感染症対策が、店舗やサービスの差別化になる時代の始まり

先週の緊急事態宣言完全解除を受け、我が家の近所では今週月曜から営業を再開する店舗が多くありました。特に近隣の商業施設は4月はじめからずっと臨時休業していたので、ユニクロや無印良品で買い物をしたくても、ネットで買うしかなかったのです。どうしても店舗で実物を見てから購入したいものがあったので、昨日さっそく行ってきました。昨夜早くも東京アラートが出てしまい、なんとなく不要不急の買い物はしづらくなってしまったので、昨日はギリギリセーフ…。臨時休業前とは違ってさまざまな感染症対策が行われていましたが、そこで理解したのは、「これからは店舗やサービスが、感染対策の良し悪しで選ばれるようになるかもしれないな」ということでした。

この商業施設には、食品・雑貨・ファッション・美容室・医療機関に至るまでさまざまな業態がテナントとして入っています。施設の共用部分に関する感染対策はビル全体で行われており、例えば入口にアルコール手指消毒剤を設置、エスカレーターやトイレなどの定期的消毒、各フロアに設置されている椅子の使用を禁止するなどの対策が施されていました。一方で、各テナントでどのような対策をするかは、店舗に委ねられているようでした。というのも、同じ商業施設の中であってもショップによって感染対策が異なっていたからです。

たとえば無印良品では、入店前に確実に手指のアルコール消毒を促す取り組みが行われていました。店舗の入口を1箇所に限定し、そこにスタッフを配置してアルコールハンドジェルを入店者ひとりひとりの手に1プッシュ載せ、手指消毒しなければ入店できない形にしていました。さらに、店舗内に何人入店しているかはリアルタイムでカウントされており、既定の人数を超えたところで入場制限をかけていました。ちょうどわたしが入店したあと入場制限がかかっていたようなのですが、正直店舗がまったく混雑している感じはありませんでした。かなり余裕をもって制限をかけているようです。いったん店内に入ってしまえば空いているので快適に買い物ができますが、入場制限時は店外で並んで待たなければなりません。スタッフは全員マスク着用、レジには客とスタッフを仕切るビニールシート設置、現金での接触感染を防ぐため電子マネー使用のお願いを掲示するなどの対策もあり、徹底している印象です。また、ユニクロも同様に徹底していました。まさか検温してからユニクロに入店するようになるとは…。報道で見た中国の対策と同じですね。無印良品やユニクロは世界中に店舗を展開しているので、対策がグローバル基準なのかもしれません。

その一方で、あまり特別な対策を行っていない店舗もありました。ビル全体として対策を行っているので、テナント側では特段の対策をしないという考え方なのかもしれません。もちろん、スタッフの方の手洗いや店内の消毒などは行われているのでしょうが、顧客には負担をかけないという方針のようです。入店時には特段の対策はなく、レジも無防備。

…ひとつの商業施設のなかであちこちのショップを巡ってみたときに、こうも感染対策が違うと各テナントのコロナ対策方針が横並びで比較できてしまいます。すると、自然と自分の行動が変わってきます。わたしは感染リスクに敏感な方なので、感染対策があまり行われていない店舗に行くのはしばらく控えようと思ってしまいました。店舗そのもののブランド、ディスプレイの美しさや品揃えだけでなく、マスク・アルコール手指消毒・検温・入場制限・フェイスシールド・動線の確保など、合理的な感染対策を実施しているかどうかが、いつの間にか自分が店舗やサービスを選ぶ重要な基準のひとつになっていたのです。

そういえば、美容室についてもそうでした。コロナ騒動で美容室を自粛し続けて4ヶ月。髪はボサボサ。基本STAY HOME生活だったのでまあいいか、と思っていたのですがさすがに限界が来ました。そこで近隣の美容室のWebサイトを見てみると、ほんとうに店舗によって対策が全く違うんですよね。徹底しているところでは、消毒やスタッフの健康管理はもちろんのこと、新規の顧客は受け付けずに既存客のみに絞って座席数&予約数を減らし、スタッフはすべてマスク&フェイスシールド&手袋着用という店舗もありました。その一方で、ウェブサイトでアピールしている感染対策が明らかに誤っている店舗もありました。「当店ではお客様ご来店時、次亜塩素酸水での手指消毒をお願いしております」との記述が…。次亜塩素酸水は手指消毒には適さないとされています(製品評価基盤技術機構 次亜塩素酸水等の販売実態について(ファクトシート)より)。もしかしたらアルコールが入手できなかったのかもしれませんが、誤った消毒方法を推奨するのは美容室の信用問題になります。美容室では直接人体に触れることが多いため、新型コロナに限らず衛生管理が重要です。こうした背景から、美容師国家試験では衛生管理の基礎知識として、感染症や消毒方法の問題が出題されます。それなのに誤った感染対策をしているとは…実は何度か通ったことがある美容室だったのですが、この件で正しい消毒知識がないことが分かってしまったので、今後行くのはやめました。美容室側にしてみれば、コロナ対策を誤ったことで顧客をひとり失ってしまったわけです。

逆に言えば、しっかりとしたコロナ対策をアピールすることで他の店舗やサービスと差別化できるということです。たとえば新型コロナで売り上げが激減した飲食店や美容室。店舗でのキラキラとした非日常感を壊さずに十分な対策を行うのは難しくコストもかかりますが、そのハードルを超えられれば新たな顧客をつかめる可能性が生まれるのです。もしかしたら、今後は新規に開店する飲食店や美容室の設計そのものが変わることもあるかもしれません。移動式の目立たないパーテーションで客の人数に応じてグループごとに仕切りを作る。換気システムで定期的に室内の空気を入れ替える仕様にする。全天候型の快適なテラス席を作る、など…。
少なくとも、新型コロナの情報を正しく理解し、正しい感染対策をアピールすることが基本です。感染対策に関する店舗のオーナーや経営者のリテラシーが問われる時代になっています。それは消費者側も同じです。しばらくはコロナのリスクと付き合いながら暮らして行くことになりますが、自分の身を守るためにも感染対策のリテラシーを高め、常に最新情報をアップデートしつつ、製品やサービスを主体的に選ばなければいけないのだと思っています。