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東京都美術館で開催中の「奇想の系譜ー江戸絵画ミラクルワールド」へ行ってきました。
本展は、江戸絵画ブームを作ったベストセラー「奇想の系譜」(1970年初版発行、美術史研究家、辻惟雄先生著)を元に企画構成された江戸絵画の展覧会です。
今では考えられないことですが、「奇想の系譜」が発行された当時、伊藤若冲はまったく注目されておらず、この本がきっかけで広く知られるようになったそうです。そして最近では2016年の若冲展に40万人が来場、入場に4時間待ち…と空前の江戸絵画ブームが巻き起こりました。本展では「奇想の系譜」のなかで紹介された流れに沿って、若冲だけでなく、様々な江戸絵画の新鉱脈を体感できる仕掛けになっています。
鶏マニア、伊藤若冲がお出迎え
若冲ワールド炸裂!
最近は空前の若冲ブーム。本展入口を入ると、正面に伊藤若冲作「象と鯨図屏風」と「鶏図押絵貼屏風」が出迎えてくれます。
「象と鯨図屏風」では、象の表情がとてもユーモラスで魅力的。一気に「江戸絵画ミラクルワールド」へ引き込まれます。
「鶏図押絵貼屏風」ですが、様々な線質の組み合わせで描かれた成鳥からは一分の隙もないアグレッシブさを感じます。一方で成鳥の足元にいるひよこがふわっと霞んだ線で描かれていてカワイイ。アグレッシブvs可愛さの対比に「いいね!」ボタンを押したくなります。
鶏マニア若冲の本領発揮
自ら鶏を飼い、ひたすら鶏を観察してから鶏の絵を描いていたという若冲。絶対鶏マニアなんだろうなあ、と思っていたのですがやっぱりそうでした。
写真はミュージアムショップで購入した「紫陽花双鶏図」の絵葉書です。この絵から、鶏に対するマニアックさが伝わってくるんです。
執拗なまでのディテールの緻密さ。
色彩の繊細さ。
画中の鶏から感じられる、強い生命感。
ぜひ実物を、単眼鏡か双眼鏡で拡大してみてください。鶏を描く沼にハマるとスゴイ絵ができるんだなあ、と感心します。
若冲の鶏もいいけど、メジロもキュート
「海棠目白図」では木の枝に鈴なりになってメジロがとまっているのですが、これがまた可愛い。
写真は購入した絵葉書です(部分)。ぷくっと胸を膨らませ、互いにくっついて横並びにひしめきあっていて、なんだか丸い団子が連なっているようで愛らしく、思わず微笑んでしまいます。
長沢蘆雪の子犬は、もふもふ元祖?!
長沢蘆雪の作品は、襖の中でうねる龍を最高にカッコよく描いた「龍図襖」など正統派のものがある中で、「なにコレ、可愛い!」と釘付けになったのが「白象黒牛図屏風」の犬です。屏風2双のうち、1双には白い象と黒いカラス、もう1双には黒い牛と白い子犬が描かれており動物の大きさと色が対比されているんですね。
写真は購入した絵葉書(2双のうち、牛と子犬が描かれたもの)ですが、この子犬には萌えますね。
モフモフ好きの人にはたまらないのではないでしょうか。なんだかこの犬がゴマフアザラシのゴマちゃんにも見えてきたりして、あまりに魅力的なので絵葉書を買ってしまいました。しかもこの絵葉書、縦方向の折り線で折ると屏風としても飾れるようになっているんです。飾る楽しみもあって良いです。
【閲覧注意】な岩佐又兵衛の作品
美術館でこんな↓注意書きがあるのを初めて見ました。
本展の岩佐又兵衛作「山中常盤物語絵巻」に添えられていた注意書きです。源義経の母親、常盤御前が盗賊に惨殺され、義経がその仇を打つという物語なのですが、殺害シーンの描写が確かに残酷でした。確かにダメな人は本当に無理だと思います。ネット記事で【閲覧注意】と書いてあるようなものですね。苦手な人はご注意を。
一見すると残虐な描写に目が行きますが、ディテールをよく見ると人物の表情、衣装の模様の緻密さ、武具の金属部分や衣装の縁部分を金銀で細かく彩色するなど、岩佐又兵衛が卓越した技術を持っていたことがよく分かります。
それは2019年3月10日まで期間限定出品の国宝「洛中洛外図屏風」を見ればさらによく分かります。こちらは最前列から見てもガラス越し、約70cm程度離れての鑑賞になりますので、細部まで見たい方は双眼鏡や単眼鏡の使用をお勧めします。
歌川国芳の絵は、紙一枚じゃおさまらない!
幕末に活躍した浮世絵師、歌川国芳の作品はダイナミックな骸骨が有名な「相馬の古内裏」、「宮本武蔵の鯨退治」が特に目を引きますが、このスケールの大きさは実物を見ると全く違います。画像は「宮本武蔵の鯨退治」の絵葉書(ミュージアムショップで購入)↓。
これらの作品は、通常の浮世絵で使用される紙1枚で表現されているのではありません。A4サイズ程度の紙を3枚繋げ、大きな紙にして表現しているんですね。普通の紙1枚では自分のやりたいことは表現できない!という作者のメッセージが伝わってきます。構図も色も、とても大胆。ひと目見ただけで「何コレ、面白い!」と引き込まれます。
ここでは紹介しきれないほど、面白く魅力的な絵のオンパレードでした。もうひとつ本展を鑑賞していて興味深かったのは、周囲の鑑賞者の方から聞こえてくる感想が独特だったこと。
「うわぁ…」「何コレ?!」
「面白い!」「ユーモラス!」
「可愛い!」
というような、意表をつかれた時に思わず出てしまう言葉でしたね。正統派のお行儀の良い絵を見るのとはまったく違った感想が得られる美術展だと思います。
混雑状況
今日から岩佐又兵衛作の国宝、「洛中洛外図屏風」が2019年3月10日まで期間限定で展示されるのもあってか、平日午前中にもかかわらず混雑していました。入場の待ち時間はありませんでしたが、特に若冲エリアは混雑していたほか、岩佐又兵衛の「山中常盤物語絵巻」を最前列で見るためには列に並ばなければなりませんでした。週末はさらなる混雑が予想されるため、時間に余裕をもって訪問されることをお勧めします。
奇想の系譜展ー江戸絵画ミラクルワールドー
公式サイト:https://kisou2019.jp
会期:2019年2月9日(土)〜4月7日(日)
場所:東京都美術館(東京・上野公園内)
※会期中展示替えがあるので、お目当ての作品がある場合は展示リストを確認されてから訪問することをお勧めします。
本展の元となった名著、「奇想の系譜」の書評を書きました。本展の背景を知りたい方はこちらもどうぞ↓