緊急事態宣言解除と、先駆者から謙虚に学ぶということ

ついに今日、緊急事態宣言が全面解除されました。4月7日からちょうど50日。この間に身近な暮らしに起こった変化はすさまじいものがあります。スーパーやコンビニの店舗では客と従業員を隔てるビニールカーテンが設置され、現金を扱うレジのスタッフはマスク・手袋・フェイスガードの完全防備で接客。街中でのマスク着用率はほぼ100%で、うっかりマスクを忘れて外出すると肩身が狭いほど。髪の毛をすっぽり布で覆い、マスクとメガネを付けた完全武装でスーパーに来ている人もたまに見かけます。混雑する100円ショップでは、入場制限を実施。100均で入場制限なんて、初めて見たよ…。通りすがりに地元の歯科医院の受付を見ると、スタッフの方が手術のような服装(手術用キャップ、フェイスガード、医療用マスク、手術着)をしていて、なるほどなぁと感心したものです。歯科医院は確かに、リスクが高そうですよね…。

こうして普通の街角でも当たり前になった感染対策は、もとはと言えば最初に新型コロナウイルスが流行した中国、香港などの対策から学んだものです。今年の1月~2月頃武漢で大流行が起こった際、SNSに投稿された現地の人々の感染対策が世界中に拡散されました。マスクが足りないのでフェイスガードを自作、フェイスガードがわりに大きなペットボトルを頭からかぶる、さまざまな手作りマスクのアイデア、エレベーターのボタンを指で押さずに使い捨ての爪楊枝で押す、対面でデリバリーや宅配便の受け取りをしない、感染者が出た施設の徹底的な消毒…。それらの投稿を見た日本人の反応は、「これは良い対策だ、日本でもぜひ真似させてもらおう」という好意的な反応ではなかったように思います。

「こんなのやりすぎだ」
「デマじゃないか」「きっとネタだろう」

というような意見が主流でした。まぁ確かに、頭からペットボトルをかぶった人の画像はちょっとネタっぽいなとは思いましたが…。それに、中国では検閲が厳しく情報がコントロールされているので、どの程度正確な情報が出てきているか分からないということはあったでしょう。しかし欧米先進国で急激に感染が拡大し、それが日本に持ち込まれ、国内でも感染爆発寸前まで行き、緊急事態宣言が発令されると、日本は中国の対策をそのまま取り入れています。結局は、コロナ対策で先んじている国から謙虚に学ぶことが重要だったのです。たとえ在宅していても宅配便を玄関ドアの外に置き配にしてもらうことは普通になりましたし、商業施設や病院でフェイスガードを見かけても違和感を感じなくなり、エレベーターのボタンや電気スイッチなどは不用意に手指で触らない癖がつきました。行列ではソーシャル・ディスタンスを保って、間をあけて並ぶのも日常的な風景です。施設の定期的な消毒も行われるようになっています。いまこうして振り返ってみると、おそらく中国で行われていた対策は正しかったのだと思います。おそらく中国の人々は、新種のウイルスで十分な科学的知見がない中、生き残るために必死に対策を編み出したのだと思います。どんな感染対策をしている人が感染していないか、周囲の感染例と非感染例をつぶさに観察して、生きるために独自の感染対策を作り、それをシェアしていたのです。

なぜ中国・香港・台湾・シンガポールなどの地域が感染を抑え込めたのかは色々な理由があると思います。政府が国民の行動をどれだけ監視し、制限できるかということは大きいでしょう。しかし、前提としてひとつあると思うのは「かつてSARSを経験した国だから」ということだと思います。2003年に起こったSARSはこれらの国で大パニックを引き起こしましたが、日本ではそれほど患者が出なかったため、感染症の脅威に対する危機感が育っていなかったのだと思います。SARSではエレベーターのボタンで感染した事例、高層マンションの下水から出た微細な飛沫が上層階へ浮遊して感染を広げた事例などが明らかになっています。こうした状況の中、SARSの流行地域で経験的に編み出された感染対策が新型コロナウイルスでも役立っていることは間違いないでしょう。

日本ではクラスター対策班のファインプレーにより、感染のピークを中国・欧米よりも後にずらすことに成功しました。これによって、日本は感染拡大が先行している国の事例から学びながら、最善の策を考えることができます。このアドバンテージは非常に大きいです。世界中の都市でロックダウンが行われ、現在多くの国で段階的な解除が行われつつあります。どのような経済活動によって第二波が起こりうるのか、起こらないようにするにはどうすれば良いか、第二波が起こった場合にどう対処するか。諸外国の事例を判断材料としてこれらの意思決定ができるのは日本にとって大きなプラスになります。

新型コロナウイルスの対策が適切だったかどうかは、数値で測定可能です。感染者数や死亡者数が指標になりますし、仮に感染者数を隠すことができたとしても短期間に多くの人が亡くなるような国や地域があった場合、それを完璧に隠蔽することはほとんどの国では難しいでしょう。新型コロナウイルスの状況は日々刻々と変わり、ウイルスはすでに世界中に広まっているため、次にどこの国や地域でリスクが高まるのかは分かりません。そして、ウイルス側に変異が起こる可能性もあるため、従来の対策で第二波に対処できるのかどうかも不透明です。したがって、もしどこかで第二波が起こったとしたら、その国はコロナ対策の先駆者となります。それがどこであれ、情報の質は見極めつつ、そこで編み出された対策から謙虚に学び、引き続きコロナと闘いたいと思います。