「国宝 東寺ー空海と仏像曼荼羅ー」感想:必見!立体曼荼羅をはじめとした国宝が集結する奇跡の展覧会。混雑状況、見どころ、グッズ情報まとめ。

アート

昨日より、東京・上野の東京国立博物館で開催されている「国宝 東寺ー空海と仏像曼荼羅ー」へ行ってきました。東寺の国宝・重要文化財が惜しげもなく多数公開されており、これは滅多に見られない貴重な展覧会です。
とりあえず立体曼荼羅が見どころかな〜と思って気楽に訪問したところ、それだけでなく他の仏像、仏具、絵図に到るまで国宝だらけ。夢中で見ていたら、気がつくと入場から3時間も経過していました。相当なボリューム感の展覧会だったので、下記に見どころをまとめておきます。

1. 東寺の歴史と空海・密教

東寺の歴史

東寺は平安京の遷都後まもなく、都を守護する目的で西寺とともに朝廷によって建立された国営寺院。平安京内に建設を許された寺院は東寺と西寺のみで、西寺は消失したため、平安遷都当時から残っている寺院としては最古のものになります。やがて遣唐使として唐に渡っていた真言宗の開祖、空海に下賜され、空海が唐で学んできた密教の教えを体現する寺院として発展してきました。長い歴史が物語るように、9世紀に作られた仏像・仏具や、中国からもたらされた唐代の仏像など貴重な品々を所蔵しており、それらの多くは国宝や需要文化財に指定されています。1994年にはユネスコの世界遺産にも指定されました。

空海と密教

空海は香川県に生まれ、仏門に入った後31歳のときに遣唐使として唐へ渡り、唐の高僧・恵果から密教を学びました。2年弱という短い滞在期間で密教をマスターし、帰国した超エリート高僧です。

そもそも密教とは、仏教の発祥の地であるインドでヒンドゥー教の信仰が強く、仏教が衰退していたことがきっかけで生まれたもの。仏教の勢力を回復するために、ヒンドゥー教の神々を取り入れたのです。例えば本展で唯一撮影可能な「帝釈天騎象像」の帝釈天は、古来インドの武神がルーツ。だから象に乗っているんだなあと納得。

帝釈天騎象像(国宝・東寺講堂) ※筆者撮影

帝釈天騎象像(国宝・東寺講堂)
※筆者撮影

仏像界のイケメンと呼ばれますが、確かに容姿端麗でした。穏やかな表情の一方で、しっかり甲冑を身につけていて、武神としての強さもしっかり示しています。このようにインドの神々を一緒に祀ることで、ヒンドゥー教徒を取り込む狙いがあったのかもしれません。

空海は遣唐使で持ち帰った経典・仏具などをまとめた報告書「御請来目録」(国宝、本展でも展示あり)で、密教は奥深く文章で伝えることが難しいため、図画を使って伝えることを提唱しました。やがて空海が天皇から東寺を任されると、空海プロデュースの密教ワールドが次々と作られていったのです。

2. 世界遺産、東寺の宝が集結!

本展の見どころ

本展は東寺が誇る貴重な仏像・絵図・仏具などが大集結しているため、全てが見どころを言って良いくらいの展覧会なのですが、特に下記4つは外せない鑑賞ポイントです。

  1.  立体曼荼羅(国宝、重要文化財)
  2.  五大虚空菩薩像(重要文化財)
  3.  兜跋毘沙門天立像(国宝)
  4.  後七日御修法完全再現、両界曼荼羅(国宝・両界曼荼羅等関連仏具の展示)

①立体曼荼羅(東寺講堂、国宝・重要文化財)

