特別展「出雲と大和」感想②(大和編):古墳の出土品と仏教美術。ヤマト王権の力、ここにあり。

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東京・上野の東京国立博物館で開催中の特別展、「出雲と大和」。まずは第1回目の記事として、昨日は出雲の展示品についての記事を書きました↓。

特別展「出雲と大和」感想①(出雲編):出雲の独自文化と進化がわかる!古代日本史ロマンを体感できる展覧会。

日本の黎明期から独自の文化を持ち、発展した出雲の魅力が満載だったのですが、それだけでは終わらないのが東京国立博物館のスゴいところ。展示会場がケタ違いに広いので、出雲以外の展示も充実していました。展覧会タイトルの通り、「大和」に関する展示もてんこ盛りだったのです。

「大和」はもともと奈良盆地とその周辺を表す地名で、ヤマト王権が成立し、のちの律令国家へとつながる基礎となった場所。そのありようを紐解く手がかりのひとつは、この地域に多く残されている古墳からの出土品です。2019年には大阪府堺市の百舌・古市古墳群がユネスコ世界遺産に登録され、日本の古墳に対する注目度は高まっています。実際、大和の古墳からはどんなものが出土し、そこからどのようなことが考えられるのか?そしてそこから仏教を中心とした律令国家へどう変貌をとげたのか?その流れを貴重な展示品とともに私たちに教えてくれます。

1.おびただしい数の銅鏡は圧巻!

3世紀ごろにヤマト王権が成立すると、巨大な前方後円墳が作られ、そこでの祭祀が行われるようになります。古墳の発掘調査での出土品が所狭しと展示されていますが、その中でも奈良県天理市の黒塚古墳出土品である大量の鏡の展示は圧巻です。鎌倉時代の地震で石室が崩壊したため、盗掘を免れたために多くの副葬品が見つかっているのだそうです。当時のままの姿がほぼ手つかずで残されていたなんて、奇跡的ですよね。
発掘時、33面の三角縁神獣鏡さんかくぶちしんじゅうきょう画文帯神獣鏡がもんたいしんじゅうきょう1面が木棺周囲から見つかり、鏡面を被葬者側に向けてびっしりと並べられていたそうです。この34面の鏡が展示室にずらっと並ぶ様は圧巻。発見時の写真パネルも展示されており、古墳時代における鏡の重要性が伝わってきます。
これらの鏡は大陸からもたらされたものと考えられているそうで、ヤマト王権と海外との強い結びつきが窺えます。

2.卑弥呼の墓かも?箸墓古墳を最新テクノロジーで解析

「日本のはじまり」に関する大きな謎のひとつが、邪馬台国の存在ではないでしょうか?そもそも邪馬台国がどこにあったのかという点についても議論の決着がついていないようですが、邪馬台国に関連して注目されている古墳があります。奈良県桜井市にある箸墓古墳です。古墳時代初期につくられており「卑弥呼の墓ではないか?」とする学説もあるほど大注目の古墳なのですが、宮内庁管轄となっており発掘調査が難しい…。そこでミューオンラジオグラフィーという素粒子を用いた技術で構造を解析するプロジェクトが現在進行中。本展では、ミューオンラジオグラフィーに関する動画解説がなされています。今後どんな研究成果が出てくるのか、とても楽しみ。

3.石上神宮に伝わる神宝、七支刀(国宝)

奈良県の石上神宮に伝わる七支刀は、左右に3つの突起をもつ独特なデザインの宝剣です。よく見ると刀の表面には金色の文字が刻まれていますが、肉眼ではちょっと判読が難しい状態でした。図録の拡大写真でようやく文字が見えましたが、損傷が激しい部分の文字は専門家でも判読が難しいようです。解読可能な部分の内容から朝鮮半島の百済からもたらされたものと考えられており、日本書紀に記載のある「七枝刀」に相当するのではないかという学説もあるのだとか。所蔵元の石上神宮でもめったに一般公開されないものなので、東京で見られるのは本当に貴重な機会。表面、裏面両方に文字があるので両面しっかり見るのをお忘れなく。

4.貴重な仏教美術、夢の競演。そして次の特別展へと続く。

やがて6世紀に伝来した仏教を中心とした国づくりが進められ、さまざまな寺院や仏像が作られます。展示室には国宝・重要文化財レベルの仏像がところ狭しと並んでいますが、なかでもめったに公開されないと思われるのが奈良県桜井市の石位寺に伝わる浮彫伝薬師三尊像うきぼりでんやくしさんぞんぞうです。日本最古の石仏と言われ、普段は一般公開されておらず、寺外で公開されるのは今回が初めてなのだとか。日本最古の石仏なのに、欠けている部分が少ないように見えました。うっすらと彩色のあとが残り、とても優しいお顔をしていて、展覧会公式サイトで見るよりも実物は大きめな印象でした。中央の如来像の台座には遠近法が使われていて、平面上に彫られたレリーフ的な石仏なのに、奥行きと立体感を感じます。

展示室の出口付近には、法隆寺金堂壁画の複製の展示があります↑(撮影可)。1949年、修復作業中に法隆寺金堂から出火し、金堂壁画は損傷してしまいました。この事件をきっかけとして文化財保護法が整備されたのだそうです。この複製は、火災で破損した状態の壁画を再現したもの。レプリカといえども黒く焼け焦げた壁画に心が痛くなります。そばには2020年3月〜5月にかけて東京国立博物館で開催予定の「法隆寺金堂壁画と仏教美術」の予告もあり、次回展への期待も高まります。またトーハクへ行かねば…

【特別展 日本書紀成立1300年 「出雲と大和」 開催概要】
会期:会期:2020年1月15日~2020年3月8日2020年2月26日<終了>
※新型コロナウイルス肺炎に伴う東京国立博物館の休館(2020年3月2月27日〜3月16日)により、会期が短縮されました。
会場:東京国立博物館 平成館
特設サイト:https://izumo-yamato2020.jp/index.html
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