宗像大社・辺津宮は沖ノ島関連世界遺産の一大観光拠点!沖ノ島は奇跡のタイムカプセルだと悟った話。

世界遺産

世界遺産・「神宿る島」宗像むなかた・沖ノ島と関連遺産群。登録されている史跡は福岡県宗像市内に散在しており、一部は離島である宗像大島にあるためアクセス難易度が高めです。古来から沖ノ島を御神体として祀ってきた宗像大社には社殿が3つ(沖津宮おきつぐう中津宮なかつぐう辺津宮へつぐう)設けられており、すべてが世界遺産に登録されています。

このうち辺津宮はJR在来線の駅から比較的アクセスしやすく、フェリーに乗る必要もないので訪問ハードルは比較的低いです。特に、辺津宮の敷地内には沖ノ島で出土した8万点もの国宝を保存・常設展示している神宝館があり、世界遺産登録の根拠となった貴重な国宝を目の当たりにすることができます。実際に行ってきたのでアクセスや見どころ、参拝の注意点をまとめたいと思います。

1. 宗像大社・辺津宮アクセス、見どころの全体像と所要時間

1-1. アクセス

高層ビルや商業施設が立ち並ぶ福岡市内から、JR鹿児島本線で40分ほどで東郷駅に到着。そこから路線バスで宗像大社・辺津宮を目指します。(詳しいアクセス方法は過去記事に記載しています)

見渡す限り水田が広がるのどかな田園風景。そばには川が流れ、川岸の木々には鷺が羽を休め、時折水田に降りて餌をついばんでいます。本当にこのへんに世界遺産あるの…?と若干不安になる風景ですが、西鉄バスの宗像大社前で下車すると、ただならぬ雰囲気を放つ大社が鎮座していました。ここが宗像大社・辺津宮です(トップの画像)。

1-2. 見どころ全体像と所要時間

現地で見つけた境内・周辺施設の案内パネルはこんな感じ。


各施設を観光するための所要時間や周辺施設へのアクセスなど、案内が親切です。案内パネルの記載を文字に起こすと下記のようになります。(尚、④祈願殿の情報は、筆者が追記しました)

世界遺産ガイダンス施設 海の道むなかた館

→辺津宮入口から徒歩で150m、カフェ・ショップ・レンタサイクルあり。18m×7mの超大型スクリーンやVRで沖ノ島を体感可能。

  • 見学時間:30~60分程度
  • 開館時間:9:00~18:00
  • 入館料:無料
  • 休館日:月曜(祝日の場合は翌平日)

高宮祭場

→辺津宮入口から徒歩で550m。沖ノ島と共通する古代祭祀が行われた場所。現在も社殿のない祭場で神事が行われている。

宗像大社神宝館

→辺津宮入口から徒歩で300m。沖ノ島から発掘された約8万点の国宝が保管・展示。

  • 見学時間:60分程度
  • 開館時間:9:00~16:30(最終入館:16:00)
  • 入館料:800円
  • 休館日:なし

祈願殿

→辺津宮入口右手すぐ。祈祷受付、お守りや御朱印の入手はココで。お手洗いや座って休める休憩所あり。

※①~③は宗像大社 辺津宮内案内パネルより引用、一部改変。④及びWebサイトリンクは筆者が追加。

高宮祭場の所要時間は記載されていませんが、かなりの石段を登って歩いて行くため(後述)、往復30分程度はかかります。このほか宗像大社の辺津宮本殿へも参拝することを考えると、①~④すべてを回るのなら2時間程度は必要ということになります。

2. 宗像大社辺津宮の本殿と高宮祭場。境内を散策すると、天皇家との意外な繋がりが見えてくる

宗像大社の由緒。それは日本古来の歴史書である古事記・日本書紀までさかのぼります。日本列島を創った天照大神が吹き出した息から三人の女神が誕生し、玄界灘に降臨したとの言い伝えに基づき、宗像大社は三女神のそれぞれを祀る3つの社から構成されています。

  1. 辺津宮へつぐう(祭神:市杵島姫神いちきしまひめのかみ)…宗像市(本土)
  2. 中津宮なかつぐう(祭神:湍津姫神たぎつひめのかみ)…宗像大島(離島)
  3. 沖津宮おきつぐう(祭神:田心姫神たごりひめのかみ)…沖ノ島(離島)

※沖津宮は一般人の立ち入り禁止のため、遠くから沖ノ島に祈りを捧げるための沖津宮遥拝所が宗像大島に設けられています。
※宗像大島にある中津宮・沖津宮遥拝所の訪問記は下記にまとめています↓

中津宮社殿入口。七夕祭りの装飾が美しい(8月上旬のみ)。

宗像大社中津宮は七夕伝説発祥の地。離島から陸と航路を見守る海の守り神。

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世界遺産・宗像大社沖津宮遥拝所

世界遺産・沖ノ島を臨む沖津宮遥拝所が、日本人の宗教観を伝えるタイムマシンだった話

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辺津宮の本殿は国の重要文化財に指定されており、1578年の創建です。宗像大社の御祭神は別名道主貴みちぬしのむちと呼ばれ、あらゆる道の守護神として航海や交通の安全だけでなく、武道や茶道などにもご利益があると言われています。

