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漫画「とめはねっ!」に書道の面白さを教えてもらった
今でこそ、書道展を見てあれこれ楽しんでいる私ですが、以前は書道についてこんな失礼なことを思っていました。
いまどき、コミュニケーションはメールやSNS。
手書き文字の重要性は今後低くなっていくのではないか。
未だに書道が義務教育で必修なんて信じられない。
しかし、ある漫画に出会って、書道や手書き文字に対する考え方が180度変わったんです。それが書道漫画、「とめはねっ! 鈴里高校書道部」。
この漫画を読んで書道の魅力にとりつかれました。いままで、よく知りもしないくせに書道の将来性を疑っていて申し訳ないと思いました。反省。
この漫画、すさまじくクオリティが高いです。書道界の第一人者が製作に協力し、書道の歴史や文字の成り立ちがわかりやすく解説され、書道大会の受賞者レベルの書道家が作中の作品を書き、それでいてエンターテイメントとして成立しており、書道のことが何も分からなくても楽しめるようになっています。
書道の基本の解説がわかりやすい!書道は単なる手書き文字ではなく、デザインでありアートだった
本作の第1巻。舞台は神奈川県の湘南地域にある鈴里高校。廃部寸前の書道部に、書道未経験者の新一年生が無理やり入部させられるところからストーリーが始まります。高校1年生で柔道日本一のヒロイン、望月結希の一言が、まさに私の疑問を代弁してくれていました。
「…でも、なんでわざわざ読めなくするのかなー書道って。全然わかんない!」
河合克敏作 「とめはねっ!鈴里高校書道部」 第1巻より引用
そうそう、それそれ!よく言ってくれた!キレイな字を見て感動することはできるけれど、判読できないものの良さが分からなかったんです。
中国で文字(漢字)がどうやって生まれ、発展してきたのか。それが日本に伝来してどのような進化を遂げたのか。本作では、登場人物と一緒に学びながら、読者も無理なく書道の歴史を理解できるようになっています。作中では、数百年~千年前の書家の手による名筆が数多く紹介されおり、それらを比較することで、文字の表現は多彩であること、線質や余白の取り方でまったく違った印象を観賞者に与えることが徐々にわかってきます。書道から派生したもののひとつにフォントがあり、文字を用いた現代のコミュニケーションの土台には書道があることにも気づかされます。わたしたちが普段使っている明朝体、これも中国・唐時代の書家、顔真卿の字をヒントにして作られたものなんですよ。書道と現代の文字コミュニケーション、切っても切れない関係なんです。
そしてこの作品の最もスゴいところは、最初「読めない字の何が良いの?」と思っていた私のような読者が、最終巻まで読み進めるとその「読めない字」で感動して涙してしまうところなんです。
書かれている文字の内容だけではありません。文字の配置。余白の美学。字体。線画の太さや繋がり。
すべての文字表現が一体となって、作者の伝えたい思いが作品から迫ってくるのです。
そして、登場人物たちが作品を制作する描写もあり、書道家が自分の伝えたいことを表現するため、理想的な線を描き出すまでにどれほど苦労しているかもわかってきます。
そうして生み出された書は、人の心を動かし、人の行動を変えるチカラを持っているのです。
義務教育で習う習字と「書道」はまったく別物だったんだなと。むしろ、義務教育でこういうことを教えてくれたら、書道を正しく理解して興味を持つ人がたくさんいるだろうに…と感じたのでした。
監修は武田双雲先生。作中で登場人物が書く書は、全国大会トップレベルの書道家の作品!
上記画像、第1巻表紙の背景に毛筆で書かれた「永」の文字がありますよね。これは著名な書道家、武田双雲先生の書なのだそうです。武田先生が本作の監修を務めておられるそうで、書道解説のクオリティは確かなもの。
また、作中で書道部のメンバーが書道大会に出品する書を書き、最終的には全国大会へもチャレンジしていきますが、それらの作品は書道家の先生が実際に書かれたものが使用されています。日本トップレベルの書がこんなに惜しげもなく見られる漫画は他にないと思います。
この作品を読むことで、漫画でわかりやすく丁寧な解説をしてもらいながら、美術館の書道展で主要な作品を徹底的に観賞するのと同じ体験ができます。書道展を楽しむための土台を作ってくれる漫画です。
学園コメディで、エンターテイメントとして肩肘張らずに楽しめる!
「ふーん。でも、どうせ学習漫画なんでしょ?」と思われるかもしれませんが、しっかりと学園モノのラブコメ漫画としても成立しているのがこの作品の傑出したところです。高校生だけでなく書道の先生に到るまでキャラの濃い登場人物、ギャグあり、片思いや三角関係など高校生の甘酸っぱい恋愛模様あり。書道の知識を押し付けてくるような構成にはなっておらず、ストーリーの中で自然に書道ネタが入ってくるような形なので、純粋にラブコメ漫画としても楽しめます。書道というと堅苦しいイメージがあったのですが、この漫画は書道のハードルを下げてくれるので書道をとても身近に感じ、「自分も習ってみようかな」と思わせてくれます。(私は本気で習ってみようかと検討中。)
書道漫画「とめはねっ!鈴里高校書道部」は、全14巻で完結。こんな方にオススメです!
- 書道のことは全然わからないけれど、ちょっと書道の世界を覗いてみたい。
- 書道展ってどう楽しんでいいかわからない。
- 学校の書道部ってどんな感じなのか知りたい。もしくは、書道部時代を懐かしみたい。
- 爽やかな学園モノのラブコメ漫画を読みたい。
興味ある方は、ぜひチェックしてみてくださいね。