立体曼荼羅(国宝・重要文化財、東寺講堂) 購入した絵葉書

立体曼荼羅(国宝・重要文化財、東寺講堂)
購入した絵葉書

密教の世界観を人々にわかりやすく伝えるために、空海が構想を作ったもの。曼荼羅というと平面図として描かれたものを思い浮かべますが、ここでは三次元の仏像を空間に配置することで、密教の教えを視覚的にわかりやすく示しています。立体曼荼羅の解釈については諸説あるようですが、密教の最高神である大日如来が世の中の求めに応じ、独自の役割をもつ様々な姿に変化する様子を表すという解釈が一般的なようです。
本展では講堂の立体曼荼羅のうち、国宝11点、重要文化財4点が現在東京国立博物館で展示されています。
オリジナルの東寺講堂での配置図は下記のようになっています(筆者作成)。このうち今回東京国立博物館で見られるものは赤丸で表記。立体曼荼羅を構成する全21像のうち、15像も東京で見られるなんて感動です!こんなにたくさん東京に来てもらって良いのだろうか…。

東寺講堂 立体曼荼羅配置図

東寺講堂 立体曼荼羅配置図

展覧会場でもオリジナルの配置を思い浮かべながら鑑賞すると良いと思います。

中心には大日如来を中心として五仏(阿弥陀如来、不空成就ふくうじょうじゅ如来、阿閦あしゅく如来、宝生ほうしょう如来)が並び、その両脇には五菩薩と五大明王が配置されています。

菩薩は修行中の仏で、王子であった釈迦の修行時代をモチーフとしており、慈悲の心が現れた優しいお顔でさまざまな苦しみから人間を救ってくれそうな印象があります。

一方、反対側には五大明王像。明王は大日如来の化身で、仏の教えに従わないものを威圧して教え導く役割なので、菩薩とはまったく異なり怒りをあらわにした表情で見る者に迫ってきます。でも、ただ怒っている怖い仏というわけではなく、基本的には人々を救ってくれる存在なので、炎を背負い怖い表情をしている中にもちょっと人々に寄り添ってくれるような印象を受けるので不思議です。たとえば、水牛に乗っている明王「大威徳明王騎牛像」。牛は死を司るインド古来の神、ヤマ神を表し、それを踏みつけることで死を克服していることを示すのだとか。怒りの表情は、単に人間を威嚇するのではなく、死に対する恐怖をはねのける強さを表しているのかもしれません。

こうして密教の最高神である大日如来が菩薩や明王などさまざまな形で人々の救済に寄与してくれるということを、一見しただけでわかりやすく示してくれています。

優しく救済してくれる仏と、従わない者に怒る仏を両方用意するということは、仏教を布教するうえでアメとムチを使っているということですよね。人間をうまく導くためには、アメだけでもムチだけでもダメ、両方をうまく使わないといけない。…多くの信者を獲得する宗教からは学ぶところが大きいです。

五大虚空蔵菩薩坐像ごだいこくうぞうぼさつざぞう(重要文化財)

虚空蔵菩薩こくうぞうぼさつは広い智恵と慈悲の心で人々の願いを叶える菩薩。知恵や知識、記憶力をもたらす仏と言われており、虚空蔵菩薩のご利益を受けるための修行法「虚空蔵求聞持法こくうぞうぐもんじほう」で真言を百万回唱えると、あらゆる経典を記憶する力が備わるのだとか。
この五つの菩薩像は東寺では横一線上に展示されているようですが、本展の展示会場では曼荼羅に従って中心と東西南北に配置された五菩薩像が見られます。空間配置全体を見てみると仏像が東西南北あらゆる方向を向いているおかげで、世界中くまなく、あらゆる問題から救済してくれそうな印象を受けます。
それぞれ動物(獅子、孔雀、馬、迦楼羅かるら、象)に乗った造形自体も珍しく目を引かれます。9世紀に中国で作られたものですが、この時代の日本人が実物の象や孔雀を見たことはなかったはず。平安時代の仏像に異国の生き物が取り入れられているなんて、ちょっと不思議な感じがします。

兜跋毘沙門天立像とばつびしゃもんてんりゅうぞう(国宝)

