金沢の柳宗理記念デザイン研究所が、柳宗理ファンの聖地だった話

ガイドブックに載らない隠れ観光スポットをgoogle mapで発見

初めての金沢旅行を計画していたときのこと。金沢の地理を頭に入れておくため、google mapを確認していると、地図上に見つけたのは「柳宗理記念デザイン研究所」。
(公式サイト:http://www.kanazawa-bidai.ac.jp/yanagi/

この施設、金沢のガイドブックには全く載っていなかったのですが、ホームページを見て柳宗理デザインの大ファンとしては外せない!と急遽予定に組み込んだのでした。

柳宗理氏といえば日本を代表する工業デザイナー。なぜこの施設が金沢につくられているかというと、柳宗理氏が金沢美術工芸大学で50年間にわたって教授を務めていたからです。「研究所」という名称ではありますが、インテリアショールームのような空間で柳宗理ブランドの製品を見て、触って楽しむことができるようです。しかも入場無料。これは行くしかない!ということで…

実際に行ってみた

柳宗理記念デザイン研究所 (金沢市)外観。

柳宗理記念デザイン研究所
(金沢市)外観。

まず外観はこちら。金沢市の台所、近江町市場から10分ほど歩くと、メインストリートである百万石通り沿いに柳宗理デザイン研究所が見えてきます。金沢駅からはバスで3停留所分、人気観光スポットひがし茶屋街のすぐ手前、近江町市場からは徒歩10分程度なので、観光途中でふらっと気軽に立ち寄ることもできます。一見すると、インテリアショップと間違えそうな雰囲気。

柳宗理デザイン研究所 入口。

柳宗理デザイン研究所
入口。

入口では柳宗理氏の写真と、最も有名な作品と言っても過言ではない「バタフライ・スツール」が出迎えてくれます。これはニューヨーク近代美術館(MoMA)の永久コレクションとして収蔵され、国際的に高い評価を得たものです。

A3版のガイドが配布されており、展示されている製品の名称が記載されていますが、説明文などは一切ありません。先入観なく展示品を見て、作品の美しさや柳宗理氏のデザインに対する思いを感じ取ってもらいたいとのコンセプトから、このような展示方法となっています。

柳宗理デザイン研究所内部。

柳宗理デザイン研究所内部。

入口の自動ドア、椅子、机、台所のシンクトップ、食器、鏡…などなど、あらゆるものが柳宗理デザインです。

柳宗理記念デザイン研究所内部。

柳宗理記念デザイン研究所内部。

こちらの施設のスゴいところは、展示品に実際に触れてもOKなこと。バタフライ・スツールに一度座ってみたいなあと思っていたので、ここで念願叶って初めて座れたのでした。

柳宗理氏を代表する作品、 バタフライ・スツール。

柳宗理氏を代表する作品、
バタフライ・スツール。

バタフライ・スツールは2枚の合板を特殊な技術で曲げ、背中合わせに合わせることで座面が作られています。木が2枚合わさった部分に座ることとなり、座面が割れたような形になっているため座り心地は快適なのか疑問だったのですが、実際に座ってみると割れ目を感じず、快適に座れます。斬新なデザインだけでなく、座った時の快適さもしっかりと考えられているんだなあと感激しました。この作品が発表されたのは1956年。60年以上が経過したいまでも、まったく色褪せないデザインです。

柳宗理デザイン研究所、 キッチン用品の展示。

柳宗理デザイン研究所、
キッチン用品の展示。

人気のキッチン用品。シンクトップまでデザインされていたというのだから驚きです。レードル、ターナーなどは、壁に掛けられているだけでまさに美術品のよう。

意外だったのはこれ。右上に鳥籠が写っていますが、これも柳宗理デザインだそうです。鳥籠までつくっていたのかー!と驚きました。

柳宗理記念デザイン研究所。 右上に見える鳥籠も、 柳宗理デザイン。

柳宗理記念デザイン研究所。
右上に見える鳥籠も、
柳宗理デザイン。

柳宗理氏がデザインしたかったものとは

作品ひとつひとつを見ていると、それぞれが完成形と思える完璧なデザインです。製作された時期はさまざまで、製作後かなり時間が経っているものもありますが、いま見てもこれは美しいな、欲しいなと思えるデザインのものばかりです。時代の変化に晒されても淘汰されずに残る、まさに定番となるデザインを創った方なのだろうと思います。

しかしこの施設の本当の魅力は、さまざまな作品を一箇所に集め、作品の集合体をひとつの空間デザインとして捉えることができる点だと思います。そしてこの展示を見て、デザイナーの方がどんな考え方で作品をつくっているのかが少し垣間見えた気がしています。

柳宗理記念デザイン研究所。 柳宗理氏は、個々の作品だけでなく、そのモノがある空間やモノを使う人の生活まですべてをデザインしていた。

柳宗理記念デザイン研究所。
柳宗理氏は、個々の作品だけでなく、そのモノがある空間やモノを使う人の生活まですべてをデザインしていた。

個々の作品のみをデザインするだけではなく、そのモノが置かれた空間の空気感、モノが実際に使われる暮らしそのものをデザインしていたんだなと気づかされたのです。たとえば上の写真。南部鉄器の鋳物で作られた鍋を中心に据えた食卓。そこには徳利と日本酒用のグラスがあり、ちびちびと日本酒を味わいつつ家族ふたりで鍋物をつついている様子が目に浮かびます。食器類は、料理の彩りを邪魔しないシンプルなデザインです。その奥には、美味しい料理を作るキッチン。キッチンツール類は、壁にむき出して掛けても絵になるようなスタイリッシュなデザインで、不思議と生活感が出ずこの空間の雰囲気を邪魔しません。個々の作品の美しさを追求するだけでなく、日常生活をより豊かにするデザインを追求していたんだなあと感じたのです。

私はこの資料室の空間にとても心地よさを感じ、改めて柳宗理の大ファンになり、SORI YANAGIブランドの製品が欲しくなってしまったのでした。

デザインに興味がある方、柳宗理ファンの方は、金沢に行く機会があればぜひ立ち寄ってみてください。絶対に損はしませんよ。

バタフライ・スツールが欲しくなってしまった…。ちなみに、天童木工でつくられているものが正規品です。類似品に注意。色はメープルとローズウッドの2色。

最も秀逸だと思うキッチン用品は、パンチングストレーナー(調理用のザル)。機能性とデザインが見事に両立しており、一生モノとして愛用中。