東京緊急事態宣言日記3:宅配、スーパーでの購入品に対する我が家のウイルス対策を強化

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国内での感染者数増加が止まりません。全国の感染者数累計は昨晩の時点で5548人となりました。4月4日時点での昨日、東京ではこれまでに最多となる181人の感染が確認され、そのうち67%に当たる122人は、感染経路不明とのこと。外出自粛要請や緊急事態宣言の効果が出るまでに2週間程度は必要なので、しばらく増加傾向がみられるのは仕方ないと分かっていても、先が見えず不安になります。とにかく自分にできることは家にいること、周囲にうつさないためにもできる限り予防に努めることだと思っています。

東京緊急事態宣言日記2:新型コロナウイルスの生存期間の情報を改めて調べ、考えたこと

昨日の日記↑に書いた通り、宅配で届いたものや、スーパーで購入したものを自宅に持ち込むときの接触感染予防について考え始めました。今日は物の表面に付着したウイルスの生存期間と有効な消毒方法について、もう少し深堀りしてみたいと思います。「敵を知り、己の実情を知れば百回戦っても負けることはない」とは孫子の名言ですが、これはウイルスとの戦いにも当てはまるような気がします。昔の人はいいこと言うなあ。世界中の医療従事者、研究者の努力により、少しずつ敵である新型コロナウイルスの性質が明らかになってきているので、それを生かして「敵を知る」ことに役立てたいと思います。わたしは大学院時代にウイルス学の研究室に在籍していたので、この状況で報道の情報だけ見て終わりにすると恩師から「昔せっかく指導したんだから論文読めよ」と怒られそうな気がしたので、一次情報である論文にあたってみたいと思います。ウイルス学の論文を読むなんて20年ぶりくらいだ…(遠い目)

1. 新型コロナウイルスの生存期間

まずは新型コロナウイルスがプラスチックの表面で3日間生存するという報道(CNNニュース)の元となった書簡を読んでみました。(van Doremalen N et al., Aerosol and Surface Stability of SARS-CoV-2 as Compared with SARS-CoV-1. N Engl J Med. 2020 Mar 17. )

エアロゾル(空気中に漂う微細な飛沫)中、プラスチック・ステンレス・銅・段ボールの表面でSARSの原因ウイルス(SARS-CoV-1)と現在流行中の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の生存を時間を追って観察したもの(環境条件は温度21~23度、相対湿度40%)。主な知見は下記の通りです。

  • SARS-CoV-2はエアロゾル中で3時間感染性を保つ。
  • 物の表面でのSARS-CoV-2の生存期間は素材によって異なる。プラスチック・ステンレスの表面では感染性のあるウイルスが72時間後まで検出される。銅の表面では、4時間後には感染性のあるウイルスが検出されなくなる。段ボール上では、24時間後には感染性のあるウイルスが検出されなくなる。
  • SARS-CoV-2の感染性は時間の経過とともに指数関数的に減少する。
  • SARS-CoV-2の半減期はステンレス上で5.6時間、プラスチック上で6.8時間。
  • 半減期のデータのうち、段ボール上での値はばらつきが大きく、結果の解釈に注意が必要。

日常生活に即して考えたときに気になるのは、感染性のあるウイルスがプラスチック上で72時間後まで、段ボール上では24時間後まで検出されるということ。外出するときに使うエレベーターのボタンやエスカレーターの手すり、スーパーで買い物するときに使うカゴやカートはだいたいプラスチック素材ではないかなと…。また、スーパーに陳列されている日用品を購入するシーンを考えたとき、製品の包装に使用されている素材はプラスチックが多いです。この研究で用いられたプラスチック素材はポリプロピレンと記載があり、日用品(食品、洗剤など)のラベルや外装に用いられている素材です。(本体の表示を見ると、材質にPPと書いてあります)他にも日用品の包材はポリエチレン、PET樹脂などいろいろあり、この報告ではすべての素材が調べられているわけではありませんが、もし日用品の表面にウイルスが付着していれば3日間程度は生存すると考えておいたほうがよさそうです。また、ウイルスは段ボール上でも24時間生存するようなので、宅配で購入した段ボールの取り扱いにも注意が必要だと思いました。

