大塚国際美術館でアートのコスプレをやってみたら、楽しいだけじゃなく名画のスゴさに恐れ入った話

アート

徳島県鳴門市にある大塚国際美術館。美術館口コミランキングでは常に上位にランクインし、2018年NHK紅白歌合戦で米津玄師さんが中継を行ってからは入館者数がうなぎ上り、さらに人気に拍車がかかっている美術館です。精巧に作られた世界中の名画のレプリカ1000点超が展示されており、ここだけであらゆる時代、あらゆる地域の名画がお得に楽しめてしまう名スポットです。私は大塚国際美術館が好きすぎて、東京在住にもかかわらず5年連続で毎年1回訪れているリピーター。大塚国際美術館へのアクセスや館内の回り方、大塚国際美術館の何がスゴいのかについては関連記事にまとめています。↓

米津玄師さんが紅白でパフォーマンスを行った、大塚国際美術館 システィーナ・ホール(筆者撮影)

大塚国際美術館の楽しみ方:所要時間と回り方、アクセス、オススメのホテル情報。米津玄師ファンの聖地へGO!

2018-11-08
レオナルド・ダ・ヴィンチ作 「モナ・リザ」 (大塚国際美術館)

大塚国際美術館に度肝を抜かれ、リピーターになった理由

2018-11-07

いつも訪れる季節は夏~秋頃と決めているのですが、その理由は、この時期楽しいイベントが毎年行われているからです。

その名も「アートコスプレ・フェス」。

名画の中の人物に変装して、名画になりきって写真が撮れるイベントです。大塚国際美術館は京都造形美術大学と協力し、名画の中の人物が着ている衣装を再現。毎年夏から秋の時期に開催される「アートコスプレ・フェス」の期間中、衣装は来館者に無料で貸し出され、来館者はこの衣装を着て、名画の中の人物になりきってアートで遊ぶことができます。大人用だけでなく、子供用もバッチリ揃えられているので、親子で楽しめる点も魅力です。こんな楽しい企画をやってくれるのは大塚国際美術館以外に見たことがありません。

美術館というと、なんだか堅苦しいイメージがありますが、特にこの時期の大塚国際美術館はとても和気あいあいとしたカジュアルな雰囲気。アートの中の人物になりきって、大人も子供も楽しく写真をとっているので、美術に対する知識なんかなくても楽しめてしまいます。この企画は毎年評判が良く、年々コスプレ可能な作品数が増えており、今年はなんと過去最多の28着が登場しています。2019年のテーマは「アートコスプレ・フェス レボリューション」。レボリューション=革命にちなんで、フランスに関係する絵画が多くフィーチャーされていました。

館内の至るところに、アートコスプレの衣装やパネルが設置されてます

館内の至るところに、アートコスプレの衣装やパネルが設置されてます

わたしは今年も親子で大塚国際美術館へ行き、色々とコスプレをして楽しんでいたのですが、一生懸命名画の真似をしていると、ただ楽しいだけではなく名画のすごさについて改めて気づかされることも多かったのです。

1. アートコスプレはとっても手軽。着脱は簡単なのにクオリティー高い!

大塚国際美術館のアートコスプレは、入館料さえ支払えば誰でも無料で楽しむことができますが、「コスプレといっても、着替えるのが面倒だなぁ」と思うかもしれません。でも、心配は無用です。衣装は非常によくできており、背中がマジックテープでがばっと開く仕様。サイズも大きめに作られているので、服の上からそのままかぶってマジックテープをとめれば着ることができ、着替えはとても楽です。もちろん、ガチでコスプレしたい人のために周りからの視線をシャットアウトできる着替えブースも完備されています。小物までしっかりと作られており、レースやフリルなどの装飾も素晴らしく、クオリティーはとても高いです。例えばこれは、親子で仮装してみたモナ・リザ(レオナルド・ダ・ヴィンチ作)。

親子でモナ・リザ

親子でモナ・リザ

ドレスの再現度が高いだけでなく、頭からかぶっているヴェールには美しいレースが付いており、本物さながらです。

2. 「ガチのコスプレ」を推奨する大塚国際美術館の遊び心に乾杯!

大塚国際美術館のコスプレは、全身をコスプレするものから頭にかぶるだけのものまで、いろいろなレベルのものが用意されているのですが、あえて美術館側からガチのコスプレが推奨されているものがあります。それは、リゴー作「ルイ14世の肖像」です。

リゴー作「ルイ14世の肖像」(大塚国際美術館にて筆者が撮影)

リゴー作「ルイ14世の肖像」(大塚国際美術館にて筆者撮影)

このコスプレに関しては、衣装や小物まで非常に凝っており、紺色のベルベット地に百合の紋章が入った衣装だけでなく、ルイ14世のパーマヘアのかつらや白いハイヒールシューズまで準備されており、気合が入ってます。ふと衣装置き場を見ると、こんな張り紙が目に入りました。「#ガチでルイ」ハッシュタグの文字が…!

