東京緊急事態宣言日記15:Oculus goで見た科博VRが圧巻!新型コロナとVRが世界を変えるかも、と思った話

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新型コロナウイルスの影響で美術館や博物館は軒並み長期休館に入る一方で、この機を捉えてオンラインでミュージアムを楽しむ試みが始まっています。Youtubeでの動画配信が多い印象ですが、特にこれはすごい!と思ったのは東京・上野の国立科学博物館(科博)が公開している「おうちで体験!かはくVR」(https://www.kahaku.go.jp/VR/)です。新型コロナの休館期間中に館内の3Dビュー画像を撮影し、このたび公開したとのこと。休館というピンチをチャンスに変える試みです。

上記のリンクから入ると日本館・地球館の3Dビュー(Googleストリートビューみたいな感じ)がみられます。PC・スマホ両方で快適に見ることができました。展示品の細部や、解説パネルの細かな文字までは見えませんが、臨場感は十分で博物館の全体像を把握するのに便利だな~と思っています。今回は新型コロナによる休館期間でも館内を疑似体験することが目的だと思いますが、別に新型コロナの問題がなくてもこういう館内体験ツールは価値があると思います。科博には何度も行っていますが、広すぎてすべての展示を見きれていなかったのです…。時間的な制約もありますし、ずっと歩き回っていると足が疲れてしまったり、いつも結構混雑していたりして、なかなか一気に見ることは難しい。また、遠方に住んでいたら頻繁に科博へ行くことは難しいでしょう。でもストリートビュー形式ならそんな心配はありません。体力的に厳しい人、足が不自由な人、子供を連れて館内を歩き回るのが大変な人、時間的・地理的に行くことが難しい人、人混みに出かけるのが億劫な人…さまざまな事情で博物館へ行くのが難しい人に鑑賞機会が与えられるのは素晴らしいことです。こうしたGoogleストリートビュー形式での館内公開はすでに世界中で行われており、Google Arts & Culture(https://artsandculture.google.com)では世界中の有名美術館のストリートビューが公開されています。でも今回公開された科博の3Dビューの方が操作感が良かったです。展示室を進むときに映像がぼやけたり、フリーズしたりすることが少なく、見やすくて快適だなあと思いました。

さて、3Dビューだけでなく今回は科博VRが公開されているので、そちらも見てみたいと思っていたのですが、科博VRのサイト(https://my.matterport.com/show/?m=48uKhqGvRAF)によれば対応しているVRゴーグルはGoogle CardboardとSamsung Gear VRのみとのこと。我が家のVRゴーグルはOculus goなので、見れないかな〜と思っていたのですが、諦めきれずに調べてみたところ、我が家の環境でも科博VRを体験できる裏ワザを発見しました。それはハコスコストア(https://store.hacosco.com)経由で見る方法です。

スマホで手軽にVR体験ができるのがウリのハコスコですが、5/6まで科博VRを無料公開しているようです。ハコスコストアのサイトを見ると、科博だけでなく、「おウチで国立天文台」や「おウチでJAXA」も5/6まで期間限定無料公開しているとのこと。ハコスコストアのVRプラットフォームは最近Oculus goに対応してくれているので、ここを経由すれば我が家のVRゴーグルでも体験できることがわかりました。手順としては以下のようになります。

  1. ハコスコストアでブラウザから会員登録(メールアドレスとハンドルネームの登録のみでOK)
  2. Oculus goに搭載されているOculusブラウザからハコスコストアの科博VRにアクセス

実際接続してみると、ちょっとロードに時間はかかりましたが、臨場感あふれる科博VR映像を体験することができました。一度これを経験してしまうと、ふつうのストリートビュー形式が物足りなくなってしまうくらい。天井、床、横方向360度すべての空間がリアルに再現されていました。見るときは回転椅子に座って、グルグルまわりながら周囲を360度体験するのがおすすめです。画質はどうかというと、我が家のVRゴーグルはお手頃価格のものなので、展示品の細かい部分や説明文までは見えません。もっと高価格帯のVRゴーグルを使用すれば画質が上がるのかもしれませんが…。ただし、Oculus goはケーブルのないタイプなのがいいですね。ケーブルが絡まるストレスを感じることなく、VR映像に没入できます。

