東京大学生産技術研究所「もしかする未来」展感想:東大が本気でデザイン展をやったらこうなった!

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東京・六本木の国立新美術館で開催中の東京大学生産技術研究所「もしかする未来 デザイン×工学」展(公式サイト:https://www.iis.u-tokyo.ac.jp/event/moshikasuru/)へ行ってきました。東京大学生産技術研究所といえばいかにも工学・メカニックのイメージで、ロケットや自動車など日本の高度成長を支えた技術を開発してきた印象でした。しかし、いまは大きく舵を切り、工業デザインの部分に力を入れているんだなあと感じた展示会でした。デザイン×工学でどのように未来を変えるか、という部分にフォーカスされており、大変クリエイティブでした。

※会場は撮影OKでしたので、今回は画像多めです。

「NHK デザイン あ」のような親しみやすい展示

「もしかする未来」展 展示会場の様子。

「もしかする未来」展
展示会場の様子。

会場の様子はこんな感じ。うーん、この感じ、どこかで見たぞ…と思ったら、先日お台場の科学未来館で見た「デザインあ」展の雰囲気にそっくり。会場では実際に手で触ったり、センサーに自分で手をかざして機械を動かしたりする展示があるので、文系・理系問わず、大人も子供も楽しめそうな展示になっています。

不思議な感触の物体は、3Dプリンタでつくられたもの

3Dプリンタで作れるものいろいろ。触ってみると質感は様々。

3Dプリンタで作れるものいろいろ。触ってみると質感は様々。

3Dプリンタの展示は、実際に触ることかできます。そもそも、3Dプリンタでこんなにいろいろな形が作れるんだ、という感動と、触ったときの質感のバリエーションもさまざまなので面白いです。複雑に見える構造でも、パーツを1個1個作ってすべてをつなげるのではなく、機械で一発で作れてしまうとのこと。相当技術は進んでいるんですね~。

3Dプリンタでつくった構造をモーターで動かす展示もありました↑。ダンゴムシやムカデの形の構造が、本物さながらの動きで動きます。本物の生き物の体の構造がそっくりコピーされているので、動きにリアリティがあり、キモカワです。(個人的な推しは、画像右端のダンゴムシ)

3Dプリンタで作られた「さまざまな握り心地のグリップ」という展示。同じ素材なのに、確かに握った感じが全然違う。

3Dプリンタで作られた「さまざまな握り心地のグリップ」という展示。同じ素材なのに、確かに握った感じが全然違う。

こちらは「さまざまな触り心地のグリップ」という展示↑。同じ素材でも、3Dプリンタでいろいろな内部構造を作れば、握り心地が変わってきて新たなグリップが作れるという展示です。

将来のイノベーションを予言する展示

チタン加工技術の展示は、もはやインテリア

チタン製のスツール。美しいデザインすぎて、欲しい…

チタン製のスツール。美しいデザインすぎて、欲しい…

チタンは軽い、錆びない、加工しやすいなど材料としては優れた特性を持っているにもかかわらず、精錬にかかるコストが大きいため大変高価で、活用の場が制限されてしまっているとのこと。そこでチタンを安価に製造する方法を研究中なのだそうです。チタン製のスツールは高度なデザイン性を備えており、普通に購入したいと思ってしまいました。おそらくめちゃくちゃ高価なので手が出ないと思いますが…。でも将来はこれが安価に提供されるかもしれないので、今後の研究に期待したいところです。

バイオテクノロジーの未来も

東大生産技術研究所では細胞をレゴのように組み立て、臓器を構築したり人工筋肉を作製したりと、再生医療的な取り組みも行われているそうです。個人的にツボだったのは下記の展示。細胞を人間の形をした型に入れて培養していくと、最初は型通りの同じ形なのにだんだんと細胞が分裂していくうちに細胞の個性が出て、違う形になっていくとのこと。この五人の人の形を比べてみると、それぞれちょっとずつ違っていて面白いです↓。

細胞培養の展示。もともとはまったく同じ人型だったのに、培養が進むと個性が出てくる。

細胞培養の展示。もともとはまったく同じ人型だったのに、培養が進むと個性が出てくる。

細胞培養の作業をするクリーンベンチも展示されています。中を無菌状態にして両手だけを突っ込んで作業し、雑菌を繁殖させないようにして細胞を培養するための装置です。私はもともとバイオサイエンスが専門なので、「学生の時これで作業してたな~」と懐かしくなりました↓。

細胞培養のための実験を無状態で行うクリーンベンチ。

細胞培養のための実験を無菌状態で行うクリーンベンチ。

後日追記

東京大学生産技術研究所 山中俊治教授から、twitterで情報をいただきました。

上記クリーンベンチと、その隣に展示されている細胞培養用インキュベーターは、PHCホールディング株式会社と共同開発した、新しいデザインの実働試作機だそうです!

まとめ

大学の研究というと、研究のための研究=社会へどのように還元・実用化していくかが見えにくいものも多々ある中で、技術を産業や日常生活にどのように応用するかをしっかりと見据えて研究されている印象で、各研究室の将来の成果が楽しみになりました。

テクノロジーをベースとしたデザイン系の展示なので、今後は科学未来館の常設展示なども企画してくれるといいなあと思いました。3Dプリンタで作られた構造物の触れる展示や、3Dプリンタロボットの展示は技術をアピールするのに分かりやすいし、子供も喜ぶ展示だと思います。

バイオサイエンスの領域では、今後是非とも人気マンガ「はたらく細胞」とコラボした展示をやって欲しいです。難解な免疫分野をわかりやすく伝えるマンガのコンテンツと、最新の知見とのコラボで、バイオサイエンスに対する興味関心が絶対広がるはず。

本展は入場無料なので、気軽に立ち寄れますし、誰でも楽しめる趣向になっているのでおススメです。会期は2018年12月9日まで。ご興味ある方はお早めに。