小学生でも続けられる我が家のコロナウイルス対策を、大学院時代のウイルス研究経験をもとに考えてみた

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ついに世界的パンデミックとなってしまった新型コロナウイルス(COVID-19)。現時点で日本国内では爆発的な感染拡大は起こっていませんが、ヨーロッパでは感染者が急激に増加し、外出制限や休校措置、都市封鎖などが行われる事態に発展しています。こうした状況の中、日本では学校の全国一斉休校が行われたものの、大規模な外出制限や都市封鎖は行われていません。日用品の入手や学校休校の対応などの不便さはありますが、他国と比較して経済活動や日常生活が著しく制限されずに済んでいるのは幸運だなあと思っています。その一方で、2020年3月23日には東京都知事から「今後感染が拡大すれば都市封鎖の可能性あり」との発言が出ており、予断を許さない状況です。

各国からの感染者データが報告されるにつれて、高齢者や持病のある方が重症化しやすいということ、死亡率はそれほど高くないことが分かってきています。その一方で、治癒した感染者のインタビューなどを見ると「とにかく症状が辛かった」とコメントされており、過度に恐れる必要はないけれど、感染しないに越したことはないですよね。

わたしは大学院時代に3年間ほどヒトに感染するウイルスの研究をしていました。常に自分自身が感染するリスクを負いながら実験を行っていたため、ウイルスを含むサンプルの取り扱いについては細心の注意を払うよう指導者から叩き込まれました。その経験を元に、今回の新型コロナウイルスに対する感染リスクをできる限り下げるため、自宅で行っている対策をまとめておきたいと思います。
※沖縄県立中部病院感染症内科が策定した「高齢者施設における新型コロナウイルス感染症への対応指針」を参考にしてアレンジしました。

1. 自宅でのコロナウイルス対策を考えるうえでの大原則

新型コロナウイルスに感染するリスクを徹底的に避けるなら、医療機関や研究機関で行われる高いレベルの対策を打たなければいけませんが、それを一般家庭に持ち込むのは到底無理です。しかも我が家には小学生の子供がおり、大人用の対策をそのままやらせようとしても難しい…。そこで、理想的な形ではないですが、子供でもできる自宅用コロナウイルス対策を考えました。とにかくウイルスをもらってくる可能性が高いのは、外出したとき。外出しなければウイルスに感染する確率を確実に下げることができます。そこで、仕事は極力在宅勤務にした上で、外出先や自宅での対策について以下の原則に従って行っています。

  1. 不特定多数が集まる屋内空間への外出はできるだけ避けるか、頻度を減らす。やめる。
  2. 公園・散歩などの外出はOK。生活必需品の買い物以外の外出は控える。
  3. 外出先で、不特定多数が使用しうるトイレ、手すりなどはできるだけ使わない。
  4. 自宅にウイルスを持ち込まないよう、水際対策を徹底する。

※都知事の外出自粛要請を受け、取り消し線部分の対応を強化しました(2020/3/28)

不特定多数が集まる換気の悪い屋内空間での感染が最も多いようなので、まずはそうしたリスクの高い場所へできる限り行かないことが大前提です。そうは言っても食品や日用品の買い出しにスーパーには行きますが、何日分かまとめ買いをして買い物の頻度を減らしました。また、感染ルートとして飛沫感染のほか手からの接触感染があるようなので、不特定多数が触るものにできるだけ触れないために外出先でトイレを使用しないよう心がけ、自宅で済ませてから出掛けるようにしています。階段やエスカレーターの手すり、エレベーターのボタン、電車のつり革、紙幣や硬貨…など、日常生活の中で不特定多数が触るものは多くあります。自分が外出先で無意識に触っているものは、既にたくさんの人が触ったものではないか?=感染リスクが高いものではないか?これを意識するだけでも行動が変わってきます。

どうしても外出先でトイレを使ったり、手すりなどを使わなければいけない時は、使用後に手を洗い、持ち歩いているアルコールジェルで手指を除菌しています。ちなみに、外出先で備え付けの石鹸がない場合は、昔懐かしの紙せっけんを携帯しておくと便利です。

