九州国立博物館:太宰府天満宮からアクセスするトンネルを抜けると、そこは異次元ワールドだった

アート

国立博物館を各地に創設する動きがある。2020年4月には北海道に北日本初の国立博物館・国立アイヌ民族博物館が開館予定。東京国立近代美術館の工芸館は金沢へ移転し、北陸地方初の国立博物館として東京五輪の時期を目処に開館する予定と、ミュージアム好きにとっては嬉しい流れ。様々な地域を旅するのがますます楽しくなりそうでワクワクする。こうした運動の先駆けとなったのが、九州国立博物館だ(愛称は九博きゅーはく)。

ここは東京、奈良、京都に続く4番目の国立博物館として2005年に建設された、九州地方初の国立博物館。この博物館が建設された背景が面白い。太宰府天満宮が密接に関わっているのだ。太宰府天満宮は、学問の神様・菅原道真の墓所に建てられた神社で、1100年の歴史を持つ。太宰府天満宮は広大な鎮守の森を持ち、その敷地を一部を提供するかたちで九州国立博物館が作られた。100年越しの粘り強い誘致プロジェクトの末、ようやく開館したという。これほどの熱意でつくられた九州国立博物館に興味があり、福岡旅行の折に立ち寄ってみることにした。

1. 九州国立博物館へのアクセスは、異次元トンネル

西鉄の太宰府駅を降りると、太宰府天満宮の参道には多くの観光客が押し寄せていた。中国語や韓国語、英語も聞こえてくる。記念写真を撮るのが難しいほどの人出でにぎやか。出店で賑わう参道を抜け、鳥居をくぐって太鼓橋を渡ると、太宰府天満宮の本殿が見えてくる。参拝を済ませ、いったい九州国立博物館にはどうやって行くのかな〜?と疑問に思って周囲を見回してみると、ずいぶんと控えめな看板が出ていた。

九州国立博物館へ行くには、どうやら太宰府天満宮の太鼓橋を越えたところを右折すればいいらしい。それにしても、ほとんどの人が気づかないような小さな案内板だったので、ウロウロしながらやっとのことで見つけた。

九州国立博物館は、太宰府天満宮に隣接するかたちで作られている。しかし、観光客でにぎわう境内からはかなり距離が離れている。太宰府天満宮の太鼓橋を渡り、看板の指示通り右に曲がってみると、梅の木が立ち並ぶ遊歩道があった。本当にこの道で良いのか疑問に思いつつ、さらに進んでいくと立派なトンネルが迎えてくれた。

ここからがらっと雰囲気が変わる。七色に彩られたトンネルは、まるでわたしたちを太宰府天満宮から別世界にいざなう異次元トンネルのよう。エスカレーターを昇り、動く歩道で5分ほどかけて進んでゆく。どうやら目的地は山の上にあるようだ。まだ着かない…いったいこの先には、どんな世界が繋がっているのだろう?

動く歩道の終点にさしかかると、急に視界が開けた。そこには、巨大で不思議な形をした建造物が鎮座していた。九州国立博物館である。

その規模とデザインに圧倒され、思わず「何コレ?!すごっ」と声が出てしまった。山深い場所に、青みを帯びたガラスで全面を覆われた近未来的なフォルムが、なんとも不思議な雰囲気を醸し出している。SF小説に出てくる宇宙基地のようだ。太宰府天満宮の山奥にこんな異次元空間があるとは、誰が想像できただろうか?

