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東京・上野の東京国立博物館へ「京都 大報恩寺 快慶・定慶のみほとけ」(公式サイト)を見に行ってきました。京都へは何度も行ったことがあるものの、大報恩寺を拝観したことはなかったのですが、こちらは「千本釈迦堂」の別名でも知られ、洛中最古の木造建築で国宝に指定されています。
美術館で仏像を鑑賞するメリットが満載
これまでに寺院を拝観した際に仏像を鑑賞する機会は多くあったのですが、博物館で仏像を鑑賞するのは初めてでした。ご本尊をはじめとした仏像は、それが納められた寺院の建物内でお参りするのが正式だとは思いますが、博物館で展示された場合下記のようなメリットがあるなと感じました。
①至近距離で細部まで鑑賞できる
通常、寺院で仏像を拝観するときは近距離で見ることはできません。数メートル離れていることの方が多いのではないでしょうか。本展では1メートル以内の至近距離まで近づけますし、展示されている像の多くはガラスケースに入っていないので、質感や細部までくまなく鑑賞できます。たとえば快慶がお釈迦様の弟子10人を彫った「釈迦十大弟子像」はよく見ると目が光を反射してキラキラ輝いており、本物の人間の目のようです。玉眼と呼ばれる水晶の板がはめ込まれているので、写実的な目の質感が生み出されているそうです。
②360度いろいろな角度から全体を鑑賞できる
寺院では仏像の背中側にまわって見ることはできませんが、本展では円形の台に像が設置され、その周囲をぐるっと一周まわることができるので360度どこからでも鑑賞できます。現在、本展では六観音菩薩像(定慶作)の光背(仏像の背後にある後光のようなもの)が外されているので、めったに見れない仏像の背中を見ることができます。この六観音菩薩像のうち、聖観音菩薩立像は写真撮影OKでしたので、今日撮影した画像を載せておきます。会場はこんな感じです↓。
展覧会入口で出品目録をもらって、個性的な釈迦十大弟子像を楽しもう
個人的に魅力を感じたのは快慶の手による「釈迦十大弟子像」。釈迦如来の弟子の中でも特に秀でた10名を「釈迦十大弟子」と呼ぶそうですが、この10名には名前とは別に、各人の得意分野をアピールする「◯◯第一」というキャッチフレーズがあるんです。出品目録に下記が掲載されています。↓
- 舎利弗:「智恵第一」~頭脳明晰、聡明さでは誰にも負けません~
- 目犍連:「神通第一」~いざという時は、超能力が使えるのです~
- 大迦葉:「頭陀第一」~清貧をつらぬいて、日々修行に励みました~
- 須菩提:「解空第一」~何事にも執着しないことこそ、真理です~
- 富楼那:「説法第一」~どのような人でも説得してみせましょう~
- 迦旃延:「論議第一」~教団きっての理論家で、問答が得意です~
- 阿那律:「天眼第一」~眼は見えませんが、心の眼で見通せます~
- 優波離:「持律第一」~基本に忠実、戒律を守ることが重要です~
- 羅睺羅:「密行第一」~綿密に、隅々まで怠らずに精進しました~
- 阿難陀:「多聞第一」~お釈迦様の話を一番たくさん聞きました~
※東京国立博物館 「京都 大報恩寺 快慶・定慶のみほとけ」展、出品目録より引用
このキャッチフレーズに沿うような形で、それぞれの弟子の装束、表情、体格や仕草がひとりひとり違うので、良い意味で人間臭く個性的で見ていて面白いのです。たとえば、失明してしまったが心眼で全てを見通す力を持つ「阿那律」は片目だけ半分目を開き、「何でもお見通しですよ」と言わんばかりの表情。弁舌に優れ、「どのような人でも説得する」能力を持つ富楼那は、一見すると人当たりが良さそうだが眼光は鋭く、相当な策士に見えます。釈迦十大弟子は偉大な方々であるにも関わらず、不思議と身近にいる人物に重ねられるような感じがしました。あまりにもそれぞれの個性が見事に表現されていたので、私は鑑賞しながら「この中で上司になってもらうとしたら誰がいいかな~」などとくだらないことを考えていました。ちなみに、上司がこの方だったらいいなあという印象だったのは阿難陀。キャッチフレーズは「多聞第一」。とても包容力のありそうな優しい顔立ちで、何でも話を聞いてくれるのでミスやトラブルがあっても相談しやすそうだなあと思ったのです。(※個人の妄想です。)
本展の入口を通った後すぐに出品目録があり、そこに各弟子の名前と説明が載っているので、入口で目録をもらってそれを見ながら鑑賞するとより楽しめると思います。
期間限定公開の庭園で紅葉も楽しめる
東京国立博物館では、春と秋に庭園の公開を行っており、展覧会チケットがあれば無料で入場できます。この時期、秋の庭園公開は紅葉がきれいです。今日撮影した現地の写真はこちら↓。紅葉がちょうど見頃でしたよ。
庭園公開は今週末(2018年12月2日)まで。平成館の館内には和菓子の老舗である鶴屋吉信のカフェがあり、あんトーストやあんみつ、各種飲み物などでひと息つけます。鑑賞や庭園の散策に疲れた時にオススメです。