本気でアートコスプレしたい人は、画中のルイ14世に倣ってミュージアムショップで白タイツを購入できますよ、との案内。美術館サイドがガチのコスプレを勧めてるって面白すぎる。そしてミュージアムショップで白タイツを販売するって…大塚国際美術館の遊び心いいなぁ~!

わたしはというと、タイツを履いてガチでコスプレする勇気はなく、カツラとハイヒール、衣装で写真を撮ってみました。

うまく背景にはまって本物らしく見えるよう、いろいろがんばってみたのですが、なかなか太陽王ルイ14世の威厳が出ないですね…。なにせしがない一般市民なので、オリジナルのような王族のオーラがない…。

もうひとつの全身コスプレは、マネ作「笛を吹く少年」。帽子、上着、ズボン、タスキ、笛入れ、笛に至るまで、小道具を含めた全てが揃っており、大人用と子供用があります。写真を撮ってみるとこんな感じになります。普通に立って撮影してみたり、いろいろポーズを変えてみましたが、試してみるとやっぱりオリジナルのポーズが一番良かったです。足を肩幅に開いて右足に体重をのせ、左足のつま先を少し上に向けると躍動感が出て、少年のあどけなさ、元気さが最も効果的に表現されるような気がしました。

 

この絵を描いたマネは、少年の愛らしさや活発さを表現するために最適なポーズを取らせたのかも?!このあたりから、アートコスプレではしゃぎながらも名画に秘められた様々な仕掛けに気づいていったのです。

3. アートコスプレが教えてくれた意外な気づき

こうしてコスプレで親子揃って遊び倒していたわけですが、いざ名画の真似をして写真を撮ってみても、意外となかなかキマらない。オリジナルそっくりに写真を撮るのは難しかったです。大塚国際美術館で展示されている名画は、超一流の画家たちが試行錯誤の末に完成させ、地域や時代を超えて愛されてきたもの。人物の所作、立ち位置、構図、小道具など、細部にこだわって最適な視覚効果を生み出しているので、簡単に真似しようと思ってもなかなかできるものではなかったのです。

例えば、有名なフランス革命の名画、ドラクロワ作「民衆を導く自由の女神」。

ドラクロワ作「民衆を導く自由の女神」(wikimedia commonsより)

ドラクロワ作「民衆を導く自由の女神」(wikimedia commonsより)

アートコスプレでは、女神の衣装を着て、フランス国旗を持って写真を撮ることができます。何も考えずに衣装を着て女神の立ち位置に立ち、フランス国旗を掲げてみましたが…なんか全然かっこよくない。わたしの身長があまり高くないせいもあるのですが、これは構図の問題でした。

オリジナルと比較すると明らか。女神は兵士たちの犠牲の上に立って旗を振っているので、立ち位置がもう少し高い。そして女神は左足を一歩前に踏み出し革命を推進する気概に満ちており、首から上を後ろ側にねじって後方にいる兵士たちを鼓舞しているので、ただ仁王立ちで写真を撮ってもこの絵の雰囲気は出ないのです。さらに、国旗を地面に対して垂直に持ち、その旗が風になびいていないとオリジナルの躍動感は感じられません。国旗の上端が画面の上すれすれまで達することによって、画面に高さが生まれ、女神の威厳が見る者に効果的に伝わってきます。また、女神と国旗を頂点とした大きな三角形の構図が画面に生じるため、全体的にダイナミックな印象となるのです。コスプレをし、絵画の登場人物を再現しようと試みて初めて、普段「民衆を導く自由の女神」をぼーっと見ていたときには全く気づかなかった巧妙な仕掛けを発見することができました。

美術館で絵を見るときの手引きとして、「名画はたくさんのことを教えてくれる」とか「細かいところまで見て画家のこだわりを見逃さないように」などと言われますが、わたしのような初心者がただじーっと絵を見ていても、画家が名画に盛り込んだ巧妙な仕掛けに気づくことはなかなか難しい。でも、コスプレをすることによって、楽しくアートで遊ぶことができただけではなく、じっくり絵を見たのと同じような気づきが得られたのです。

大人も子供も、美術初心者でも楽しめる大塚国際美術館のアートコスプレ。ここでは紹介しきれないほど、他にも多くのコスプレが用意されており、個人的には夏から秋だけでなく、通年やって欲しいなぁと思うくらい楽しく勉強になる企画だと思います。2019年は11月24日まで。大塚国際美術館さん、来年もぜひやってください!