東京都庭園美術館:年1回限定の建物内部公開は要チェック!アール・デコ様式の美と庭園でリフレッシュ。

東京都庭園美術館は、アール・デコの傑作
東京都庭園美術館は、アール・デコの傑作
アート

東京都心、目黒駅から徒歩5分の場所に緑あふれる非日常空間が広がっています。東京都庭園美術館です。

東京都庭園美術館(旧朝香宮邸)外観。

東京都庭園美術館(旧朝香宮邸)外観。

ここは1933年に建てられた皇族邸で、上皇陛下の大叔父にあたる朝香宮ご一家の邸宅でした。ここの何がすごいのかというと、当時ヨーロッパで流行していた最先端の美術・装飾様式「アール・デコ」を昭和初期の日本で忠実に再現する、という壮大なチャレンジを行っていること。1925年にパリでアール・デコ博覧会を訪れた朝香宮夫妻は、その美しさに感嘆し、アール・デコ様式をとり入れた自邸を建設します。ヨーロッパの流行の最先端を日本の建物に実現するわけですから、当然国内に前例は全くありません。しかし、世界進出をにらみ欧米に追いつけ追い越せの時代、欧米の王侯貴族に見劣りしない建築物を作り、海外に日本の威信を示すことが重要だったのです。

こうして建設された朝香宮邸は、アール・デコ様式の建築物として世界的にも高い評価を得ており、現在は東京都庭園美術館として公開されています。建物・内装すべてが美術品ですが、肝心の建物内部は保存のため年1回のみの公開となっており、今年は2019年7月20日~9月23日の間建物内に入ることができます。そして建物内部は撮影OK!

普段はなかなか見ることができないので、見逃さないために見どころをまとめておきます。

1. 幾何学模様と繰り返しの美

建物の1階がゲストスペース、2階と3階は朝香宮ご一家の居住スペースとなっています。まず入口で目に入るのは、白磁で作られた香水塔とモザイク床が美しい次室。円形にデザインされた天井には間接照明が灯り、窓ガラスから庭園が見え、明るく開放感のある空間です。

東京都庭園美術館、次室の香水塔

東京都庭園美術館、次室の香水塔

香水塔の上部には円形のモチーフが繰り返されていますが、こうした幾何学模様の繰り返しがアール・デコ様式の特徴なのだとか。今見てもまったく古びた感じがしない、シンプルでスタイリッシュなデザイン。

東京都庭園美術館 大客室

東京都庭園美術館 大客室

こちらは隣にある大客室。天井のシャンデリア、ガラス扉、壁画などはすべてフランスの一流芸術家の作品。

東京都庭園美術館 大食堂

東京都庭園美術館 大食堂

大食堂も壮観。照明や窓下のラジエーターカバーには、果物や魚など、食事にちなんだモチーフが。壁面の植物模様のレリーフは、フランスから運ばれた際にヒビが入っていたものを国内で試行錯誤して作り直したのだそう。施工の苦労が伺えます。

2. 朝香宮夫妻の居住スペース、スタイリッシュなベランダ

2階は朝香宮ご一家の居住スペースになりますが、ここの見どころは開放感あふれるベランダ。床面は市松模様の大理石で覆われ、窓からは広大な庭園を臨むことができます。

東京都庭園美術館 庭園を一望できるベランダ。

東京都庭園美術館
庭園を一望できるベランダ。

ここの椅子に座ってくつろぐと、ちょっとだけ皇族気分を味わえます。

3. この時期だけ公開!皇族のリフレッシュスペース・ウインターガーデン

最上階のウインターガーデンは、温室として設計された場所。2方向に大きな窓が設けられ、壁面・床面が市松模様で覆われており明るく開放的な空間になっています。

東京都庭園美術館 ウインターガーデン

東京都庭園美術館
ウインターガーデン

ここでは温室としての特性を考慮し床の水はけを良くするため、市松模様の床面は人造大理石、壁面は天然大理石と異なる素材で作られています。しかし、一見すると壁面と床面の違いはまったく分かりません。施工に携わった技術者の高い技術が窺えます。

4. ラジエーターカバーのデザインは部屋によって違う

主に窓の下、暖炉の内部に注目すると、そこには暖房器具の目隠しとなっているラジエーターカバーがあります。これが部屋によってデザインが違うので探していくのが面白いのです。妃殿下の部屋には花、食堂には魚介といった具合に部屋の用途によって適切なモチーフが選ばれており、中には和風の波(青海波)のデザインも。

東京都庭園美術館のラジエーターカバー

東京都庭園美術館のラジエーターカバー

細かい調度品までこだわり抜いていることがよく分かります。

5. 天井にも注目!照明にも徹底的なこだわり

目に入るところすべてが美術品といっていい空間ですが、ぜひ天井にも注目してみてください。照明も部屋ごとに異なっていて、デザインが秀逸なんです。思わず「コレ欲しい!」と思ってしまうものが見つかるはず。

東京都庭園美術館は、照明もイイ!

東京都庭園美術館は、照明もイイ!

6. 新館の展示で、朝香宮邸建築までの歴史がよく分かる

あわせてぜひ、新館の展示スペースもチェックしてみてください。朝香宮邸建設の歴史に加えて、内装の設計を担当したフランス人芸術家、アンリ・ラパンの作品や、かつての朝香宮邸の写真も展示されています。(撮影OK)

建設当初の写真はこちら。現在でも当時のままに保存されていることがよく分かります。

7. 庭園散策で森林浴も

建物と展示だけでも十分すぎるくらい満足度の高い施設ですが、庭園でゆったりとくつろぐのも楽しみのひとつ。広大な芝生を擁する洋風庭園と、錦鯉が泳ぐ池と茶室がある和風庭園が広がり、都心とは思えないほど静かで緑あふれる空間です。椅子や日陰もあるので、ここに座ってしばしボーっとできます。日常の喧騒から離れてリラックス。

東京都庭園美術館の庭園。広〜い!

東京都庭園美術館の庭園。広〜い!

夏場ということで、入口で虫除けも貸していただけました。ホスピタリティがありがたかったです。


1933年(昭和8年)によくこんなすごいものを作ったな…と感嘆してしまう東京都庭園美術館(旧朝香宮邸)。建物公開は年1回だけなので、このチャンスをお見逃しなく!

建築をみる 2019:1933年の室内装飾ー朝香宮邸をめぐる建築素材と人びと

会期:2019年7月20日〜9月23日

会場:東京都庭園美術館(東京・JR山手線目黒駅から徒歩5分)

公式サイト:https://www.teien-art-museum.ne.jp

ちなみに、国内に前例のないアール・デコ様式で朝香宮邸を建設したのは、宮内庁内匠寮です。昭和初期、ノウハウが乏しく通信手段も十分でない中、フランスの芸術家とやりとりし、これだけの建物・内装を実現するのだからすごい。超一流の技術者集団だったのでしょう。そんな彼らは明治時代、迎賓館赤坂離宮を建設したことでも知られています。こちらは通年で一般公開していますので、宮内庁内匠寮の卓越した技術をいつでも見られます。
訪問記はこちら↓。宮内庁内匠寮、いい仕事してます!

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2019.03.12