美術館の音声ガイドはこう変わる!スマホが音声ガイドになる未来。

美術館の音声ガイドに変化の兆しが…

展覧会に通っていて最近気づいたこと。それは、「音声ガイドが進化している展覧会やミュージアムが増えてきたな」ということ。ふつう、音声ガイドと聞いて想像されるのは音声レコーダーとイヤホンがついていて、ボタンを押すと音声が再生されるシンプルなもの。しかし、こうした既存の音声ガイドの範疇を超えた新しいコンセプトのものが出てきているなと感じています。

ここ最近で一番衝撃を受けた音声ガイドは、2019年の年末に国立新美術館で開催されていた「カルティエ展」と2020年1月に代官山で開催されていた「レオナルド・ダヴィンチ没後500年 夢の実現展」(主催:東京造形大学)です。(いずれも会期は既に終了。)

「カルティエ 時の結晶」展:ジュエリーの魅力を余すところなく伝える、スマホ型音声ガイドが秀逸。

「ダ・ヴィンチ没後500年 夢の実現展」:展覧会の未来が見える!レオナルド・ダ・ヴィンチの描いた夢とは?

カルティエ展はスマホ、夢の実現展はタブレットタイプの音声ガイドを貸し出すという先進的な取り組みが見られた展覧会でした。従来の音声ガイドは単に音声を再生するだけの機械。情報量が決して多くはないのに大きくてかさばり、首からかけていると重くて肩が凝りストレスになっていました。それに比べて「カルティエ展」のスマホ型音声ガイドの快適なこと!軽くてポケットに入る、画像つきで作品説明が出る、作品の前に移動するだけで位置情報を検知して勝手に音声が再生されるなど、秀逸なしくみでした。

「夢の実現展」はタブレット(たぶんiPad)型音声ガイドが貸し出され、スマホ画面に比べて画面が大きいので説明が見やすかったです。特筆すべきはタブレットのカメラ機能を利用したAR(拡張現実)で展示作品の解説が行われていたこと。作品にタブレットのカメラを向けると、画中で使用されている遠近法の解説がタブレット画面に出てくる仕組み。これは新しい!

スマホ・タブレット型音声ガイドは展覧会の可能性を広げるなと思った瞬間でした。

そのほかにも一部のミュージアムでは個人のスマホに専用アプリをダウンロードして、音声ガイドとして使えるようにしているところもあります。たとえば東京国立博物館や、今年リニューアル開館したアーティゾン美術館がそうですね。東京国立博物館の無公式アプリについては、下記の記事にまとめています。

トーハクなび(東京国立博物館公式アプリ)と Airpods の相性が最高

東京・京橋にあるアーティゾン美術館でも、無料の公式音声ガイドアプリをダウンロードできるようになっています(https://www.artizon.museum/general_info/official-app)。音声ガイド機の貸し出しは行っていないということなので、完全に個人のスマホを音声ガイドとして活用する方向へシフトした印象です。アーティゾン美術館へ行くときには、スマホアプリのダウンロードとイヤホン持参がマストということになりますね。

こうした最近の流れから、従来の音声ガイドは徐々にスマホやタブレットに置き換えられていくのだろうと思っています。おそらくこの動きには①スマホ・タブレット型音声ガイドを貸し出す、②個人のスマホを音声ガイドとして使用可能にするというふたつの方向性があると思います。では音声ガイドのスマホ・タブレット化が進むとどんなメリットや懸念点があるのか考えてみました。

スマホ・タブレット型音声ガイドのメリット・懸念点

実際に体験してみて感じたメリット・懸念点は以下の通りです。

メリット
  • 得られる情報量が増える
  • 局所的な混雑が解消される
  • ユーザビリティの向上
懸念点
  • コンパクトなので盗難されやすい
  • 撮影禁止作品が無断で撮影されやすくなる
  • スマホに不慣れな人の満足度低下

とにかく音声だけの解説に比べて情報量が増えるメリットが大きく、それによって「夢の実現展」のような新しいタイプの展覧会も可能になりそうです。たとえば作品の3D画像をスマホ画面内で360度動かし、実際の展示では見えない部分を補うことだってできます。動画で鑑賞の助けになる情報を補ったり、修復・復元前後の情報を載せたり…コストとの相談にはなるでしょうが、いろいろな活用方法が期待できます。それ以外にもユーザーにとってありがたいのが混雑の解消とユーザビリティの向上です。展覧会では作品の傍にキャプションがあることが多いですが、文字が小さく見づらいのでその周りに人が集中して混み合うんですよね…。でも手元のスマホで解説が見られれば、わざわざキャプションのそばまで近づく必要はありません。また、スマホの画面上で必要に応じて文字サイズを大きくできれば使用感は格段に向上するはずです。そのうえ軽量、コンパクトなのだから申し分なし。

盗難の懸念については位置情報検知を利用し、会場外に持ち出したらアラームが鳴るようにすれば回避できると思います。作品が撮影されるリスクについては、個人のスマホを会場内持ち込み禁止にしないと完全には防げません。したがって音声ガイドをスマホ型にするかどうかの問題ではなく、結局はモラルの問題になってしまいますね…。スマホに不慣れな人に対する対応は、スマホ音声ガイドと従来型音声ガイドを同時に提供できれば解決できると思いますが、コスト的にどうなのか?国内のスマホの所有率は2017年時点で75.1%(総務省情報通信白書)だそうなので、スマホ型音声ガイドに切り替えてもそれほど大きな問題はないような気がします。

今後スマホ型音声ガイドが普及すれば、展覧会の魅せ方ももっと進化するはず。スマホ型音声ガイド、今後の展開が楽しみです。またどこかの美術館でスマホ型音声ガイドを見つけたら、ブログで紹介したいと思います。