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世界遺産・沖ノ島を御神体として祀る福岡県宗像大社の社殿のうち、玄界灘に浮かぶ宗像大島から陸を見守るように鎮座している社が中津宮です。ここは宗像大島のフェリー発着場から徒歩5分程度とアクセスしやすく、世界遺産登録されている社殿なので宗像大島へ行くのなら是非とも訪れたいポイントです。ちなみに、沖ノ島にある宗像大社の社・沖津宮(原則として一般人の立入禁止)の御朱印も、ここ中津宮の社務所でいただけます。
中津宮に行ってみて気づいたことをまとめていきたいと思います。
1. 中津宮の立地は、海の安全への祈りと密接に関わっている
日本古来の歴史書である古事記や日本書紀によれば、日本列島を創ったのは天照大神と伝えられています。その天照大神が吹き出した息から三人の女神が誕生し玄界灘に降臨したとの言い伝えに基づき、宗像大社では三つの社殿を設けてそれぞれの女神を祀っています。中津宮の祭神は湍津姫神です。場所はこちら↓。フェリーが発着する大島渡船ターミナルから徒歩5分程度と近いです。
ちなみに、宗像大島までのアクセスはこちらの記事にまとめています↓
そして中津宮の鳥居をくぐり、社殿へ向かう石段を登る途中で振り返ると、こんな感じに海が見えます。
そして、中津宮の敷地内を流れる川が海に注ぐ河口は、鳥居の真正面に位置しています。鳥居の向こうには、ちょうどフェリー乗り場の桟橋が見えます。
この立地は、どう考えても本土〜宗像大島までの航路の安全を祈願して建てられたようにしか思えません。そして中津宮の方を向く形で渡船フェリーが発着する桟橋が設けられていることから、航海技術が発達し海上安全が進歩した現代においても海の守り神としての信仰が受け継がれ、守られてきたことが窺えます。
2. 中津宮は七夕伝説発祥の地…これは大陸との交流の証?
わたしが中津宮を訪れたのは2019年8月5日。入口の鳥居をくぐり、太鼓橋を渡り、苔むした石段を登ると華やかに装飾された社殿が目に飛び込んできました(トップの画像)。中津宮は七夕伝説発祥の地とも言われ、旧暦の七夕にあたる8月7日には毎年七夕祭りが執り行われます。その準備で装飾が行われていたようです(装飾は8月上旬のみ)。社殿の木材に色鮮やかな装飾が映えていて美しい。
中津宮の境内を流れる小川は天の川と名付けられ、それを挟むようにして織女社と牽牛社が立っています。織女社の場所は天の川のそばなので分かりやすいです。
一方、牽牛社は離れた所にあり分かりにくいのですが、鳥居と道路を挟んで反対側の崖の上にあります。
七夕伝説はそもそも中国の発祥ではないのか…?と疑問に思ったのですが、もしかすると七夕伝説が中国から初めてもたらされたのがこの地だったのかもしれません。ここ宗像では古来から朝鮮半島との交易を行っていたことを示す考古学的知見が見つかっています。大陸との交流の中で、七夕伝説や男女の縁を占う風習が伝来し、ここから日本に広まっていったのでしょうか。
3. 世界遺産登録で重要視された、御嶽山の祭祀遺跡
中津宮の奥には宗像大島の最高峰である御嶽山へつながる参道が続いています。御嶽山の山頂では古代に祭祀が執り行われたと思われる遺跡があり、発掘調査で祭祀に用いられた土器や鏡などが出土。祭祀が始まったのは西暦300年頃からと考えられており、古代祭祀の実態を示す貴重な考古学的知見として注目されています。時間があれば中津宮の社殿から足を伸ばして御嶽山へ登ってみると、古代の人々の信仰により近づけるかもしれません。
- 世界遺産「神宿る島」宗像・沖ノ島と関連遺産群 公式サイト(https://www.okinoshima-heritage.jp)
- 宗像大社 公式サイト(http://www.munakata-taisha.or.jp)