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東京・六本木のサントリー美術館で本日から開催されている「扇の国、日本」展(公式サイト)へ行ってきました。
日本=扇の国と言われてもあまり実感が湧かなかったのですが、この展覧会で扇は日本を代表する文化のひとつだということがよく理解できました。
扇は日本で発明されたものだった!
扇は奈良時代に日本で発明されたものだそうです。私はてっきり扇は中国あたりから伝来したものだと思っていたので、そもそも「扇って日本で発明されたものだったの?!」と目から鱗でした。扇は大きく分けて下記の2種類に分類できます。
- 檜扇(奈良時代~):薄い板を重ねてつくられたもの。開閉しやすくするために、先端部分に紐がついていることが多い。
- 紙扇(平安初期~):竹骨に紙や絹を張ったもの。
扇の使い方としては主にあおいで涼をとる、儀礼や祭祀に使用する、装束の一部とするなどの利用法があったそうですが、より正式な場では檜扇が使われたのだとか。夏、暑い時に使うのは紙扇ですが、檜扇もどこかで見たことがあるような…と考えていたら、お雛様が持っているものでした。皇室の女性が正式な場で檜扇をもっている姿=お雛様なのか、と今更ながら納得。
そのほか扇は不吉なものを祓うものとして埋葬時に故人と一緒に葬られたり、コンパクトで簡単に持ち運べることからカンニングぺーパーとしても使われたそうです。(本展で平安時代のカンニングペーパー扇の展示あり。)そんな使いかたもあったとは。
国内では貴族・庶民問わず身近な日用品
日本国内では扇は日常的になじみのある日用品で、高価な装飾が施されたものでなければ使い捨てで使われることもあったそうです。
ひとつの例が、室町時代頃から始まった遊び「扇流し」。扇を川に流して遊ぶもので、その様子を描いた屏風などが本展で展示されています。
気楽に川に流して遊べるということは、さほど高価なものではなく、一般庶民でも普通に持っているようなものだったのかもしれませんね。すでに14世紀頃には既製品の扇が売られていたそうです。本展では扇を製造する様子を描いた「扇屋軒先図」が展示されていますが、分業化された大量生産体制であったことが見て取れるので、比較的安価で販売されていたのかもしれません。そういえば平家物語で、源氏方の那須与一が弓の腕前を見せる際に、矢の的に使われたのも扇ですよね。確かに使い捨てされている…。
古扇は美術品としてリメイク
装飾や扇絵が美しく美術価値のある扇は、もちろん上流階級の間で珍重されますが、骨を外して屏風に貼り、扇絵を楽しむ形でリメイクされました。本展でも扇絵が貼り付けられた屏風を多く見ることができますが、よく見ると扇絵が折りたたまれた折り線があるものとないものがあります。折り線がないもの=はじめから屏風用に製作されたもの、折り線があるもの=かつては扇として使用されていたが、その後リメイクされたものと推測できます。
海外では珍重され、高値で取引
中国では特に明の時代、日本の特産品として大人気だったそうです。中国では、扇1本で百科事典1セットと交換できるくらい価値のあるものだったとか。
明治維新、日本文化をアピールするため、パリで行われた万国博覧会に日本の美術品が出品されましたが、その中に扇10本も入っていたそうです。確かに日本文化の影響を受けた西洋絵画に扇が描いてありますよね。たとえば、フランス印象派の巨匠・モネの「ラ・ジャポネーズ」(※本展での展示はありません)↓とか。
私はヨーロッパへ海外出張に行く際、「お土産に100均で扇子を買って配るといいよ」と上司(日本人)にアドバイスされたことがあるのですが、その意味がようやく理解できました。つまり、
- 扇は日本の発明であり、日本文化の象徴のひとつである
- ヨーロッパ人にウケる
だからお土産に持って行って配れ、ということだったんですね。今更ですが、なるほど~。
まとめ
日常になじんでいてあまり特別視していなかったのですが、扇の歴史を紐解くと奥深いものがあり、多くの発見がありました。本展では作品の説明が一点一点キャプションに丁寧に書いてあるので、予備知識がなくても気軽に楽しめます。
サントリー美術館はミッドタウンのど真ん中にあり、ショッピングのついでに気軽に立ち寄れますよ。お勧めです。