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東京・六本木の東京ミッドタウン内にある21_21 DESIGN SIGHTで開催中の「民藝 Another Kind of Art」(公式サイト:http://www.2121designsight.jp/program/mingei/)へ行ってきました。
民藝とは何か?
思想家で、日本民藝館初代館長の柳宗悦氏らが提唱した概念です。本展出品リストに記載されている柳宗悦氏の文章によれば、民藝の定義は下記のようなものだそうです。
民藝 Another Kind of Art: 出品リスト 「日本民藝館」(柳宗悦 著)より引用
つまり、観賞用に製作されたり、大量生産・大量販売するために作られたものではなく、名もなき職人たちが無心で行うものづくりのことです。地元の優れた素材を使い、その土地に伝わる技術を用いて、暮らしのなかの必要性に基づいてものを生み出していく。民藝は、特定の有名アーティストが製作したものでもなく、また、いつ作られたものかもわかりません。にもかかわらず、独特な美と魅力を持ち、生活に根づいたものなので、実用性もあるのです。そして本当に良いものは、時代の変化に晒されても淘汰されずに残っています。これはある意味、デザインの究極のかたちと言えるかもしれません。
本展では、上記の考え方に基づいて日本民藝館・初代館長の柳宗悦氏が収集した民藝品が展示されています。「民藝」の概念は、文章だけでは理解が難しい部分もあったのですが、本展の映像コーナーでは上映時間25分のオリジナル映像が上映されており、「民藝」を直感的に理解できるようになっています。
民藝からインスピレーションを得た、現代の人気デザイン
世界的に有名なデザイナーの柳宗理氏は、日本民藝館の館長を務めておられたこともあり、民藝から現代に通じるデザインを見出していたようです。柳宗理氏の著書「エッセイ」には、黒土瓶をデザインする際の考え方として、こんな記述があります。
「エッセイ」(柳宗理 著・平凡社)より引用
無印良品も、民藝的なストーリーで商品開発をしていますね。たとえば、私が自宅で愛用しているラタン収納用品。これは、ベトナムで古くから行われているものづくりに着想を得たものです。現地に自生する素材・ラタンを用いて、人々が手編みで作っていたラタン製品。これをいまの日本の暮らしに合うかたちにしたものが、無印良品の製品なわけです。
民藝を見れば、柳宗理・無印良品など、人気を博しているデザインの発想の源が垣間見えるということ。ちなみに本展の入口には、柳宗理作「柳デスク」が展示されています。
心を揺さぶる民藝品
映像コーナーから先へ進むと、日本民藝館で所蔵されている民藝品100点超が展示されています。日本民藝館初代館長・柳宗悦氏の方針に従って、先入観なく見るためにキャプションは最低限しかありません。とにかく展示品を見て、自分の心の動きを観察する。そんな空間です。
食器、火鉢、厨子、テキスタイル、地蔵菩薩像。あらゆる民藝品が展示されており、その中には「これが手頃な値段で売っていたら欲しいな」と思えるデザインのものが見つかったりします。
私の個人的なツボは「卵殻張重箱」。割れた卵の殻を貼って装飾することで、不思議な味わいが生まれており面白かったです。昭和期の白釉便器の展示もあります。マルセル・デュシャンの「泉」に通じるものを感じます。
現代のクリエイターの展示も
こちらは撮影OKでしたので、ごく一部になりますが下記に画像を載せておきます。きっと心が動く作品が見つかるはず。
まとめ
現代のデザインに通じる民藝について理解を深められ、目から鱗でした。日本民藝館にはまだ行ったことがないのですが、ぜひ今度訪れてみようと思います。特に民藝そのものや、デザインが生まれるプロセスに興味がある人におすすめできる展覧会です。
また、2018年12月14日からは21_21 DESIGN SIGHTの隣接したギャラリーで無印良品の展示会、「民具」展(http://www.2121designsight.jp/gallery3/mingu/)が行われるようなので、無印良品の製品が好きな方もあわせて楽しめると思います。
ちょうど、東京ミッドタウンは12月25日までイルミネーション実施中。夕方に訪れれば、21_21 DESIGN SIGHT 周囲の光のアートも楽しめて、一石二鳥ですよ。