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平成最後の国宝一挙大公開イベント、曜変天目茶碗・国宝三碗同時公開。第一弾:東京の静嘉堂文庫美術館で稲葉天目を見た話、第二弾:MIHO MUSEUMで大徳寺龍光院所蔵の国宝とMIHO MUSEUM所蔵の重要文化財を見た話に続いて、今回は完結編の第三弾:藤田美術館所蔵の曜変天目を奈良国立博物館で見た話です。
国宝三碗は、どれも素晴らしくいつまでも見ていたいほどでしたが、私は藤田美術館所蔵の曜変天目が一番好きです。なぜなら、手のひらサイズの茶碗の中に、無限の宇宙が広がっていたから。
「小碗の中の大宇宙」を裏切らない美しさ。
現在奈良国立博物館で展示されている曜変天目は、徳川将軍家から水戸徳川家に伝わり、やがて大阪の実業家である藤田家で手厚く保存され、現在は藤田美術館での所蔵となっています。2019年6月9日まで、「国宝の殿堂 藤田美術館展 曜変天目茶碗と仏教美術のきらめき」展で展示されています。
(公式サイト:https://www.narahaku.go.jp/exhibition/2019toku/fujita/fujita_index.html)
歩道まで餌を求めてグイグイ進出してくる、奈良公園の鹿に怯えつつ、奈良国立博物館へ。入場待ちはありませんでしたが、展示会場へ入ると曜変天目専用の待機列に15分ほど並びました。漆黒に包まれた円形の展示スペースに、ダウンライトに照らされて曜変天目が展示されていました。以前、曜変天目を「小碗の中の大宇宙」と評した解説を目にしたことがあるのですが、この藤田美術館所蔵のものが一番その表現に近いと思います。
碗を上から見るとこんな感じ↑。銀色の口縁に囲まれた円形の空間には、褐色をおびた黒い闇が広がります。そこには無数の微小な金銀のドットが広がり、それはまるで満天の星空のよう。ところどころにエメラルドグリーン~淡青色に輝くすじが浮かび、宇宙空間に広がる銀河や星雲に見えてきます。曜変天目に特有の円形の文様はそれほど主張しておらず、瑠璃色や金色の細い線で囲まれた控えめな模様です。全体的に、模様の中に強く主張してくる構成要素がないので、小碗にもかかわらず全体的に奥行きと広がりを感じるんです。SF映画「スターウォーズ」で見られるような、壮大な宇宙空間を彷彿させます。
藤田美術館の曜変天目は、碗の外側にも小さな瑠璃色のドット模様や金銀が散りばめられています。外側にはライトが当たっていないのでちょっと見にくいのですが、かがんで外側もぜひ見てみてください。
多くの国宝を擁する藤田美術館の底力
本展では曜変天目以外にも見どころが満載です。藤田美術館所蔵の曜変天目を含む国宝9点、重要文化財55点(ただし展示替えあり)が一挙公開されています。個人的には書道における「かな文字」の手本として名高い名書、「深窓秘抄」(国宝、画像は藤田美術館公式HPにあり)と「高野切(古今和歌集巻第十八断簡)」(重要文化財)の実物が見れたのが嬉しい。流麗な文字のつながり(連綿)と線の強弱(細太)がきれい。文字のレイアウトも美しく、デザインとしてみても素晴らしかったです。
会期中展示替えがあるので、お目当ての作品がある方は展示作品リストを確認してから行かれることをお勧めします。
曜変天目グッズが充実
こちらの曜変天目グッズはかなり充実していましたね。絵葉書、一筆箋、クリアファイルだけでなく、マグネットや根付、うちわまで。
個人的にツボだったのは「曜変天目ジグソーパズル(300ピース)」(¥2450)。国宝三碗を完全制覇した達成感で、思わず買ってしまった。絶対難しいよなこれ…。
春季庭園特別公開で、茶道の歴史に思いを馳せる
特別展を堪能したら、ぜひ奈良国立博物館庭園の春季限定特別公開もどうぞ。(公式サイトはこちら)2019年6月9日まで、興福寺から移築された茶室や四季折々の植物が楽しめる日本庭園が特別公開されています。展覧会のチケットがあれば見られますので、ぜひ立ち寄ってみてください。
曜変天目茶碗はそもそもお茶を飲むための茶碗として作られ、茶道が発展していくなかで、数々の権力者の手を渡り歩いてきたもの。日本庭園と茶室を見ながら茶道のわび・さびの風情に浸りつつ、曜変天目完全制覇の旅が終わったのでした。
曜変天目を東京・静嘉堂文庫美術館、滋賀・MIHO MUSEUMで見たときのレポートはこちら↓