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福岡市の中心部、博多駅や天神からバスで20〜30分の場所にある福岡市博物館は、福岡県の志賀島で出土した国宝・「金印」(漢委奴国王印)を所蔵していることで有名です。わたしも金印を見る目的で訪れたのですが、金印がある常設展示室に入る前、ふらっと入った展示室に親子でハマり、気づくと夢中で1時間半ほど遊んでいました。それが福岡市博物館の体験学習室、「みたいけんラボ」です。(公式サイト:http://museum.city.fukuoka.jp/exhibition/labo.html)
「みたいけん」は福岡弁で「見たいから」という好奇心を表す意味。これに未体験という言葉を掛けたネーミングですね。ここの何がすごいかというと、博物館内にあるにもかかわらず展示品は触ったり鳴らしたりと遊んでOK、写真撮影もOK、それなのに入館料不要=無料というところ。これなら子供を公園に連れて行く感覚で博物館に連れて行けます。もし近所に住んでいれば足しげく通うだろうな〜、と思える施設だったので見どころをレビューしたいと思います。
1. テーマは「アジアの遊戯」。日本にはないゲームに大人もハマる
「みたいけんラボ」のひとつのテーマは、「アジアの遊戯」。アジア諸国で楽しまれているボードゲームが展示されており、触って遊んでOKです。遊ぶための机や椅子も完備。壁面に大きな世界地図が貼られ、各地域で楽しまれているボードゲームが地図上に配置されています。チェスと同様の遊びが、形やルールを変えて他の地域でも楽しまれていることが視覚的に分かりますね。
その他にも、見たことのないゲームがてんこ盛り。朝鮮半島の将棋であるチャンギ(左)、双六の変化形に相当するベトナムのコーカーグア(右)。
こちらは、モンゴル仕様のチェス。
双六もバリエーション豊かなものが揃っています。中国から伝来し、平安時代に日本で遊ばれていた元祖の双六、博物館オリジナル双六のほか、仏になるための仏道修行双六も(ゴールは仏)。
自由に遊べるとはいっても、ルールが分からないゲームも多数。でも心配は無用です。それぞれのゲームにルールブックが付いているので、それを見ながら実際にやってみて、ルールを理解していきます。なかには戦略性のあるゲームもあり、子供だけでなく大人もゲームに夢中になってしまい、ついつい決着がつくまで長居してしまいます。遊びを通じて、無理なく楽しく異文化に触れられる仕組みに感心しました。
2. アジアの郷土楽器や民族衣装コスプレも。アジア文化が楽しく分かる
ゲームだけではありません。楽器や民族衣装など、アジアの風俗を体験できるものに存分に触れられます。
楽器は触るだけでなく、鳴らしてもOK。大型の楽器はもちろんのこと、たくさんの引き出しの中には小型の楽器も収められ、自由に出して試してみることができます。
「アジアのかぶりもの」コーナーでは、アジア諸国の帽子をかぶることができますが、地域・素材・用途で様々なバリエーションがあり面白い。(大人用と子供用あり)
民族衣装の試着コーナーも。大人用と子供用、両方が揃っており、試着室も完備。様々な国の民族衣装のコスプレができ、楽しく異文化体験ができます。
3. 福岡の郷土博物館がアジア文化を推す理由
これだけ充実した展示に、時間の経つのも忘れて親子で遊び倒してしまったのですが、ふと疑問に思うのは、「なぜ福岡市の郷土博物館で、アジアを推すのか?」ということ。通常、郷土博物館では地元の歴史や風俗を展示するのが普通です。それなのにここでは、アジア文化をひたすら体験させる展示となっており少々違和感を感じていました。「みたいけんラボ」で遊んだあと、常設展示を見てみてその理由が理解できました。
>>国宝・金印(漢委奴国王印)をはじめとした福岡市博物館の常設展示レポートはこちら↓
福岡は古くから、アジアと密接に関わる地域でした。九州北部は、日本列島の中で朝鮮半島と地理的に最も近接した場所。それゆえに、おそらく日本という国が成立する以前から大陸と交流があり、常にその影響を受けてきました。必ずしもプラスの影響だけではありません。鎌倉時代の「元寇」に代表されるように、常に大陸からの脅威にさらされ、福岡は外交と防衛の要所になってきました。こうした土地柄が、外交的危機感の強さと国外情勢に対する鋭い感度を育ててきたのです。古来より、福岡はグローバリゼーションの波にさらされてきたと言えるでしょう。江戸時代に黒船が来ただけでビックリ仰天している関東地方と比べたら、まったく違うレベルのグローバルマインドが育つ土壌となりえます。
わたしは多くの美術館や博物館に子連れで通っていますが、郷土博物館の子供向け展示で外国文化を推す施設を初めて見ました。「みたいけんラボ」は古くから海外に目を向けてきた、福岡ならではのグローバルマインドを表す施設なのです。国内だけでなく、海外との関わりの中でも発展してきた福岡という場所を知り、子供たちにグローバルな視野を持って欲しい。そんな福岡市博物館のビジョンが伝わってきます。東京にもこんな場所があればいいのになあ。
住所:〒814-0001 福岡市早良区百道浜3丁目1-1 福岡市博物館内
国宝・金印(漢委奴国王印)をはじめとした福岡市博物館の常設展示レポートはこちら↓