特別展「出雲と大和」感想①(出雲編):出雲の独自文化と進化がわかる!古代日本史ロマンを体感できる展覧会。

今年は日本最古の歴史書、日本書紀の成立1300年にあたるそうで、日本という国がどうやって生まれてきたのか、その謎に迫る展覧会が始まっています。東京国立博物館で2020年1月15日~3月8日まで東京国立博物館で開催されている「特別展 出雲と大和」です。わたしにとって、出雲に関する最も印象的な話は、神在月の話。1年に1度、出雲に八百万の神々が集まるので旧暦10月は出雲では神在月、他の地域では神無月と呼ばれるという伝承です。今でも神有月になると出雲で様々な祭礼が行われるようですが、とにかくこの逸話が出雲という場所の特異性を表しているような気がしていたのです。神話の信憑性はさておくとしても、多くの神が集結する場所として選ばれるなんて、出雲という場所には絶対に何かがあるはず。ということで出雲にミステリアスな魅力を感じていたので、展覧会に行ってきました。とにかく本展で際立っていたのは、出雲のユニークさ。日本史の黎明期から固有の文化を築き、独自の発展を遂げた出雲の魅力がてんこ盛りだったのです。

1.神殿のスケールがケタ違い

展覧会入口を入ってすぐ、杉の大木3本が束ねられた巨大な柱が迎えてくれます。「宇頭柱うずばしら」と「心御柱しんのみはしら」です。平成12年、出雲大社境内遺跡の発掘調査で出土したもので、鎌倉時代の出雲大社本殿を支えていた柱と考えられているのだそうです。現物を目の前にすると、こんな巨大な柱を必要とする神殿って、一体どれだけの規模?!と驚愕してしまいます。

本展で展示されている「金輪御造営差図模本かなわのごぞうえいさしずもほん」は出雲大社本殿の設計図と言われ、3本の大木を束ねて1本の柱としたものを9本用いて本殿を支えていたとの記述があります。また、本殿の高さは48m、そこへ登るために長さ約109mの階段を備えていたとも書かれていました。その信憑性は疑わしいとされていましたが、平成12年の発見によってこの設計図の正確さが見直されることになったのだとか。

本展では鎌倉時代の出雲大社本殿の模型も展示されており、その圧倒的なスケール感が想像できるようになっています。これだけ大規模な本殿がつくられるなんて、相当な財力と影響力がなければ難しいはず。やっぱり出雲大社は特別な場所なんだと再認識させられます。

2.青銅器製の祭祀道具の出土量が圧倒的

では、出雲はいつから特別な場所だったのか?それは弥生時代まで遡ります。弥生時代中期、出雲では青銅製の銅鐸や銅剣などを用いた祭祀が行われていたと考えられています。それを物語るのが、大量に出土している青銅器です。目玉はやはり、島根県の荒神谷遺跡の出土品である銅剣(国宝)です。まったく同じサイズの銅剣がずらっと並べられている様子は圧巻。発掘当時、358本もの銅剣が1カ所から出土したというのだから驚きです。しかもこれらが一括して生産されたものと考えられており、出雲産の可能性もあるそうで、さらに仰天しました。もしこの時代に銅剣を大量生産する技術と財力を持っていたのなら、日本の最先端を行っていたと言っても過言ではないのでは…?荒神谷遺跡からは大和産と思われる銅鐸と九州北部産と思われる銅矛も発見され、出雲~大和~九州の深い繋がりを示していると考えられています。

出雲は銅鐸についても出土数が多く、島根県の加茂岩倉遺跡から39個もの銅鐸がまとまって発見されました(上は埋納状況の復元、撮影可)。この発見により、出雲は銅鐸の発見数が最も多い地域となりました。ここで出土した銅鐸は大和(近畿地方)で製造されたものが多いと考えられていますが、出雲産のものも一部含まれると推定されるのだとか。

3.古くから大陸と交流していた

…と青銅器の出土状況を辿っていくと、出雲は大和や九州地域と活発に交流していたことが理解できますが、出雲の外交は国内だけにとどまらないようです。それを暗示するもののひとつが、島根県安来市の鷺穴病院跡横穴墓から出土した品々。古墳時代に作られた横穴式の墓から出土した副葬品で、刀、冠、鏡、玉、耳飾り、刀子です。これらの副葬品は大陸製(朝鮮半島の新羅・百済)と国産のものが混在しており、出雲と大陸の活発な交流を物語ると考えられています。

ここまで展示を見て、出雲が大きな力を持ち、独自の文化を築き発展してきた理由のひとつが分かったような気がしました。それは大陸との交流です。出雲は地理的に大陸に近い場所に位置し、島根半島の穴道湖は天然の良港です。こうした地の利を生かして、大陸から進んだ文化・技術を得て進化を遂げ、強大な力を手に入れていったのではないでしょうか。

…あれっ、この感じ。どこかと似ていると思い、よくよく考えてみると「それは去年行った福岡県の宗像市だ」とここまで展示を見て気づきました。2018年にユネスコ世界遺産に登録された沖ノ島関連世界遺産を擁する福岡県宗像市です。構成遺産のひとつである宗像大社へ行った時の話は別記事に書いていますが、福岡県宗像市も古代から大陸と交流し、大和への影響力を持っていたと考えられているので共通点が多いのです。

出雲で出土した青銅器に九州産のものが含まれることは前項に書いたとおりです。これってもしかして、宗像と出雲の交流があったということでは…と思って本展の図録を見たら、やっぱりそうでした。宗像大社の祭神が出雲大社の神魂御子神社(かみむすびこのかみのやしろ)に祀られているとのこと。大陸との繋がりで共通点をもつ出雲と宗像の連携が想像できます。それにしても、宗像大社が世界遺産に登録されているなら、出雲大社も世界遺産になってもおかしくないような気がするのですが…

そのほかにも、出雲のユニークさが際立つ展示がてんこ盛り。日本の古墳といえば前方後円墳と思っていたら、出雲は「四隅突出型墳丘墓」という四角形のものが作られていたり、鹿が後ろを振り返っている様子をモチーフとした芸術性の高い埴輪「見返りの鹿」が製造されていたり、歴代の権力者(足利将軍や徳川家)が奉納した宝物が見られたりと、出雲のミステリアスな魅力にどんどん引き込まれていきます。

なぜ出雲だけが特別な土地となったのか、これは現地に行かないと体感できない何かがあるのかもしれない…。そして、まだまだ未知の新事実が隠されているかもしれない…。今度、ぜひ出雲に行ってみよう、と決意させてくれる展覧会でした。

いつか出雲へ行くための予習も兼ねて、図録も買いました。分厚くて持ち帰るのが重かったのですが、個々の展示品の写真や解説が充実していて大満足の内容。おすすめです。

【特別展 日本書紀成立1300年 「出雲と大和」 開催概要】
会期:2020年1月15日~2020年3月8日
会場:東京国立博物館 平成館
特設サイト:https://izumo-yamato2020.jp/index.html
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