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美術アニメ「びじゅチューン!」のファンにはたまらない美術展
NHKのEテレで放送中の美術アニメ「びじゅチューン!」(https://www4.nhk.or.jp/bijutune/)。アーティストの井上涼さんが、有名な美術品、工芸品、建築物などを独自の解釈でアニメ化し、楽しい音楽とともに面白く美術の魅力を伝えてくれる美術アニメです。作画、音楽の作詞・作曲、歌も全て井上涼さんが手がけています。なんとマルチな才能。
このびじゅチューン、2013年からEテレで放送され、今や大人にも子供にも大人気。我が家も親子ともども大ファンです。
ハマったきっかけは、葛飾北斎の「神奈川沖浪裏」をモチーフにした、「ザパーンドプーンLOVE」(←YouTubeリンク)。
「神奈川沖浪裏」はダイナミックに描かれた波が有名ですが、この波と富士山の関係を見て、井上涼さんはこう発想したんです。「波が富士山に恋していて、全力で富士山にアピールしている」と。
なるほどその発想はなかった!と思ったのですが、そう言われてみると本当にそんな風に見えてくる。そして単に視点がユニークなだけでなく、モチーフに対する豆知識が散りばめられており、原作へのリスペクトが感じられ、美術館で実物を見てみたい!と思わせてくれる仕掛けが満載です。
そんなびじゅチューンの作者、井上涼さんの展覧会「井上涼展 夏休み!BYOBUびじゅチュ館」が熱海のMOA美術館で開催されているので、実物を見るのに良いチャンス!ということで、親子で行ってきました。(本展は写真撮影OKだそうです)
井上涼展の見どころ5つ
1. びじゅチューン!作品の元となった美術品が鑑賞可能。
今回びじゅチューン!に出てくる作品の本物が見られました。なんと井上涼さんの解説文つき!井上涼さんの美術鑑賞は発想が柔軟ですね。だからあれほどユニークなアニメーションが作れるんだなあと脱帽です。
- 葛飾北斎作「神奈川沖浪裏」(「ザパーンドプーンLOVE」)
- 野々村仁清作 国宝「色絵藤花文茶壺」(「ツボのツボマッサージ師」)
- 尾形光琳作 国宝「紅白梅図屏風」(「紅白梅図屏風グラフ」)
- 歌川広重作 「大はしあたけの夕立」(「雨は愛すが人逃げる」)
そのほか、びじゅチューンに出てくる作品そのものではなくても、同じ作者によって描かれた作品や、同時代の類似作品も展示されています。(例えば下記)
- 菱川師宣作「見返り美人図」
- 雪舟等楊 「山水図」
- 「洛中洛外図屏風」
- 「縄文火焔型土器深鉢」
びじゅチューン!の動画も流れているので、実物と動画を比較しながら楽しむことができます。
2. 原画の展示や、撮影セットも。
びじゅチューン!のアニメーションは、1分30秒のアニメーションに対して300枚~500枚の原画が描かれているそうです。原画の一部がずらっと展示されていますが、ごく一部なのに並べるとすごい枚数…。作業量に圧倒されます。
そして、いつもEテレで井上涼さんが作品解説しているセットが再現されており、一緒に写真が撮れます。
撮影で使われた小道具も。(写真は「縄文土器先生」のかぶりもの。ちょっと欲しい↓)
3. 本展のために製作されたオリジナル作品も。
そして井上涼さんが本展のために描かれた紅白梅おとまり会図屏風。びじゅチューンの作品に出てくるキャラクターが勢ぞろいしていて、かわいい。一緒に写真も撮れます。
そのほか、屏風にまつわる本展オリジナルアニメーションも放映中。擬人化された屏風のお話で、大人も子供も楽しめました。
4. スタンプラリーで楽しく美術めぐり
入口でチケットを提示すると、団扇をいただけるのですが、これがスタンプラリーの台紙になっています。館内にスタンプは置かれておらず、庭園を回ってびじゅチューンのキャラクタースタンプを押せるようになっています。これは楽しい!
5. 関連グッズやフードも充実
ミュージアムショップでは、井上涼ワールドが全開でした。忍者グッズや、びじゅチューン関連グッズが盛りだくさん。数量限定の井上涼さんサイン色紙もありました。散財必至です。
相模湾の絶景とともに軽食を楽しめる the cafe では、「ザパーンドプーンLOVE」の高波をモチーフにした「ザパーンドプーンソフトクリーム」もありました!迷わず注文。見た目も味も最高でした。
子供の感性は侮れない
今回、子連れで美術館へ行った理由は、親子で「びじゅチューン」のファンだからということもありますが、親としての下心もありました。つまりは教育目的。これをきっかけに、あわよくば歴史や文化に興味を持ってくれないかなあということですね。しかし同時に、小学生を美術館に連れて行って、どこまで芸術を理解できるものなのか、親であるわたしも半信半疑でした。そこで変に期待せず、「多分よく分からないだろうけど、ファーストコンタクトくらいにはなるかな?」という上から目線で連れて行きました。しかし今回、子供の鑑賞眼から逆に教えられる経験をし、子供の感性を侮ってはならないと気づかされたのです。
事前に仕入れている知識がないぶん、子供は自由な発想で作品を見ており、目の前の作品としっかり対峙していました。例えば、前述の「ザパーンドプーンLOVE」の元となった葛飾北斎の「神奈川沖浪裏」を見ていたときのこと。子供が「富士山が2つ描いてあるね」と言うので、富士山はひとつだけのはずでしょ、と突っ込みつつ「ええっ?!どこどこ?」と聞いてみると、確かにありました。画面左側、大きくうねり上がった波の手前にある小さな波。
奥にある富士山と相似な形をしており、この波を指して子供は「もうひとつの富士山」と言っていたんですね。これ、後で調べたら北斎の浮世絵でよく使われる構図だそうで、相似図形の繰り返しで画面にリズム感を出す手法だそうです。子供に言われなければ気づかなかった…。
子供の感性は侮れない。「まだ美術館へ連れて行くには早いかな?」などと子供の限界を親が勝手に決めるのはイカンなと思った次第です。そして美術鑑賞のあり方も考えさせられました。良くも悪くも大人は事前の美術知識だけで頭でっかちになっているような気がしたのです。
子供は予備知識がないので、目の前の作品から得られる印象がすべて。実はその方が、変なフィルターがかかっていないので、作品本来の良さや本質にズバッと切り込む着眼ができるんだなと思ったのです。「予備知識なしで見てほしい」と、キャプションを付けずに展示する美術館もありますが、なるほどこういうことかと納得。知識で頭でっかちになることが大切なのではなく、実際の作品をどれだけ深く見ることができるか、作者の意図に気づくことができるか、作品を通して作り手と対話することができるかが重要なんだなと。
もっと子供と一緒に美術館へ行ってみよう。きっと大人も子供も、いろいろな気づきがあってハッピーになるはず。
そもそも今回の子連れ美術館が可能になったのは、子供がびじゅチューン!を見て美術に興味を持ってくれたから。井上涼さん、ありがとう。これからも親子で「びじゅチューン!」を応援しています。
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