「河鍋暁斎 その手に描けぬものなし」:エリートコースを歩んだマルチな才能と、幕末を生き抜いた画家の気概に釘付け。

河鍋暁斎展(サントリー美術館)
河鍋暁斎展(サントリー美術館)
アート

東京・六本木のサントリー美術館にて昨日から開催の「河鍋暁斎ーその手に描けぬものなしー」へ行ってきました。

英才教育を受けた超エリート画家

河鍋暁斎は7歳で浮世絵師・歌川国芳に弟子入りし、10歳で狩野派の絵師に師事し、20歳を迎える前には修行終了のお墨付きをもらっていたそうです。現代で考えれば、ランドセルを背負ったばかりの小学1年生がトップレベルの美術家に弟子入りを許されるということ。その頃から並々ならぬ才能を持った相当なエリートだったということですよね。

本展には河鍋暁斎関連年表が掲示されており、そこには幼少期から伝説的なエピソードが満載です。初めて写生をしたのが2歳頃。10歳の頃、神田川の増水で流れ着いた生首を写生…などなど。その才能がよくわかるのが、本展「第2章 狩野派絵師として」に展示されている、「毘沙門天像」。18歳の時に描いた作品だそうですが、この年齢でここまで描けるなんて…末恐ろしい…と思う作品です。

古典の研究を続ける真摯さ。ゆえに何を描いても一流。

河鍋暁斎は過去の名作の模写を行い、終生古典から学び続けたのだそうです。鳥獣戯画の模写など様々な作品が展示されています。
本展の撮影コーナーには河鍋暁斎が好んで描いた蛙たちが。鳥獣戯画のように擬人化され、コミカルでかわいらしいですね。

河鍋暁斎展(サントリー美術館)撮影コーナー

河鍋暁斎展(サントリー美術館)
撮影コーナー

美人画や宗教画だけでなく、生き生きとした庶民を描くのもお手のもの。たとえば「放屁合戦絵巻」。芋を食べ、放屁でバトルを繰り広げる人々が描かれていますが、人物をコミカルに描いた姿がどことなく葛飾北斎の「北斎漫画」に似ています。こんなところからも古典に学んだ真摯さが伝わってきます。

白装束の女性の幽霊を描いた「幽霊図」は展示室の暗さも相まって鬼気迫る雰囲気で、私は背筋が凍るような怖さを感じ、長時間注視できないほどでした。

精密な花鳥画や、宗教画、妖怪、幽霊、美人画など様々な作品がありますが、どれも質が高く、古典の研究をベースとしたマルチな才能に溢れていたことがわかります。

検閲を免れるため、風刺画にひと工夫。時代の激変が伝わる風刺画。

河鍋暁斎が描いた風刺画が、明治政府を冒涜しているということで、投獄されたこともあるそうです。それ以降風刺画を描くにあたっては、検閲に引っかからないよう多くの工夫をしていたようです。
本展では幕末の戦乱(長州征伐、薩英戦争、下関戦争あたりが題材と思われます)を描いた風刺画が展示されていますが、どれも題材を直接的に描いていないんです。

  • 兵隊を蛙の擬人化で描いた「風流蛙大合戦之図」。
  • 「蒙古賊船退治之図」では、鎌倉時代の元寇をモチーフにすることで時事問題をカモフラージュ。

明治になって急速に近代的な学校教育が行われたことを皮肉る風刺画「暁斎楽画 化々学校」では、鬼や妖怪の生徒と先生が、地獄のイロハやローマ字を学んでいてコミカルです。鬼や妖怪を使って表現することで検閲を免れる狙いがあったのでしょう。明治になって掌を返したように西洋かぶれしていた当時の世相を物語っています。

河鍋暁斎が画家として独立したのは1857年頃(当時26歳)。黒船来航後、欧米列強から開国のプレッシャーをかけられている時期でした。そして38歳の頃に明治維新を迎えており、時代の変革に伴う大幅な価値観の変化を体感していたのでしょう。ここまでしてでも風刺画を描かずにはいられない、江戸から明治への時代の激変と世相が、河鍋暁斎の作品から伝わってきます。


静謐な人物画や宗教画、花鳥画、風景画、妖怪、鬼、幽霊、コミカルなイラスト、風刺画…河村暁斎の守備範囲は広かったんだなあと改めて思い知らされました。天才肌な画業の数々を体感できる展覧会です。まさに「描けぬものなし」。

河鍋暁斎ーその手に描けぬものなしー

公式サイト:https://www.suntory.co.jp/sma/
会期:2019年2月6日(水)〜3月31日(日)
場所:〒107-8643 東京都港区赤坂9-7-4 東京ミッドタウン ガレリア3階

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