東京緊急事態宣言日記14:美術館から届いた書面に、新型コロナウイルスに対する企業姿勢を垣間見る

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政府の発表では緊急事態宣言の期間は5/6までと定められていましたが、ここに来て延長されそうな気配がひしひしと伝わってきます。わたしはもともと美術館や博物館へ行くのが好きなのですが、ここ2ヶ月ほどはまったく行くことができておらず、仕方ないとは分かっていてもちょっとストレスを感じていました。さらにあと1ヶ月くらいは美術館へ行くのはムリかなぁ~と想定しています。いくつか美術館の年間パスポートを買ってしまったのでもったいないことになってしまったけれど、この状況ではしょうがないかと諦めモードです。

わたしが年間パスポートを持っている美術館のひとつに六本木のサントリー美術館があります。サントリー美術館の年間パスポート(メンバーズクラブ)は、本人だけでなく同伴者1名まで何度でも入場OKだったり、メンバー限定の内覧会&学芸員解説が聞けたりとお得感満載なのです。

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サントリー美術館は昨年11月からリニューアルのために休館となっていて、この5/13から開館する予定になっていました。もともと年間パスポートの有効期限は1年間ですが、この6ヶ月あまりの休館期間分を手持ちの会員証の有効期限に上乗せするという神対応が行われていました。休館期間ははさんでしまうけれど、ちょっと年パスの有効期限が長くなってかえってお得と思い、リニューアル開館を楽しみにしていました。そんなとき、先日サントリー美術館から1通の書面が届きました。年間パスポートを持っていると、ときどき展覧会の案内などが郵送されてくるのですが、今回は様子が違いました。

新型コロナウイルスの影響により、5/13から予定されていたリニューアル・オープン記念展の開幕を当面の間延期するとのこと。そして、メンバーズクラブの更新手続きもできないので、休館延長期間分をさらに上乗せする形で会員証の有効期限を延長するとのこと。ユーザーにできるだけ不利益を被らせない対応に感心しましたが、それ以上にわたしはサントリー美術館の素早い判断にびっくりしました。

届いた書面は4/22付の発行なので、夜に新型コロナ専門家会議の会見が行われ、緊急事態宣言が延長されるかも?という話がうっすらと出始めたくらいの頃です。先週の段階では、まだそれほど緊急事態宣言の延長は取り沙汰されていなかったように思いますが、このタイミングで5/13からのリニューアルオープン延期の判断を下したことになります。(あるいは実際の判断は、それよりも少し前かもしれません)これってかなり早いアクションではないでしょうか。新型コロナに対するいろいろな美術館の対応を見ていると、それまでは開館を続けていたけれど、緊急事態宣言の発令を受けて休館を決めたというところもあります。また、休館期間を明示しているところでは政府の緊急事態宣言発令期間と同じ、5/6までを休館期間としているところが多いです。そうなってくると、もともと5/6より後の5/13からリニューアルオープンする予定だったのに、政府の緊急事態宣言延長発表を待たず、このタイミングで延期を発表するサントリー美術館のスピード対応はすごいなあと思っています。サントリー美術館は東京都内でも感染者数が多い港区に立地しているということもあるでしょうが…。

閉館が長くなればなるほど収益は悪化するでしょうし、せっかく準備してきた展示品や資料などがすべてフイになってしまうので、主催者側としてはできるだけオープンさせたいところだと思います。その一方で、無理に開館して、仮に美術館がクラスターとなって感染が拡大したとなれば、来館者の安全が確保できなかったことになりますし、企業ブランドに対する風評被害も避けられません。また、従業員を出勤させることで従業員が感染リスクを負うという問題もあるでしょう。こうした状況で企業美術館がどういうリスクの取り方をし、何を重視して判断を下すかというところに、運営元企業が新型コロナの問題をどう捉えているかが反映されると思うのです。サントリー美術館は短期的な経済的利益よりも、長期的視点で企業ブランドを守ることと、来館者&従業員の安全性を優先して先手で判断したのだろうなあと推測しています。サントリー美術館の来訪者を見ていると中高年層が多いように思うので、新型コロナウイルスに対するハイリスク集団が顧客であるということも影響しているのかもしれませんが…。

新型コロナウイルスに対する企業美術館での運営判断や対応は、単に美術館としての対応だけでなく運営元企業としての判断が反映されます。ですから、企業美術館の対応を見ると、企業としての考え方や社風が透けて見えてくるのではないかと思っています。企業美術館が新型コロナウイルスのリスクレベルをどう判断し、それにどう対処していくのか、今後も注目したいと思っています。