迎賓館・和風別館(游心亭)は戦略的に作られた和の外交舞台。ガイドツアーが面白い。

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迎賓館赤坂離宮には、和風建築も併設

迎賓館関連記事の2回目は、ベルサイユ宮殿さながらの本館の横にたたずむ、和風別館について。本館についての詳細記事は下記をご覧ください。

迎賓館赤坂離宮 主庭にある噴水(国宝)。 (筆者撮影)

迎賓館は明治時代の国力を結集した総合芸術。都心にベルサイユ宮殿があったなんて…と、度肝を抜かれた話。

下記画像は、私が見学した際に撮影した外観の写真です。

迎賓館赤坂離宮 和風別館 (筆者撮影)

迎賓館赤坂離宮
和風別館
(筆者撮影)

本館の荘厳さに比べるとビジュアル的なインパクトは少ないかもしれません。しかし、ガイドツアーに参加してみると、日本政府が国賓をもてなすために、この施設を戦略的に作ったことがわかりました。

昭和時代、和の外交施設として新しく建設

第二次世界対戦後、日本はアメリカの占領下にありましたが、サンフランシスコ講和条約で主権を回復し、国際社会に復帰します。その後、他国間との連携を深める中で国賓をもてなす施設が必要となりました。

洋風の施設として、迎賓館本館を改修して使用する旨の閣議決定が行われました。一方、せっかくVIPに来日していただいたのだから純和風のもてなしで日本文化をアピールしようと、新たに建設されたのが和風別館です。確かに、ベルサイユ宮殿のような本館の空間の中で、日本文化を紹介するのはちょっとちぐはぐですよね。

和風別館は当初から明確な使用目的のもとに設計されているので、外国人に訴求する日本文化が戦略的に配置されています。言い換えれば、「日本政府が考える『海外にアピールすべき、独自の日本文化』とは何か?」をうかがい知ることができます。
また、時の総理大臣のリクエストで仕様変更した部分もあるそうで(後述)、外交上重要な施設と位置づけられていることがわかります。

外国人にウケる日本文化がずらり

※和風別館の外観と庭園は撮影可能ですが、内部は撮影禁止です。内部の写真は迎賓館赤坂離宮のウェブサイトから引用しています。

① 和風別館に隣接する池は、錦鯉のアトラクション

迎賓館赤坂離宮・和風別館 正面の池の重要な役割とは? (筆者撮影)

迎賓館赤坂離宮・和風別館
正面の池の重要な役割とは?
(筆者撮影)

和風別館の正面には池があります。もともと、これは池の水が太陽光を反射して、室内の天井にゆらぎを映すための風流な仕掛けとして作られました。

しかし、「水だけでは寂しい」という田中角栄元総理の意向で錦鯉が飼育されることとなりました。錦鯉は世界的に高値で取引されている、競争力の高い日本文化のひとつです。これは国賓が喜びますね。

池に面した和風別館の窓を開けると、錦鯉が泳ぐ様子を近くで眺められる趣向になっています。こうして、和風別館のテラスから錦鯉にエサをやるアトラクションが生まれたのです。先日、来日したアメリカのトランプ大統領も安倍首相とエサやりをしていましたね。

② 盆栽

迎賓館赤坂離宮
和風別館の盆栽。
(筆者撮影)

和風別館の入口には、立派な盆栽が並んでいました。確かに、盆栽も日本独自の文化だなぁと、改めて気づきました。Bonsai として世界的に知られていますし、最近は盆栽の世界大会に世界中から愛好家が訪れるほど、グローバルに浸透してきています。

施設内にはあちこちに盆栽を飾るための台がしつらえてあり、国賓を盆栽でお迎えする趣向となっています。樹齢170年のものもあるそうです。

③ 日本庭園、枯山水の坪庭と竹林

四季折々の植栽が楽しめるよう、正面には日本庭園が広がっています。桜や紅葉など、季節ごとに楽しめるようになっています。

迎賓館赤坂離宮・和風別館 坪庭

迎賓館赤坂離宮・和風別館
坪庭

画像出典:迎賓館赤坂離宮ウェブサイト(https://www.geihinkan.go.jp/akasaka/japanese_annex/

そして竹林のある中庭。これだけでも Japan な風景ですが、「竹だけでは寂しい」との中曽根元総理の意見で石が配置され、枯山水庭園となったそうです。

④ 主和室

入館すると47畳の大広間があります。和食スタイルの食事会が開かれるそうです。机の下は掘りごたつ仕様で、和室に慣れていない外国人でもOK。中には伝統工芸品が飾られ、日本文化をアピールする場になっています。

生け花や着物文化の紹介など、日本文化のデモンストレーションも行われています。

⑤ 即席料理室

迎賓館赤坂離宮・和風別館 即席料理室

迎賓館赤坂離宮・和風別館
即席料理室

画像出典:迎賓館赤坂離宮ウェブサイト(https://www.geihinkan.go.jp/akasaka/japanese_annex/

L字型のカウンターのある食事スペースです。要は寿司カウンターですね。
これも戦略的に設けられたものだと思います。L字カウンターのコーナー部分に座ると、近い距離で会話ができますよね。今や世界的な美食となった Sushi を楽しみながら、国賓との距離を縮める巧妙な仕掛けに感心しました。

ガイドツアーでは、見学者も接遇してもらえる

迎賓館・和風別館の見学には、事前予約が必須になります。おそらく館内が狭いため、収容人数に限りがあるので予約制になっているのだと思います。見学の際には、皇宮警察の警備のもと、ガイドさんの説明を聞きながら案内してもらえます。

1時間程度のガイドツアーですが、ガイドさんの説明が丁寧で面白いです。国賓が来日されたときのエピソードを織り交ぜながら、楽しく見どころを案内してもらえます。また、単なる機械的な説明だけでなく、見学者にかなり気を遣っていただけます。
「お手洗いは大丈夫ですか。」
「こちらではお写真をお撮りいただけます。もうお写真は大丈夫ですか?十分お撮りいただけましたか?」
とお声がけいただいたり、靴を脱いで入室する際に先方で靴を揃えていただけるなど、一般の見学者でも「おもてなし」されるんです。
ちょっとだけ国賓の気分が味わえるのも魅力です。

和の外交舞台をのぞいてみよう

ここを見ておくと、国賓が来日したニュースを見たときに、外交活動がどのように計画され実行されているか、実感を伴ってわかるようになります。そして、ここでどのような活動が行われているのか説明を受けることで、あらゆる日本文化がここに配置されている背景が理解できます。単に和風の接遇だけを行う施設ではありません。ここで日本文化のプレゼンを行うことで、それを海外に広めるマーケティングの役割を担っているのです。

国賓レベルの方々が日本文化に興味を持ってくれれば、文化交流がますます円滑に進むでしょうし、諸外国で日本イベントなどが開催しやすくなるはず。ここで外国首脳に日本文化を訴求しておくことは、将来にわたって日本文化の発展に寄与する可能性があるのです。この点に気づけたことが、迎賓館和風別館を実際に見学したことで得られた大きな収穫でした。

また、日本中から選りすぐりの建築資材、伝統工芸品、美術品が集められているため、美術館で文化的価値の高いものを見るのと同様の体験ができます。オススメです。

迎賓館・和風別館の見学には、予約が必須になります。見学は通年実施されていますが、国賓来日などの予定がある場合は見学できません。予約は公式サイトからインターネットで行えます↓。
※応募者多数の場合は、抽選になります。

迎賓館赤坂離宮 和風別館

公式サイト:https://www.geihinkan.go.jp/akasaka/


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