内にあった

東京都庁の展望台は、無料で東京の眺望(夜景も含む)が楽しめ、現在は年間200万人もの観光客が訪れる人気観光スポットになっています。そして来場者の多くは、外国人観光客。東京タワーの入場者が年間250万人ということなので、都庁展望台もなかなかの集客力を持っていることになります。この展望室をさらなるTOKYOアピールの場として利用しない手はない、ということで投資が行われたのです。
では、どのようにして観光スポットとしての価値を向上させるのか?そこで参考にされたのが、世界的なストリートピアノのプロジェクトでした。
※参考:2019年3月1日・都知事会見(東京都HP

世界的なストリートピアノ・プロジェクトにヒントを得る

世界各国で、公共スペースに自由に演奏可能なピアノを置く取り組みが行われています。通りすがりの人が弾いたピアノの音で、周囲の人が足を止め、音楽を通じた交流が生まれるという趣向です。東京駅のモデルとなったオランダのアムステルダム中央駅や、シチリアのパレルモ空港のストリートピアノが有名ですが、特に世界を巻き込んだプロジェクトとして有名なのは”Play me, I’m yours(私を弾いて)”です(http://www.streetpianos.com)。イギリスの芸術家、ルーク・ジェラム氏が立ち上げたアートプロジェクトで、装飾されたアーティスティックなストリートピアノが世界各都市を巡回し、世界中の人に弾いてもらおうというもの。世界各国の都市で、人種や国籍を超えた人々の交流を生み出してきたプロジェクトです。2018年3月、東京都国立市に”Play me, I’m yours”が来た際には、多くの観客で盛り上がったとのこと。このプロジェクトにインスピレーションを得て、「おもいでピアノ」の取り組みが進められました。

※参考:2018年6月22日・都知事会見(東京都HP

世界的な有名芸術家・草間彌生さんの装飾で、最強のストリートピアノに!

都庁に先立って、国内でもストリートピアノのプロジェクトはいくつかありました。例えば、昨年に設置開始された横浜市の関内駅地下街に設置されたストリートピアノが大人気なようです(https://kannai.jp/streetpiano/)が、このピアノにはあまり装飾が施されていません。東京都としては、オリンピックを控えていることもあり、他のストリートピアノと圧倒的に差別化できる装飾をしたかったはず。そこで白羽の矢が立ったのが、世界的に有名な前衛芸術家であり、名誉都民の草間彌生さんでした。

草間彌生さんは国内だけでなく、海外でも個展を開いて国際的に高い評価を得ており、文化勲章など数々の栄誉ある章を受章した超有名な芸術家です。水玉模様のオブジェや空間表現、絵画が代表作で、今回の「おもいでピアノ」の装飾にも水玉模様が採用されていますね。草間彌生さんの作品は安くても数百万円すると言われており、世界に一つしかないこの「おもいでピアノ」の美術的価値は計り知れません。これは数あるストリートピアノの中でも「最強レベル」です。

まとめ:芸術と行政のコラボで、観光スポット・都庁展望室の競争力は最強に。

東京都庁 南展望室 「おもいでピアノ」 (筆者撮影)

東京都庁 南展望室
「おもいでピアノ」
(筆者撮影)

もう一度、「おもいでピアノ」が設置された都庁南展望室の写真を見てみましょう。ピアノの黄色と黒の水玉模様は、草間彌生さんの代表作のひとつ、かぼちゃの模様に使用されているものを彷彿させます。よく見ると、水玉模様のすじが複雑に絡みあっており、独特の印象が生み出されています。展望室のカーペットは濃いグレーで、全体的に室内は地味な印象ですが、色鮮やかなピアノがあることで、一気にアート空間へと変貌しています。ピアノのそばには、少数ながらもカフェテーブルがあり、演奏を聴きながらコーヒーが飲める趣向になっています。ちょうど一曲弾いた方がいらっしゃいましたが、展望室の天井が意外に高いため音響が想像以上に良く、音質も申し分ありませんでした。また、一般的なストリートピアノとは異なり、近くに椅子が設置されているため、立ちっぱなしで演奏を聴かなければならないということもありません。

東京都庁の展望室は、もともと東京の眺望を手軽に楽しめることで人気でしたが、このプロジェクトで大きな付加価値が追加されました。

世界的に有名な芸術家が装飾した、途方もない美術的価値を持つピアノが見られるだけでなく、実際にそれを弾くことができる。
優雅にコーヒーも楽しめる。
しかも無料で入れる。

こんな観光スポットはなかなかないため、相当競争力が高まったはず。東京オリンピックだけでなく、その先を見据えた東京都の観光戦略に、並々ならぬ本気度を感じ、感心しました。そして「おもいでピアノ」を通じて、浮世絵などの伝統的日本画だけでなく、日本の現代美術の魅力がもっと世界に伝わってくれたら嬉しいなと思います。展望室に併設のショップでも草間彌生さんのアートグッズを販売したら、さらに盛り上がるんじゃないかと。

東京都庁は、利用状況によっては運用方法を見直すというアナウンスを出しています。世界に一つしかない、最高のストリートピアノを生かすも殺すも、利用者の私たち次第。マナーを守って利用したいものですね。事前に下記の東京都HPをチェックしてから行かれることをお勧めします↓

  1. 利用方法:http://www.zaimu.metro.tokyo.jp/tochousha/0404_press_omoide.pdf
  2. 展望室(南)開室カレンダー:http://www.yokoso.metro.tokyo.jp/tenbou/pdf/tenboukaishitsu.pdf