中国からもたらされたもので、唐時代につくられたものと推定されています。毘沙門天は四天王の一人として北方を守る多聞天なので、敵から仏を守る守護神です。したがって武器を持ち、甲冑を身につけているのですが、これが中国風で異国情緒あふれています。そして全身を見てみると、細身でスタイル抜群。表情こそ怒りをあらわにしているものの、細マッチョイケメンと言ってもいいくらいのたたずまいです。

後七日御修法ごしちにちみしほ完全再現と両界曼荼羅

東寺で平安時代から連綿と受け継がれてきた法要、後七日御修法ごしちにちみしほ。国家の安定や天皇の健康を祈って毎年行われていますが、今回は空海の頃から実際使用されている仏具の展示とともに法要の内部空間が完全再現されています。修行空間には両界曼荼羅(国宝)が掲げられ、大日如来の慈悲の心が広がる様子を示した「胎蔵界曼荼羅」と密教経典である金剛頂経が導く悟りへの道筋を示した「金剛界曼荼羅」がこの法要でどのように使われるのか体験できるようになっています。周囲には仏の守護神である十二天や明王の図像(国宝)も展示され、通常一般公開されない法要の空間を体験できる貴重な機会です。

さらに音声ガイドを借りてみると、読経の音声が聞けるので雰囲気満点です。しかも音声ガイドのナレーションは佐々木蔵之介さん。しっとりとした落ち着いた解説で、神聖な世界に入り込んでいけます。オススメです。

3. 真の見どころは、空海の優秀さとプロデュース力!

本展は空海が提唱した密教の世界観を余すところなく体験できる、貴重な展覧会です。特に私が感心したのは、空海の優秀さ。特に立体曼荼羅の企画立案力、実行力とプレゼン力は、後の仏教のあり方に大きな影響を与えたのではないでしょうか。

遣唐使時代に唐で学んだ密教の奥深さと難解さに気づき、それをさまざまな知識レベルの人々に広げるために最適な方法を検討した様子がよくわかりました。文章ではなく図像でわかりやすく伝えるべきだという方針は、特に立体曼荼羅によく表れています。
如来、菩薩、明王、天部のそれぞれの役割や特徴を仏像の形で見える化し、大日如来がどのように姿かたちを変え、あらゆる境遇の人々を救うのかが具体的にイメージしやすくなっています。私のような、仏教に詳しくない人間にも何となくわかったような気にさせてくれるんです。これこそが、空海の狙いだったのでしょう。

そしてこれらの尊像が空間内で効果的に配置されることによって、仏が人間のあらゆる問題に対処してくれるような、仏教の万能感を感じることができます。これは仏教ファンを増やすことに相当貢献しているのではないでしょうか。

4. グッズ類

本展限定のグッズとしては、おかざき真理さんの漫画「阿・吽」のデザインのファイル類のほか、マスキングテープも良いです。立体曼荼羅に登場する動物たちや、仏具、帝釈天などのデザイン。どれにしようか迷ってしまいました。

立体曼荼羅の絵葉書も充実してます。グッズの情報はこちら(公式サイト)

5. 混雑状況

日午前中にも関わらず、入場待ち時間はないものの展示室内はやや混雑していました。週末は時間に余裕を持って訪問した方が良いかもしれません。意外と目玉の立体曼荼羅付近より、入口付近の方が混んでいました。リアルタイムの混雑状況は東寺展のツイッター公式アカウント(@toji2019)で。

6. 展覧会をもっと楽しめる本

本記事を書くにあたって参考にした本です。本書を読むと、東寺にはまだまだ多彩な仏像が多くあることがよくわかります。すっかり京都へ行きたくなってしまいました。

もっと知りたい 東寺の仏たち


東寺の国宝が集結した奇跡の展覧会。必見です!会期は2019年6月2日まで。

国宝 東寺ー空海と仏像曼荼羅ー
会期:2019年3月26日〜6月2日
場所:東京国立博物館 平成館
公式サイト:https://toji2019.jp/index.html
※会期中展示替えがあるので、展示作品リストを見てから訪問することをお勧めします。