マンモス展:マンモスがよみがえった?!ジュラシック・パークが現実味を帯びる最先端の科学展。

マンモス展のイメージキャラクターは、マツコ・デラックスさん。
サイエンス&テクノロジー

19XX年に大ヒットしたハリウッド映画、「ジュラシック・パーク」。

最新のバイオテクノロジーでよみがえった恐竜たちが、人間のコントロールを逃れ、恐竜を見世物にして儲けようとする人間を次々と食い殺し破滅させていく。CG技術によるリアルな恐竜と、迫力あるアクションシーン、そして絶滅した動物を現代によみがえらせる倫理観まで考えさせられる名作です。

この「ジュラシック・パーク」が現実になるのでは?!と思わされる興味深い科学展が始まりました。東京・お台場の科学未来館で開催されている「マンモス展」(公式サイト)です。マンモスが実際生きていた状況を彷彿とさせるリアリティのある展示で釘づけになりました。そして、最新の生命科学でマンモスの復活がもうそこまで来ている…とワクワクしつつ、ジュラシック・パークのような危険な事態につながるのでは?と戦慄したのです。

マンモス復活の鍵を握る、ロシアの永久凍土から発掘された「冷凍マンモス」

ハイレベルな古生物研究を可能にする、冷凍マンモス

ロシア連邦サハ共和国。世界最極寒と言われる土地です。ここには太古の昔から0℃以下に保たれた永久凍土があり、そこに数万年前のマンモスをはじめとした古代生物の化石が、冷凍された状態で眠っているのです。永久凍土は固く凍っており掘り出すのが難しかったようですが、地球温暖化の影響で永久凍土がとけて陥没し、クレーターを作りました。このバタガイカ・クレーターの形成により永久凍土からの化石の発掘が容易になり、数々の貴重な化石が出土しているそうです。

恐竜を例にして考えてみると、ほとんどの化石が骨格のみなので、生きている時の姿はあくまで推定レベルでしか再現できません。恐竜の皮膚の色や質感をあれこれ推測し仮説を唱えることはできても、科学的に証明することはできないのです。しかし、マンモスの場合は違います。死後そのままの状態で冷凍状態で保存されているため、体毛や皮膚、筋肉などの各種臓器、血液や尿などの生体サンプルを採取できることもあります。もちろん、数万年という長い保存期間を経ており、研究室で組織や細胞を凍結する時のような理想的な条件で冷凍されたものではないので、得られたサンプルが万全とは限りません。それでも骨格標本しか得られない恐竜と比較すれば、マンモスに対する生命科学研究のレベルは格段に高くなるのです。

マンモスの骨格から冷凍標本まで。世界初公開の貴重な資料も多数

マンモス展
ケナガマンモス全身骨格標本。

本展では巨大なマンモスの骨格標本が出迎えてくれ、その大きさを体感することができます。そして、マンモスの体毛(実物)を触れるコーナーも。

マンモス展
マンモスのホンモノの体毛を触れる!!

触ってみると、太い体毛は釣り糸のように固め。細い柔らかい体毛もあり、その両方が厳しい寒さから身を守っていたのでしょう。

(上)ケナガマンモスの皮膚
(下)約4万年前の仔ウマ
いずれも冷凍標本。

そして冷凍状態で出土した、古代生物の化石。どれもものすごいリアルなんですが…。数万年前のものもあるのに、保存状態良すぎ…。

ケナガマンモスの鼻(約3万年前)の冷凍標本。

これらの冷凍標本はしれっと展示されていますが、冷凍状態で展示するのはものすごく難しいのだそう。冷風の当たらない状態で、展示ガラスが曇らないようにしながらマイナス20℃をキープするのは高度な技術が必要なんだとか。貴重な機会ですね。

マンモス復活のシナリオ:マンモスとiPS細胞が繋がる?最新の生命科学から目が離せない!

生きたマンモスが見られる日も近いかも?!近畿大学によるクローン実験の衝撃

近畿大学のクローン実験。

2019年3月、近畿大学が衝撃的な研究成果を発表しました。「2万8000年前のマンモスの細胞核が動いた」というものです。2010年に良好な保存状態で発掘されたYUKA(ユカ)というマンモスの組織から、ほぼ完全な細胞核が取り出されました。これは本当にすごいことで、マンモスの細胞核が得られる=細胞核に含まれるマンモスのDNA情報がほぼ完全に保存されているということなので、DNA情報を解析すればマンモスの生命活動がミクロのレベルで解明されますし、最新の技術でマンモスを復活させることも視野に入ってきます。

そこで、マンモスの細胞核を用いてクローン技術でマンモスの細胞を分裂させる実験が行われました。マウス卵子の細胞核を除去し、代わりにマンモスの細胞核を注入して分裂させ、クローンの個体を作る方法で、1996年に発表されたクローン羊・ドリーと類似の方法です。結果、細胞分裂の途中のプロセスまで進行し、数万年前の古生物の細胞が現代で生きた=動いた、という衝撃が走ったのです。

研究プロセスのドラマを描いた漫画。

ちょっと専門的で難しい話ですが、劇画風な漫画のパネルで面白おかしく、楽しく理解できるようになっています。

今後の復活シナリオ、あの手この手

今回、マンモスの細胞分裂が途中までしか進まなかった理由として、2万8000年という年月の中で細胞核が損傷されたのではないかという考察がなされています。保存状態のよいサンプルを入手するという方策のほか、クローン技術についてもよりよい方法を模索しているようです。例えば、2012年にノーベル医学生理学賞を受賞したiPS細胞の技術を使うという方法。この技術でマンモスの精子と卵子をつくり、人工授精させて復活させるというプランです。世界トップレベルの研究者がコラボレーションする一大プロジェクトになっている…!

マンモスをよみがえらせることは倫理的にどうなの?

ここまでくると、いつか本物の生きたマンモスを見れるのかも?!とワクワクしてくるのですが、ここで一歩立ち止まって考えなければならないのは生命倫理の問題です。この辺りもきっちり展示されていてバランス感覚がいいなあと思いました。マンモス復活研究に倫理的な問題はないのか?これは決して避けては通れない議論だからです。

  • 自然の摂理で絶滅した動物を復活させることは、倫理的に許されるのか?
  • 復活したマンモスが現在の生態系や社会に悪影響を与えることはないか?
  • ヒトのクローンを安易に作ることに繋がらないか?

などなど。

純粋な好奇心としては、生きたマンモスを見てみたいと思ってしまいますが、いろいろな懸念を考えると個人の興味を満たすためだけに突き進んではいけない領域です。倫理的な問題のケアを慎重に行いつつ、社会の進歩に貢献する明確な目的があれば許容されるのではないか、と個人的には思います。例えば、単に「マンモスが歩いている様子を見たい」とか「鳴き声が聞きたい」という理由ではなくて、「歩き方を解析することで新しいテクノロジーの開発に繋げたい」など、さらなる科学技術の進歩に資するという勝算があるのであれば。

ただし、ヒトだけでなくあらゆる動物のクローン作成の是非が社会的に十分に議論され、規制する法律が整備されるなど、環境が整うことが大前提だと思います。


最先端の生命科学に肉薄しながらも、わかりやすく楽しく専門的知見の理解を促してくれており、バイオサイエンスの魅力を余すところなくアピールしてくれていて良かったです。こういう展覧会をもっとやってくれたら、生命科学の研究者になりたいと思う人が増えるかも。絵や漫画などの展示も多く、大人も子供も楽しめます。

マンモス展

会期:2019年6月7日〜11月4日
場所:日本科学未来館
公式サイト:https://www.miraikan.jst.go.jp/spexhibition/mammothten/