一方で、ウイルスの感染性は時間の経過とともに指数関数的に低下するので、3日間くらい触らず放置しておくだけでもリスクを下げることはできそうだということもわかりました。

2.  新型コロナウイルスの不活化方法

ウイルスが物の表面でそこそこ生存することが分かったところで、有効な不活化方法について改めて確認しておきたいと思いました。論文が出ていないかな~と探したところ、暫定公開されているものが見つかりました。(Katzel A et al., Efficient inactivation of SARS-CoV-2 by WHO-recommended hand rub formulations and alcohols

査読による審査が未完了の論文のようなので、結果の解釈には注意が必要ですが、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の不活化条件を検討した貴重なデータです。この研究の実験条件では、

  • SARS-CoV-2はエタノール(処理時間:30秒)で不活化可能。
  • エタノールの濃度で条件検討を行うと、濃度30%以上でSARS-CoV-2を不活化することができた

とのこと。一般家庭でも入手できるアルコール(エタノール )でも不活化可能で、なおかつ濃度が30%程度でも良いのなら、キッチン用のアルコール除菌スプレーでも十分なのでありがたいですね。しかし、審査済みの論文ではないですし、すべてのウイルス株を調べているわけではないので本当にそうであるかは疑問が残ります。

SARS-CoV-2についてはまだまだ情報が少ないのですが、他のコロナウイルス(SARSやMERSの原因ウイルス等)なら研究の蓄積があるだろう、と思って念のため調べてみると、コロナウイルス類の物質表面での生存期間と不活化方法の研究をまとめている総説がありました。(Kampf G et al. Persistence of coronaviruses on inanimate surfaces and their inactivation with biocidal agents. J Hosp Infect. 2020 Mar;104(3):246-251.

ここでは70%以上のエタノールで不活化可能(作用時間はウイルスの種類と実験条件によって異なり、30秒~10分)という論調です。

以上ふたつの論文情報を考慮すると、ともかくエタノールでの消毒でリスクは減らせると言えそうです。(望ましいのは濃度70%以上のエタノールを含むもので消毒)

3.  宅配・スーパーでの購入品に対するウイルス対策

緊急事態宣言で要請されていることは対人接触を8割減らすことなので、日用品の買い物はできる限り宅配に。その上で、宅配で届くものについては以下の対策をとることにしました。

【宅配で届いたものの消毒】

  • 配達は置き配でお願いする(宅配ボックスか、玄関ドアの外に置いてもらう)
  • 荷物は玄関で開梱し、段ボールや梱包材は室内に入れずにすぐにゴミ出しする
  • 届いた日用品の外装はアルコール入り消毒スプレーを噴射したペーパータオルで拭いてから室内に入れる
  • 作業が終わったら手洗い、アルコール消毒をする

※野菜や果物は剥き出しで売られているものを買わずに、袋入りのものを購入し、袋の上からアルコールで拭く

どうしても店舗で買い物しなければならない場合は、以下の対策です。

【店舗で買い物をするときの対策】

  • できるだけ空いていそうな時間帯を狙って行く
  • マスク装着、手指用消毒剤を携帯して店舗へ
  • 店舗に入る前、出た後に手指消毒剤で手を消毒
  • 生鮮食品は包装されているものを購入
  • レジの待機列ではSocial DIstanceを保つ
  • マイバッグは使わず、購入品はレジ袋に入れて持ち帰る
  • 帰宅後、玄関でレジ袋は廃棄、商品は外装を消毒してから室内・冷蔵庫に入れる
  • 帰宅後の手指消毒、手洗いうがい。衣服はすぐに洗濯。

また、触らずに放置しておけばウイルスの感染性が時間とともに指数関数的に下がっていくので、念のために郵便物は玄関に設置した袋に入れ、3日間放置してから室内に入れています。このご時世、そんなに急ぎの郵便物はないですし…。

実際に上記の対策を今日やってみましたが、結構面倒ですね…。まあでも非常事態なので仕方ないです。アルコールの在庫と相談しつつ、とりあえず2週間くらいはこの方法でやってみようと思います。