2. 展示品のコスパの高さと本気度MAXのレストラン・カフェ

中に入ると、高さ最大36mにも及ぶ吹き抜けのホールが出迎えてくれる。おそらく、この空間は博多の伝統的な祭りである「博多祇園山笠」の展示向けに作られたのではないかと思う。博多祇園山笠では、美しく飾られた巨大な山車が市内を練り歩く。特に豪華に飾られた特大サイズの山車は「飾り山」と呼ばれ、高さは10m以上に達する。普通の博物館の天井高では、フルスペックの飾り山の展示は無理だ。そこで、この空間の高さが生きてくる。

まさにここでは、「飾り山」の展示が出来上がりつつあった。この高さ。九州の祭り魂を伝える!という博物館側の熱意が伝わってくる。

常設展示室である「文化交流展示室」に入ってみる。テーマは「海の道、アジアの路」。福岡は地理的に朝鮮半島と近接しているため、古くからユーラシア大陸との交流が盛んだった場所。「日本で最初に開国したのは福岡だ」という学説もあるそうだ。古くからの海外との交流を示す考古学的証拠が時代順に紹介されていた。特筆すべきは、世界遺産・沖ノ島から出土した国宝級文化財だ。わたしはこの福岡旅行で福岡県宗像市に点在する沖ノ島関連の世界遺産を回ってきたが(関連記事参照)、沖ノ島関連世界遺産へのアクセスはかなり難易度が高かった。交通機関の便数が少なく、文化遺産が広範囲に点在しているので、ひと通り見て帰ってくるのに丸一日はかかる。それを考えれば、九州国立博物館は福岡市内からアクセス至便で、太宰府天満宮もあわせて半日くらいで観光できるので、ここで沖ノ島の出土品が見られるのは非常にコストパフォーマンスが高いといえる。

また、設備面の充実も見逃せない。特に展示室で秀逸だったのはライティング。まだ新しい博物館であるからだろうか、展示品を照らす照明の角度や強さが工夫され、真っ暗な展示室に展示品が美しく浮き上がるような幻想的な風景となっている。(写真はスタッフの方に確認し、撮影OKな展示室で撮影したもの。)

国立博物館というより、有名ブランドのショーウインドーのような雰囲気を醸し出しているのだ。

東京の東京国立博物館で実施された大型特別展が九州国立博物館に巡回することもあるようで(現在は三国志展が開催中)、常設展だけでなく特別展も充実したものが見られる。さらにミュージアムカフェ・レストランはホテルニューオータニとコラボしている。

太宰府の山の中にこれほどクオリティーの高い博物館があるとは予想外だったので、いい意味で期待を裏切られた。この日は時間がなく、特別展までじっくりと見ることができなかったが、ぜひもう一度来てみたい博物館だと思った。

3. 太宰府天満宮から九博にもっと人を呼べるはず

それにしてももったいないのが、太宰府天満宮から観光客を十分誘導できていない点である。太宰府天満宮の参道は、観光客でごった返している。それに対して、九州国立博物館はガラガラに空いている状態であった。これだけ集客力のある太宰府天満宮のそばにあり、こんなにも質の高い展示を持っていながら来館者が少ないのは、とてももったいないと思う。

太宰府天満宮の参道から九州国立博物館へのアクセスがわかりにくいのかもしれない。なにしろ案内板が控えめすぎるのだ。公式ホームページに画像つきの親切な案内があるので、はじめから博物館の存在を知っている人なら事前に調べて行くことができる。しかし、小さな案内板にその場で気づいてぶらっと立ち寄る人はなかなかいないだろう。

太宰府天満宮とセットで訪れることができ、コストパフォーマンスの高い博物館である九博。もっと知名度が上がるといいなと思う。個人的にはこんな宣伝案を提案したい。まずは九州国立博物館の吹き抜けホール内に博多祇園山笠当日の風景を再現する。そして紅白歌合戦でNHKホールと生中継をつなぎつつ、ここで北島三郎さんに名曲「まつり」を歌って盛り上げてもらい、サブちゃんの力を借りて九博と山笠の魅力を全国ネットで伝えるのだ。…というのはあくまで個人の妄想だが、こうして勝手に宣伝プランを考えたくなるくらい、太宰府に来たら行って損はない博物館なのである。

九州国立博物館

公式サイト:https://www.kyuhaku.jp

所在地:〒818-0118 福岡県太宰府市石坂4丁目7−2

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