このようにして外出先でどれだけ気をつけたとしても、自分がウイルスの運び屋になっている可能性はゼロではありません。そこで、④が重要になってきます。外出先から自宅に帰ってきた時、ウイルスを持ち込まないためには自宅玄関での水際対策が重要です。今回の新型コロナウイルスで不幸中の幸いなのが、家庭でも入手できる濃度75%のアルコールやハンドソープの界面活性剤で死滅するウイルスであるということ。わたしが大学院生時代に扱っていたウイルスはアルコールでは死なず、高温で処理するなどの作業が必要だったので大変でした。COVID-19がアルコールで死滅させられるのならば、自宅でも有効な防衛策を考えることができます。

ハイター(次亜塩素酸)の希釈液でも殺菌が可能ですが、ハイターは刺激臭がするのと、素手で触ると皮膚にダメージがあるなど使いにくいので、アルコールを優先して使っています。

2. 自宅にウイルスがいない状態を保つための水際対策

【玄関での対策】

外出先から帰ってきたら、玄関から先にウイルスを入れないことを意識する必要があります。

自宅へ戻ってきた自分自身は「汚い」状態と考えます。「キレイ」「汚い」というのは、日常生活で使う意味合いとはちょっと違います。「ウイルスがほぼ確実にいないことが担保されている状態」がここで言う「キレイ」です。ウイルスは目に見えないほど小さく、無色なので見た目には全く分かりません。「外出先でも手洗いや除菌をしてたからキレイでしょ」と思うかもしれませんが、例えば帰宅する直前、マンションのオートロックを解除する時にボタンを押したり、階段室のドアノブを開けたり、エレベーターのボタンを押したりしますよね。上記のものはマンション住人だけでなく、他の訪問者(宅配・清掃業者など)も使うので不特定多数が触れているものです。戸建て住まいでも自宅の門扉や郵便受け、ドアノブ、インターホンなどは家族以外でも触れる可能性があります。そしてそれらを触ったのと同じ手で、スマホを頻繁に触っていたりしますよね。

不特定多数が触るのならばそこはウイルスに汚染されている可能性があるので、自宅へ入る直前にそれらに触ってしまう以上、帰宅したばかりの自分は「汚い」状態なのです。

帰宅したばかりの自分を「キレイ」な状態にするために必要なものは下記の通りです。

  1. アルコール除菌ハンドジェル(濃度75%のアルコールを含むもの)
  2. アルコール除菌シート
  3. ペーパータオル
  4. アルコールスプレー(濃度75%のアルコールを含むもの)
  5. 玄関用ゴミ箱
新型コロナウイルスはアルコール(エタノール)で死滅しますが、濃度が75%のものでないと完全に不活化することはできません。現在アルコール関係は品薄になっていますが、アルコール除菌ハンドジェルやアルコールスプレーは店頭で見つけたら必ず商品の表示を見て、アルコール(エタノール)濃度75%以上と明記されているものを確保しましょう。家庭用製品だと、例えば健栄製薬の「手ピカジェル」やサラヤの「ハンドラボ」シリーズがアルコール濃度75%のものになります。(※高濃度のアルコールは火気厳禁なので、設置場所付近に火気がないか確認しましょう)

サラヤ ハンドラボシリーズ、手指用アルコール除菌スプレーの表示。

サラヤ ハンドラボシリーズ、手指用アルコール除菌スプレーの表示。

ペーパータオルは手拭き用の、1枚ずつ取り出せるタイプが便利です。

上記5点を玄関に備えつけます。我が家では靴箱の上が飾り棚のようになっているので、そこに①~④を設置し、⑤は玄関脇の床に置きました。帰宅してすぐ、靴を脱がなくても手が届く場所に設置することがポイントです。ペーパータオルに関しては、玄関に一つ、もう一つを洗面所に設置しましょう。

