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「高畑勲展ー日本のアニメーションに遺したもの」が東京国立近代美術館で開催されました。東京展は終了しましたが、2020年4月10日〜5月24日で岡山県立美術館でも展示されます(公式サイト:https://takahata-ten.jp)。今や日本を代表するアニメーションスタジオであり、世界的に高い評価を得ているスタジオジブリの設立に携わり、日本のアニメーション界を牽引してきた高畑勲さんの軌跡を追った大回顧展です。高畑勲さんが手がけた作品の絵コンテ、原画、セル画、企画書や構想ノート、秒単位でカット割りをした図面などアニメーションの製作過程が順を追って展示されており、初心者にも製作プロセスがつかめる展示になっていました。そして、「アニメーション=子供向け」などとは到底言えないほど、細部まで作り込まれていることに感動し、日本のアニメーションが世界に認められる一大文化になった理由がよく分かったのです。
Index
1. 高畑監督の人気アニメが勢揃い!
初の監督作品「太陽の王子ホルス」に始まり、「パンダコパンダ」、世界名作劇場の「アルプスの少女ハイジ」、「赤毛のアン」、「母をたずねて三千里」、「火垂るの墓」、「おもひでぽろぽろ」、「平成狸合戦ぽんぽこ」…などなど、高畑監督が世に送り出した人気アニメの絵コンテ、原画、セル画、企画書や構想ノート(すべて肉筆手書き!!)などの展示が満載です。
映像コーナーが要所要所にあり、それぞれの作品の短い場面が流れています。その傍らには絵コンテやセル画が展示され、この映像がどのようなプロセスで製作されたかが展示と合わせて理解できるようになっています。
撮影コーナーでは、「アルプスの少女ハイジ」の世界を再現したジオラマも。
私は子供の頃「アルプスの少女ハイジ」を見て育った世代なのですが、大人になった今見ても本物のアルプスの風景が再現されていて違和感なくアニメの世界に入っていけました。これは当時のアニメーション界には珍しく海外でのロケハンを行い、リアリティを徹底的に追求して作られたという話を聞いて納得したのです。
子供向けだからといって手を抜かずに、リアリティやストーリー、カメラワークやキャラクターの個性などを追求し、大人も楽しめる日本のアニメーションを築いたのが高畑勲さんの功績なのだと思います。
2. アニメーションは、分業と再構成の膨大な作業から生まれる
アニメーションは、ストーリーやキャラクターのコンセプト、シナリオなどが決められた後、映像の設計図となる絵コンテで構想が固められます。次に、各カットの画面構成がレイアウトによって決められ、それに基づいて背景画やキャラクターの原画が描かれ、動画の撮影→アフレコ、音響が盛り込まれて完成していきます。こんなふうに書くと簡単な作業に見えますが、実際に本展で各製作段階の資料を見ると、膨大な作業量に圧倒され、一体何人の人が、何時間働いて製作されたのだろうと気が遠くなります。1秒を何十カットにも割ってセル画を作り、場面に合った大量の背景画を描き、そして修正を繰り返して最高のアニメーションを作り上げていく。描画作業にこだわるだけでなく、ストーリーの構想段階でも「このアニメーションで何を伝えたいのか」を考え抜いて企画を作っていく。ここまで徹底的にこだわりぬいて作られたアニメーションを、「子供向けのものだよね」なんて絶対に言えません。アニメーションはひとつの芸術なのだ、と改めて思い知らされます。
高畑監督は自ら絵を描くことはなかったそうですが、作品の構想やストーリー、キャラクターの特性などをまとめた膨大な資料からは監督の徹底したこだわりと、高畑監督を取り巻く多くの才能が結集して作品が作り上げられてきたことがよくわかります。
展示会場で上映されている過去の作品を改めて見ましたが、時代が変わった今でも全く色褪せないアニメーションのクオリティに感動し、これだけの労力と才能が結集したからこそ、長年にわたって鑑賞に耐える作品が生まれたのだと納得しました。
3. 奈良美智さんの絵も見られる!
高畑氏は翻訳家としても活動されており、フランスの詩人、ジャック・プレヴェールの詩を翻訳し、世界的に有名な美術家の奈良美智さんに絵を依頼して詩画集「鳥の挨拶」を出版しています。
この時奈良美智さんが描いた絵画も本展で見ることができます。なんというお得な展覧会…。
4. 日本のアニメーションはどう進化した?
アメリカではピクサー・アニメーション・スタジオが生まれ、3次元CGを用いたコンピューターアニメーションが進化していく中で、高畑監督が作ったアニメーションは「ホーホケキョ となりの山田くん」や「かぐや姫の物語」など、鉛筆で描いたような優しい線描と、水彩画のような淡い色調の画面で構成された、独特の世界観へ進化していきます。セル画を用いないデジタルで制作されているということですが、どうやってこの鉛筆のような線の風合いを出しているのでしょうか?閉じた線でキャラクターが描かれていた従来のアニメーションの展示と比較すると、スケッチのようなラフな線で描かれた原画はまったく異なる印象で、ここまで斬新な作品を制作することは、相当なチャレンジであったことがよく分かりました。
「かぐや姫の物語」では、背景画をポスターカラーではなく、塗り直しのできない水彩画で描いていたとのこと。ということは、演出の変更などがあればまた新しい背景画をイチから描かなければいけません。そのデメリットがあったとしても、水彩画の風合いをどうしても出したい、という監督のこだわりが伺えます。
5. 限定グッズも楽しい。ジブリ美術館でしか買えないグッズも!
ミュージアムショップでは、高畑監督が手がけたアニメのオリジナルグッズが充実しています。「太陽の王子 ホルスの大冒険」、「パンダコパンダ」、「アルプスの少女ハイジ」、「赤毛のアン」、「平成狸合戦ぽんぽこ」、「かぐや姫の物語」の各種グッズです。
ショップの風景はこんな感じ。手ぬぐいのラインナップが多彩すぎて、どれを買おうか迷ってしまうほど。↓
豆皿がかわいい!全部欲しくなってしまう…
パンダコパンダのオリジナルこけしも…
ジブリ美術館でしか買えない、限定グッズも特別出品!
高畑勲展は、日本が世界に誇るアニメーション文化の誕生と進化がわかる大回顧展。おすすめです!
【岡山展】
会期:2020年4月10日〜5月24日
会場:岡山県立美術館
公式サイト:https://takahata-ten.jp
【東京展】
会期:2019年7月2日〜10月6日<終了>
会場:東京国立近代美術館
公式サイト:https://www.momat.go.jp/am/exhibition/takahata-ten/