宗像大社の本殿右手には、高宮祭場へ続く参道が続いています。森林の中を10分ほど歩いていきますが、高宮祭場がかなり高台にあるため、かなりの数の石段を登ります。特に夏場は水分補給をしっかりして、スニーカーなどの歩きやすい靴で行きましょう。

高宮祭場に着くと、そこには苔むした石組みと神木が立ち並ぶ静謐な空間が広がっていました。宗像大社の祭神である三女神が降臨した場所と伝えられ、周囲には柵があり、当然ですが中に入ることはできません。しばらくこの地に佇んでいると、ただならぬ雰囲気と畏怖を感じます。


辺津宮の社殿が創建される前までは、この周辺が神事の中心地であったことがわかっており、4世紀~9世紀にかけての祭祀遺跡が発掘調査で見つかっています。これらの祭祀は古代からこの地を支配していた豪族・宗像氏(古来は胸形氏と表記)が主導していたと考えられていますが、実はここに中央政権のヤマト王権が関わっていたとの知見があるそうです。

宗像大社の休憩所で放映されていた映像では、「日本で最初に開国したのは、宗像である」という説明がありました。この地が朝鮮半島と地理的に近いことを生かし、古代より宗像氏は海外と交易を行っていました。やがてヤマト王権の対外交渉戦略の中でその航海術と交渉力が注目され、国家の政に関する祭祀が行われるようになりました。さらに宗像大社の神主である宗像氏一族の娘は、奈良の大仏を建立した天武天皇の妃となるなど、天皇家と密接な関わりを結んでいきます。

今でも宗像大社辺津宮には、皇族の滞在場所である儀式殿が整備されています。わざわざ皇族のための施設を用意しておくということは、皇族が定期的に来訪するほど由緒ある神社だということ。事実、現在の上皇陛下は1983年と2017年に宗像大社を参拝されています。皇族との深いつながりが窺えます。

3. 神宝館は必見!「海の正倉院」沖ノ島から出土した国宝が大集合。世界遺産たる理由はココに!

2017年に沖ノ島が世界遺産登録されたとき、ニュースで「沖ノ島から国宝8万点が出土」と報道されていましたが、それらの品々は宗像大社辺津宮境内にある神宝館で保存・常設展示されています。館内は撮影禁止のため画像はありませんが、代表的な展示品は宗像大社公式サイト(http://www.munakata-taisha.or.jp/html/shinpoukan.html)で見ることができます。

展示入口を入ると、有名な国宝・金製指輪(5世紀頃のもの)が出迎えてくれます。1600年前のものとは思えないほど細工が細かく美しい。

そのほかにも鏡、勾玉、土器、人形など様々な展示品があり、ほとんどの展示品が国宝なので驚きます。解説を見ていて私が理解したことは、「要するに沖ノ島は、貴重すぎる奇跡のタイムカプセルだったのね」ということでした。

沖ノ島は、ここ宗像の地から朝鮮半島へ向かう直線航路上に位置し、大陸への命がけの航海において正しい方向を教えてくれる「神の島」として崇められてきました。沖ノ島信仰が始まった3世紀後半から9世紀頃にかけて祭祀が行われており、特に4世紀以降は国家政権の名の下、政の意思決定に関わる祭祀が執り行われたと考えられています。この頃にどのような神事が行われていたかを把握するには、完全な遺跡が発掘される必要性がありますが、損傷のない状態でこれほど古い時代の祭祀跡が見つかることはなかなかありません。

沖ノ島に対する敬虔な信仰と戒律により、人の立ち入りや物の持ち出しが厳しく制限されたおかげで、祭祀の道具や方法などが当時のまま残っていることが大変貴重です。沖ノ島で祭神を祀る宗像大社沖津宮の周囲には巨岩が立ち並んでおり、その岩上、岩陰に祭祀道具が使用時のまま残されていました。1700年前の儀式の様子がほぼ完全なまま保存されているってすごいことですよね。まさに古代を現代に伝えるタイムカプセル。

祭祀に使用されたと思われる道具は有名な黄金の指輪のほか、人型、鏡、勾玉などがありますが、ミニチュアの機織り機(金銅製高機)なども見つかっており、当時どのような生活必需品が使用されていたのかを知る貴重な資料とも言えるのだそうです。

古代から朝鮮半島と交流することで大陸文化が日本に伝来する礎を作り、皇室との深い繋がりを持ち、日本史に絶大な影響を及ぼしてきた宗像・沖ノ島という土地。この由緒こそが世界遺産登録された理由だったんだと理解できました。沖ノ島が別名「海の正倉院」と呼ばれるのも納得です。この国宝が他の美術館や博物館で展示される機会はほとんどないでしょうし、あったとしても美術館が大混雑するレベルの展覧会になると思われます。神宝館は、宗像大社辺津宮に来たらぜひとも訪れておきたいポイントです。


宗像大社・辺津宮は沖ノ島関連世界遺産の中では比較的アクセスがよく、施設が整っており最も訪れやすい場所です。世界遺産や歴史に興味があるなら、福岡観光のついでに足を伸ばしてみると、今まで知らなかった、意外な歴史ロマンに立ち会えますよ。

宗像大社 辺津宮
住所:〒811-3505 福岡県宗像市田島2331
公式サイト:http://www.munakata-taisha.or.jp/index.html

※本記事の執筆にあたり、季刊考古学・別冊27「世界のなかの沖ノ島」(春成秀爾・編)を参考にしました。