そして帰宅した時にルーチンで行うオペレーションは下記の通り。

【帰宅時のルーチン】

玄関の鍵をロックする

→鍵を鍵皿に入れる

→ポストに入っていた広告など、不要な郵便物を玄関ゴミ箱に捨てる

→(マスク装着時は)マスクを外して玄関ゴミ箱へ捨てる

→アルコール除菌ハンドジェルで手指を消毒

→アルコール除菌シートでスマホを拭き、使用後のシートは玄関ゴミ箱へ

→洗面所で石鹸での手洗い、うがいをする。手洗い後はペーパータオルで手を拭き、使用後のペーパータオルはゴミ箱へ。

ここまでを玄関に入ってすぐやってしまいます。マスクにウイルスが付着している可能性があるので、先にマスクを外してから手指を消毒します。特に手指とスマホにウイルスが付着していると接触感染の恐れがあるので、アルコールで除菌します。玄関先で手指を除菌してしまうのは、除菌前の手で室内のドアノブや電気スイッチを触ることを防ぐためです。また、とにかく外で使ったものや汚染されている可能性があるものは、アルコール消毒しない限り室内に持ち込まないという考え方をしています。だから玄関にゴミ箱を設置して、使用済みマスク・除菌シート・ペーパータオルはそこへ捨ててしまいます。

子供には

帰ってきてすぐ靴を脱ぐ前にアルコールハンドジェルを使う→キッズケータイを除菌シートで拭く→石鹸での手洗い

を教え、今のところ毎日続けることができています。

完全な対策ではないですが、入手しづらいアルコール除菌グッズを節約しつつ、ウイルスを家に持ち込まないためにはこれしかないかなと思っています。アルコール除菌ハンドジェルの在庫が十分にあるなら、帰宅後・食事の前・トイレの後などの手洗い後に毎回アルコールハンドジェルを使えれば完璧です。が、我が家はアルコールハンドジェルの在庫が厳しいので、帰宅直後だけの使用にしています。

【そのほかの対策】

  • 玄関に設置しているペーパータオルとアルコールスプレーを使用して、玄関のドアノブやロック、電気スイッチなどの部分を拭き取る。
    →使用済みペーパータオルは玄関ゴミ箱に捨てる。
  • 玄関ゴミ箱のゴミ袋をまとめて口を縛り、他の一般ゴミと一緒にゴミ置き場へ出す。
帰宅した際に消毒前の手で触ってしまうかもしれないところは、アルコールスプレーで除菌します。頻繁にやるほど良いのですが、あまりハードルをあげると続かなくなるので1日の終わりに毎日1回実行しています。、外出後に毎回、外出しない時でも1日1回行っています。(2020/3/28:都知事の外出自粛要請により対応強化)汚染されている可能性のある玄関ゴミ箱のゴミは室内に持ち込まず、他の一般ゴミと一緒にして毎日捨てます。

【アルコールで手が荒れた時の対策】

アルコールは脱脂作用があるので、手の皮脂がアルコール消毒によって奪われ、手荒れが起きることがあります。それでもこのご時世、ウイルス対策のためにアルコール消毒がやめられないのは辛い…。そんな時の救世主が医療用の保湿剤です。我が家は3M キャビロン ハンドモイスチャーローションを使用しています。

常に手指消毒で手荒れに悩む医療従事者のために開発された保湿剤です。手に馴染ませた後すぐ乾いてベタつかないので、使用直後でもPC・スマホ作業ができ重宝しています。いつも冬の手荒れ対策に毎年購入していますが、今回は新型コロナ対策でも活躍してくれています。家族3人、ひと冬で1本あれば余るくらいなので1本あればしばらく使えます。

3. 玄関での消毒ルーチンが意識を変える

今回紹介した我が家の新型コロナウイルス水際対策は、完璧なものではありません。が、とにかく「外から自宅にウイルスを持ち込まない」ところを防衛ラインにしつつ、毎日子供と一緒に無理なく続けられるレベルで考えました。日本の状況がもっと悪くなればさらに厳しい対策を考えますが、とりあえずはこの方法で家族一同風邪もひかずに元気に暮らすことができているので、引き続きこのまま続けていこうと思います。未だに世界中で感染が広がる中、油断は禁物。とにかく継続することが大事です。

そしてこうした対策を続けてみると、子供や家人のマインドが変わってくるなと感じています。帰宅時に消毒・手洗いルーチンを作ることでウイルスに対する意識が向上し、外出先でいろいろなものをベタベタ触らない、手で顔を触らない、人混みを避けて行動するなど、いちいちわたしが指摘しなくても行動が良い方に変わってくるのです。

ひとりひとりが気をつければ、ウイルスの流行を食い止めることができるはず。我が家の対策が何かの参考になれば幸いです。