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2019年6月26日〜サントリー美術館で開催されている企画展「遊びの流儀 遊楽図の系譜」へ行ってきました。
「遊び」ってそんなに昔からあったかなあ?とちょっと疑問だったのですが、そもそも平安時代に遊びに関する名言が生まれているんですよね。平安後期の歌謡集、「梁塵秘抄」の一節です。
「遊びをせんとや生まれけむ」
ということは、平安時代には遊びがそこそこ発達していたということになります。では遊びはどのようにして生まれ、進化していったのか?本展では、平安時代から現代まで伝わってきた様々な遊びを、当時の道具や絵画を通じて理解できるようになっています。
昔の遊び、ラインナップは意外と多彩
美術館で展示されるような道具を用いた遊びは、貴族など上流階級の人間が嗜むものだったようですが、それでも結構色々なバリエーションがあったんだなあということがよく分かります。例えば下記のようなものです。
- 蹴鞠
- 双六
- 囲碁
- 絵合せ
- 貝合せ
- 管弦
双六は8世紀に中国から伝来し、平安貴族の間で大流行したとのこと。形は違えど現代でも残っている遊びがこの時代からあったなんてちょっと驚きでした。そして蹴鞠の鞠と、それを飾るための「鞠挟」が展示されていましたが、これ、初めて見ました。蹴鞠は思ったより小さく、ソフトボールとハンドボールの中間くらいの大きさ。鹿の革で作られているのだとか。
さらに時代が進むと、もっとな遊びが多彩になってきます。重要文化財の「遊楽図屏風」(2019年6月26日〜7月15日に展示)には管弦、舞、双六、カルタ、煙草、猿回し、風呂など様々な遊びが描かれ、大人が皆本当に楽しそう。こうして見ると遊びの需要って昔から結構あったんだなあと思い、また、いつの時代も人間にはストレス発散の手段として遊びが必要なんだなあと思わされました。
絢爛豪華な遊び道具も本展の見どころのひとつです。なんといってもまず、桃山時代につくられた重要文化財の「清水・住吉図蒔絵螺鈿西洋双六盤」が華やかで目を引きます。西洋双六(バックギャモン)用の盤なのですが、緻密な螺鈿で日本の風景が作られており遊びに使うのがもったいないと思うほど。
金箔で彩られた貝合せも綺麗でした。
時代とともに遊びの主役が変わっていく
展示を見ていると、時代とともに遊びの主役になる人が変化しているということに気づきます。平安時代では貴族が中心ですが、江戸時代まで進んでくると一般市民が楽しく遊んでいる様子が描かれているのです。これは時代とともに経済が発展し、一般市民が豊かになった影響で遊びの裾野が庶民まで広がったのだと思います。そもそも、衣食住に日々奔走するような貧しい状態では毎日の生活で精一杯で、「遊び」を楽しむ余裕などありません。その時代に豊かさを享受できている人が遊びの主役になれるのです。
本展では遊びの道具や遊楽を描いた絵画を通じて、貴人のたしなみとしての遊びが、庶民に広がっていく様子がよくわかるようになっています。
中国には「琴棋書画」という言葉があるそうです。それぞれ琴、囲碁、書道、絵画を指しておりまとめて四芸と呼ばれ、貴人が身につけるべき教養として重んじられたもの。本展では「琴棋書画」を題材とした中国の絵画を見ることができますが、学問や兵法、武道だけでなく文芸をも貴人のたしなみとされていたのは興味深いところです。
そして日本の平安時代の情景が描かれた絵巻物では囲碁、絵合せ、蹴鞠、管弦などに興じているのはすべて貴族ですが、江戸時代頃の遊楽図まで見ていくと、今度はエネルギッシュな庶民が主役になってきます。こうやってエンタメの市場が拡大し、現代に繋がっていくのですね。
遊びの進化は止まらない
景気が悪くなるとエンタメの市場が縮小するとは言われますが、本展で遊びの歴史を辿ってみるとエンタメがなくなることはないだろうなと思います。楽しいことばかりではない世の中、ストレスを健全な形で発散する遊びはいつの時代にも必要だと思うからです。実際、本展で見られる遊びの中には、形を変えつつ現代まで生き残っているものが多く見られます。そして時代とともに、新しい遊びがどんどん作り出されていったのです。
双六は人生ゲームに進化して生き残っているし、カルタも昔ながらのいろはカルタに限らず、キャラクターカルタや知育カルタまでバリエーションはさまざま。囲碁や将棋は身近なゲームとして、そしてプロの知的格闘技としてもメディアが注目する存在。舞台芸術も伝統を踏襲するだけでなく、アニメとコラボしたナウシカ歌舞伎などの新しい形で現代に馴染んでいます。スマホゲームなどの新しいエンタメも、巨大なエンタメ市場を作り出しています。
時を超えて受け継がれてきた、人間のストレスを発散する遊び。今後も伝統的遊びの進化と、新たなエンタメの創造は続いていくのでしょう。
会期:2019年6月26日〜8月18日
会場:サントリー美術館(東京・六本木)
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