Oculus go

Oculus go

また、VRならではの体験ができるのも科博VRの魅力です。リアルでは館内の床に立っている視線からしか展示品を見ることができませんが、VRでは通常ありえない視点からの映像が搭載されていました。たとえば地球館B1Fの恐竜展示スペースでは、トリケラトプスとティラノサウルスが向かいあっている展示があるのですが、VRではティラノサウルスの目線の高さの映像が見られたり、ティラノサウルスの胃袋部分に入った視点の映像まで見ることができました。他の恐竜についても、恐竜の目線の高さは人間よりも圧倒的に高いので、リアルの博物館では恐竜の顔の大きさや視線を体験することはなかなか難しいのです。下記の画像は、昨年科博へ行った際に、恐竜の頭部を展示室の床から見て撮影したもの。リアルの展示で頭部を観察するときは、下から見上げるかたちで見るしかありません。

しかしVRなら、あたかも自分が浮き上がったり、立ち入り禁止ゾーンに入って展示品に接近したかのような視点で、リアルではありえない角度から展示を眺められます。これはVRならではの価値です。

試しに子供(小学生)にも見せてみましたが、大興奮でしたね。正直、リアルの科博に連れて行った時よりも反応が良かった…。やっぱりいつもとは違う、ありえない角度から展示が見られるのは子供心をくすぐるのだと思います。混雑がなく、自由に好きなところを見て回れるのもよかったようです。子供もわたしもメガネをかけていますが、親子ともどもメガネ装着状態でOculus goは問題なく見れました。子供は乗り物酔い体質(自家用車、路線バス、新幹線がダメ)なので、VR酔いしないか心配でしたが大丈夫だそうです。

わたしがこれまでVRに持っていたイメージは、「リアルの代替となるツール」という認識でした。リアルの価値の方が圧倒的に高く、それを疑似的に再現するのがVRという、あくまでVRがサブという理解です。しかし今回科博VRを見てみて、ちょっと認識が変わりました。VRでなければ提供できない価値があり、さらに進化がすすめばVRがリアルの価値を超えるかもしれないと思ったのです。科博VRでは、貴重すぎて通常は触れない標本に接近したり、あたかも館内を浮遊しているようなVRならではの体験ができました。同様に、危険すぎて行けない場所、交通の便が悪くリアルでは簡単に行けない場所、ありえない視点からモノを見る…など、あらゆる分野でリアルでは難しいことをVRが実現してくれるようになるのでは…。また、新型コロナの影響でリアルの代替というニーズもどんどん拡大していくでしょう。感染リスクを下げるためにテレワークやオンライン飲み会が普及しつつありますが、このままこうした状況が長期化すれば、コロナ終息後も「そもそもFace to Faceで仕事や飲み会をすることにどれだけ意味があるのか」と思ってしまうのは自然な流れです。海外出張はいらない(VR会議でのFace to Faceで十分)?、VR飲み会の方がリアルより気楽でいい?など、コロナ後の世界とVRは切っても切れない関係になりそうです。

ではVRが進化すれば、リアルはどうなるのでしょうか?リアルにはVRでは提供できない価値が求められます。たとえば海外旅行。わざわざ飛行機で何時間もかけて海外へ行かなくても、「だってVRでいいじゃん」と言われてしまったら終わりです。現地に行くことの価値とは何か?が改めて問われそうです。美術館や博物館も同じですね。VRの解像度や操作感がさらに向上すれば、「わざわざ行かなくてもVRでいいじゃん」となってしまうかも…?新型コロナは世界を変える、とあらゆる分野で言われていますが、VRの需要や技術的進化もこの騒動で加速されていくのかもしれません。