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曜変天目一挙公開。せっかくだから三碗すべてを完全制覇することにした。
平成最後の国宝公開イベントが始まっています。「国宝・曜変天目 三碗同時公開」です。
12世紀~13世紀(南宋)時代に中国・福建省の窯元、建窯(けんよう)で焼かれた茶器、曜変天目。黒地の茶碗の内側に、青色~虹色に輝く円形模様が散りばめられており、古来から見る者を魅了してきました。しかし、もともと製造されていた中国には原形を留めた完全なものは残っていません。世界で唯一、日本に三碗のみが完全な形で保存されているのです。
曜変天目の美しさに多くの人々が魅せられ、中国から伝来した現存する三碗は歴代の権力者の手を渡りました。しかし、その製造方法は不明。神秘的な色、紋様を再現したいと、数々の陶芸家が曜変天目茶碗の復元に向け試行錯誤を続けていますが、同様のものは焼成されるものの、中国でつくられたものの輝きにはまだまだ及ばないとも言われています。
この三碗はすべてが国宝に指定されており、今回それらが初めて同時期公開されるという、過去に例のないプロジェクトが始まっています。
それぞれ下記の日程・場所で公開されています。
- 静嘉堂文庫美術館(東京都):2019年4月13日〜6月2日(公式サイト)→本記事
- MIHO MUSEUM(滋賀県):2019年3月21日〜5月19日(公式サイト)→行ってきました!レポートはこちら
- 奈良国立博物館(奈良県):2019年2019年4月13日〜6月9日(公式サイト)→見てきました!レポートはこちら
同時期にすべての曜変天目が見られる、こんな機会はもう二度とないかもしれない。そこで、この時期に合わせて曜変天目をすべて見る計画、「曜変天目完全制覇プロジェクト」を実行することにしました。まずは都内在住の筆者が最もアクセスしやすい、静嘉堂文庫美術館に行ってきました。
混雑もなく、都内で森林浴しながら眺望を楽しめる。富士を望む展示室に曜変天目が。
東急田園都市線・大井町線二子玉川駅からバスで10分ほど。都内には珍しい、森林に包まれ小川が流れる小高い丘の上に、静嘉堂文庫美術館があります。バスを降りて歩くとこんな光景です。ここは本当に都内?!
丘の頂上に着くと、展望台からは関東平野を一望できる眺望が広がっています。晴天時には富士山も見えるとのこと。晴れた日に行けばよかったなぁ…とちょっと後悔しました(この日は曇り)。
まさにこの眺望が楽しめる展示室に、曜変天目が展示されています。日曜日に行きましたが、行列はなく、曜変天目のまわりをぐるっと一周してゆったりと見ることができました。
静嘉堂文庫の曜変天目は、国宝3点の中でも最も青色~虹色の文様が美しく、最高峰と言われているもの。今回の展示コンセプトは「自然光の下で見る」。屋外からの光が差し込む展示室の真ん中に、曜変天目が展示され、特別なライティングは行われていません。そもそも曜変天目が作られ、愛でられた時代には現代のような照明器具はなかったはずなので、当時のように太陽光で見たときの印象を楽しんでほしいという趣向です。天気や時間帯で見え方が変わってくると思いますが、虹色や青色の出方は光の当たり方でまったく異なります。光が弱い場所では独特の色彩が出てきません。
単眼鏡で拡大してみると、小さなラメのような煌めきが無数に散りばめられていました。これは写真ではわからない、実物ならではのディテールです。
先入観なく見ると、意外な見方が出てくる
NHKのびじゅチューン!で鑑賞の幅が広がる
今回、小学校低学年の子供と一緒に見に行くことができました。それもこれも、NHK Eテレで放送中の「びじゅチューン!」(井上涼さん作)のおかげ。有名な美術品を楽しく紹介してくれる番組で、美術に対するハードルを下げてくれ、大人も子供も楽しめる番組です。子供が「びじゅチューン!」の曜変天目を見て、興味を持ってくれたので、今回子連れで行くことができたのです。
「びじゅチューン!」では、静嘉堂文庫の曜変天目に見られる丸い光彩をディスコのスポットライトやミラーボールのライトに見立て、「曜変天目ディスコ」として楽しく紹介しています。こちら、単に楽しいだけでなく曜変天目の来歴もしっかり踏まえて作られています。かつての所有者だった徳川家将軍も登場していますし。
びじゅチューン!動画はこちらから→公式サイト
確かに、みる角度を変えると光の模様が刻々と変化する様子は、ディスコと例えられるかも。というかもはや、ディスコにしか見えなくなってくるから不思議です。こんな面白い見方もあるんだと気づかされます。びじゅチューンありがとう。
ゼロベースで鑑賞すると、曜変天目の丸い模様は何に見える?
びじゅチューン!で自由な発想力が刺激されたのか?子供に曜変天目の印象を聞いてみると…
…た、確かに!意外すぎる切り口で度肝を抜かれた!そう言われてみるとところどころ、丸い模様のパターンがミッキーマウスの顔に見える部分がちらほらと。
子供の発想は馬鹿にできないなと思います。あらかじめ曜変天目の知識で頭でっかちになっていた自分には、まったく思いつかない見方を教えられました。そもそも曜変天目の模様は、窯の中で起きた化学変化により偶発的に生まれたもの。美術家が何らかの意図を持って、特定のパターンを描いたものではないので、その模様や色彩をどう鑑賞しようと、見る者の自由です。先入観や知識を取り払って、ゼロベースで自由に楽しむことを子供に教えてもらいました。
曜変天目グッズも楽しい
静嘉堂文庫には曜変天目グッズが充実しています。私は静嘉堂文庫の曜変天目をモチーフにした手ぬぐいを購入。子供にはもちろん、「曜変天目ディスコ」の缶バッジ。これで歴史や美術に興味を持ってくれるなら安いもの。
そのほかにも曜変天目クリアファイル、名刺サイズのカード、書籍まで目白押し。三碗同時公開記念のクリアファイルは、今回限定モノのようです。
まとめ:日光が降り注ぐ、天気の良い日に曜変天目ピクニック
古来から人間を魅了し続けてきた、曜変天目茶碗。窯の偶然が作り出した、神秘的な国宝を森に囲まれた美術館で森林浴しながら楽しめます。これはもはや「曜変天目ピクニック」。
今回は自然光で鑑賞を楽しめる、めったにない機会です。晴天の日の方が光量が多く、より本来の色彩や輝きを楽しめると思うので、お天気の良い日に行くことをお勧めします。また、美術館へは上り坂が続きますし、庭園内は砂利道もありますので、スニーカーなどの歩きやすい靴で行きましょう。
曜変天目完全制覇プロジェクト第二弾。静嘉堂文庫に続き、MIHO MUSEUMで曜変天目を見てきました!レポートはこちら↓